表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死後の世界を破壊する  作者: 田村宗也
第1章 死者の世界
10/15

第10話 たったひとつの方法

「お前ら!固まって応戦だ!孤立するなよ!?」


ラウトの鋭い叫び声に冒険者達が野太い声で応じる。モンスターの大群と冒険者達の境界はどんどん狭まり、そして、衝突した。激しい金属音と怒号が飛び交う広間の奥では、ダグラスが穏やかに外を眺めている。


「やっぱり、こうなるのね」


隣に居るリリアが、苦い顔で(つぶや)く。リリアが言っていたように、(あるじ)であるダグラスとの戦闘は避けられなかったらしい。


前線から離れている俺達の元にはまだモンスターは来ていなかったが、あまりにもモンスターの数が多く、このままでは戦線を押し込まれジリ(ひん)になることは明らかだった。


「俺達も……!」


言いながら足を踏み出すが、体に痛みが走り、立ち止まる。俺の様子に気づいたリリアが、心配そうに俺の背中に手を添えた。


「大丈夫?無理はしないで」

「あ、ああ……」


鈍い痛みに顔をしかめ、その痛みをもどかしく思いながらも、もう一度前線に目を向ける。冒険者達の隙間から見えるモンスターの数は、いっこうに減っていない気がする。こうしている間にも、戦線は押し込まれているのかも知れない。


モンスターを掃討することは恐らく不可能だ。たとえここにいるモンスターを片付けたとしても、主ならば無尽蔵にモンスターを召喚出来るだろう。


不意に、あることに気づく。(たたず)むダグラスの足元には、壁に立て掛けられている剣が見えた。

この世界に来る時に見た、ダグラスの剣。


「リリア、頼みがある」


痛みに顔を歪めながら、俺は隣の少女に声をかけた。


「頼み?」

「ああ。この世界から帰るための、たったひとつの方法だ」



俺の話を無言で聞いていたリリアは、話が終わると躊躇(ためら)うように口を開いた。


「でも、それじゃああなたはどうなるの……?」

「分からないな……俺も、やったことはないからな」

「そんな……」


リリアが暗い顔でうつむく。先刻リリアに心配をかけないと言ったことが思い出され、チクリと胸が痛んだ。


「……死にはしないさ」


嘘ではない。でも、約束出来るほどの根拠も無い。

それでも俺は、不安そうなリリアに、少しでも安心して欲しかった。

リリアは俺の気持ちが分かったのだろう。そして、この世界から帰る方法がひとつしかないことも。唇を引き結び、顔を上げると俺の目を真っ直ぐに見て言った。


「わかった。その方法に賭けましょう」


リリアの目には、先程とは打って変わって覚悟の火が揺らめいていた。その火に焚き付けられるように、背筋を伸ばして言う。


「ああ。頼んだ」


リリアから目を離し、世界の主を見る。彼は相変わらず穏やかに外を眺めていた。

賭けに勝つのは俺かお前か。勝負だ、ダグラス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ