表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ZEHN HELDEN ─魔界の十勇士─  作者: 京町ミヤ
第2部《人間界》
91/161

第84話

「…………ゼプテンバールの意思は分かった。アウグストの提案も兼ねてなら、俺は承諾する」


まず初めにそう声を発したのはヤヌアールだ。早い決断に少し驚いたものの、少しだけ心が軽くなった気がした。


「一番年下の子が頑張ってるんだもの。私がうじうじしてるのは良くないわねぇ〜」


へにゃり、と笑みを浮かべてフェブルアールも頷く。


「糞餓鬼のくせに……魔王サマに叱られても知らねぇからな」


高圧的な態度だが、やはりどこか気遣いが感じられる。メルツが少しだけ口の端を上げた気がした。


「僕はもとより、反対派ではありませんからね。その場に対応する事は得意です」


マイが言うとかなり説得力がある、と頭の片隅でそんな事を考える。アプリルとユーニを飛ばして、ユーリが頷く。


「……自分の言葉を……曲げる気はありませんわ……」


「でっ、ではっ……僕も……こ、ここっ怖いけど…………頑張りますぅう……!」


胸の前で手を組んで、オクトーバーも賛同してくれる。まだ返事をしていないのはアプリルとユーニだ。

他の者達の視線が彼等に注がれると、アプリルはゆっくりと溜め息をついた。


「協力はしません。少し魔力を貸して差し上げるだけです」


「……じゃっ、おれもそーしよっかなー! あははっ!」


「!!」


反対派だった二人が、承諾してくれた。アウグストの提案あってこそだろうが、ゼプテンバールは形容し難い感情でいっぱいだった。


「皆……!」


「お話は終わった〜?」


と、区切りよく。グリーゼルがどこからともなく姿を現した。ここまでタイミングがいいとは……どこかで聞いていたに違いない。


「で、返答は?」


聞いていた筈なのに、グリーゼルはそう聞いてきた。ゼプテンバールは一度全員の顔を見てから答える。


「承諾する」


「オッケー!! ぼくも肩の荷が降りたよ〜!」


確かに、魔石に宿る意識を繋ぎ合わせ、ディツェンバーの指示通りに動いた彼にもまた緊張感があっただろう。

礼を言いつつ、ゼプテンバールはそっとグリーゼルに耳打ちした。


「あのさ、僕を個人の意識に繋げる事は出来る? ────にお話ししたい事があるんだ」


「え、ここじゃダメな話?」


ここで少しの間、輪になって積もる話もあるのでは? と言いたげな様子のグリーゼルに、ゼプテンバールは小さく首を横に降った。


「個人的な話だから」


「そういう事なら任せといて〜」


ゼプテンバールにしか見えないようにグッ、と親指を立て、グリーゼルは他の面々に向き直った。


「それじゃあ、そろそろお開き。ぼくから全部魔王様に伝えておくね」


その言葉と同時に、ゼプテンバール達の意識は失われた。






※※※※※※※※※※





グリーゼルに導かれて、ゼプテンバールはその人の意識の中へと潜り込んだ。

どこを見渡しても黄緑色の景色だ。どこか落ち着きがあって、優しい色をしている。


「……ゼプテンバール君……どうしてここに?」


ふと、目の前にその人が立っていた。先程までそこにはいなかった筈なのに。

辺りを見渡すもグリーゼルの姿はない。気を利かせて席を外してくれたらしい。


その人に声を掛けようとして、ゼプテンバールは黙り込んでしまった。


──とても、怖い。


嫌われてしまうかもしれない。殴られるかもしれない。軽蔑されてしまうかもしれない。


それらを全部押し殺して、ゼプテンバールは口を開いた。


「話があるんだ……アウグスト」


四年ぶりにしっかりと目に映った彼は、若草色の目を瞬かせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ