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ZEHN HELDEN ─魔界の十勇士─  作者: 京町ミヤ
第2部《人間界》
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第75話

「──という訳で」


「昨日の話に賛同しようと思う」


「それと、混乱していたとはいえ失礼な態度をとってすみませんでした」


「すまなかったな」


翌日の放課後。昨日宇宙に案内されてやって来た寂れた建物に足を運んだ海と陸は、提案を受理する事を伝えた。


それを受けて宇宙はパァッ、と顔を輝かせて


「嬉しいわ!! こちらこそ悪かったわね! 改めて仲良くしましょう!!」


と、海の手を掴んでぶんぶんと上下に振る。正直言うと肩がもげそうな勢いだったのだが、男としての意地もあった海は無表情を貫いた。


同様に宇宙に手を握られて上下に振られている陸は小さく悲鳴をあげているが。


「それで、具体的に俺達は何をすればいい」


「あぁ、まずはね……。────よっ、と」


「────。!? きゃ、きゃぁぁあああ!?!?」


海が目にした光景。それは……宇宙が陸の胸を鷲掴みにした所だった。胸だけに留まらず、宇宙は腹部、背中、腰、腕、足、と全身に触れてから陸を解放する。


陸も赤面して涙目になりながら、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。


「は、え、えぇっ……!?」


「でぇ、次は…………君ね」


「────!?!?」


次いで宇宙の手が海の胸部へと伸びた。咄嗟に避けようと退くも、物凄い速さで海の身体を捉える。結果、海もまた陸同様に全身を触られてしまった。


(何だこの女は……痴女か……!?)


「よぉし大体分かったわ。まずは陸ちゃん」


ビシッ、と指をさして、宇宙は説明を始める。先程の余韻が残っているらしい陸は半ば放心状態で返事をしていた。


「貴女は全身の筋肉が付いてないわ。でも、視力も良いみたいだし、訓練次第で伸ばせるわ。あと、機械いじりも得意みたいだし」


「なっ、どうしてそれを……」


「続いて海君!」


陸の疑問を無視して、宇宙は海へと視線を向ける。


「君、何か武道を嗜んでるわね。全身の筋肉の付き方がいいわ。加えて威圧的な顔! やっぱり総隊長は貴方しかいないわ!」


「褒めているのか貶しているのかどっちなんだ」


強面なのは海も重々承知している。現在十八の海だが、制服を着ていなければよく成人に間違われるのだから。

加えて、寄せられた眉間の皺が一層の圧を放っている。


「まぁまぁまぁ。て事で! 訓練については追追伝えるとして……。今からやる事があるの」


今から。その言葉に海と陸は勿論、空までもが息を飲んだ。三人の反応を受けてから、宇宙は目を細めて


「私達はこれから四人で、禁忌を犯すのよ!」


と、軽々しくもそう口にした。

彼女の言葉を聞いた空が、声を張り上げる。


「禁忌って……どういう事だい? 宇宙ちゃん」


「禁忌は禁忌よ。悪魔召喚の儀式を……これからするの」


「しかもこれから!?!?」


「い、いきなり過ぎる……」


急な展開に着いて行けず、海は溜め息をついた。勿論、宇宙には宇宙なりの計画があるだろう。しかし今さっき同志になった海と陸にも、宇宙はお構いなしに話を進めている。


まるで、二人が賛同する事を分かっていたかのような段取りだ。


「実を言うとね。もう政府から司令は下ってるの」


「は、はぁ!? まだ政府はこの事を知らないんじゃないのかい!?」


「否、今のお国のトップは魔人。父さんとも仲がいいらしくて、元々そういう話が出てたのよ」


「どうしてそれを言ってくれなかったんだい!?」


「政府から命令された、なんて言ったら、それこそ皆の意思を尊重出来ないじゃない。あくまで組織を構成する面々の信頼と目的を固めておかないと、後々分裂しちゃう。それに、これはまだ機密事項。父さんとお国のトップの会話から生まれた……冗談として扱わなくっちゃね」


悪巧みをしているかのように(実際そうなのだが)、宇宙は笑みを浮かべた。空も何も聞かされていなかったらしく、驚きに目を見開くばかりだ。


「あとは私が署名と組織を構成するメンバー表を父さんに提出して、政府が受理すれば完了。いわばもう叶ってるも同然なの」


「……それはそれとしておこう。で、その悪魔召喚をする意味は?」


これ以上食い下がっても宇宙の飄々とした態度は変わらないだろう。そう判断した海は、まだ何か言いたげな様子の空の横から口を挟んだ。


「良くぞ聞いてくれました。まず、私達に必要なのは三つ」


右手で三、と指を立てる。


「一つ目。情報。悪魔召喚で現れるのは魔物だからね。魔物が街に蔓延ってる事は把握してるけど、何が目的で、いつ来たのか、どうやってこの世界で暮らしているのか。まだ詳しい事が分からないのよ」


「魔物と遭遇しなかった訳ではないのだろう? 聞かなかったのか」


「相手は殺す気でいるのよ? 自分が死んだら意味ないじゃない。つまりは何も聞き出せてないの。そして二つ目。魔力を持たない一般人」


ここに来て一般人が出てくるとは。

疑問を抱きながらも、宇宙が説明してくれる筈だ。口は開かずに頷きだけ返す。


「そして三つ目」


しかしそんな海の予想を裏切って、宇宙は最後の一つを述べてしまった。口を挟む余裕もなく、宇宙は言い放つ。


「その一般人に魔力を埋め込む為の……魔石」




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