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ZEHN HELDEN ─魔界の十勇士─  作者: 京町ミヤ
終章
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番外9─澪とオクトーバー─

「み、みみみみ澪君っ……! きょ、今日こそ一つ言わせてもらいます……!! いえ、言わせて下さいっ!!」


「それ、今じゃないとダメな訳?」


精神世界とはいえ誰かと話すのって疲れるんだけど、と澪は零す。反抗期真っ只中で若干真っ当な道を削がれてしまいつつある彼に、オクトーバーはずっと物申したいと思っていたのだ。


誰しもが通る道とはいえ、彼は折角身近な所に大人がいるのだから注意しなければ。およそ二週間前から言葉に悩み続け、練習を重ねてきた。

あとは本人に告げるだけだ、とオクトーバーは意を決して口を開く。


「お、おおおおお仕事をしているのは偉いです……! え、偉い……で、すが……! 年上の方に敬語を使わないのはっ、ど、どうかと思われまひゅっ……!!」


盛大に噛んでしまったが、言いたい事は伝わっただろう。


「は?」


しかし澪は『そんな事を言う為だけに呼んだの』とでも言いたげに目を細めた。その眼光の鋭さに、オクトーバーは思わず肩を揺らしてしまう。


幼い頃から彼を知っているとはいえ、歳を重ねる事に接し方がわからなくなってしまうものだ。

大人になりかかっている今の時期に、子供扱いしていいとも思えない。

とはいえここは年上らしくびしっ、と言わないといけないだろう、という使命感に駆られてもいたのも事実。


「にっ、睨んでもっ怖くないんですからねっ……!」


きっ、と眉を吊り上げて正面から澪を睨み返す。とはいえ人形のように整った顔立ちが崩れていないのを見る限り、本気にはなれていないらしい。


「ハッ。俺よりチビのくせにイキがってんじゃねぇよこのチービ」


「チビじゃないです! 訂正して下さい!! 本気出したらもう少しおっきくなれますもん!!」


人と話す時、緊張から声が震えてしまうオクトーバーだが、「チビ」と言われた事により緊張が飛んでしまった。

ずいっ、と澪に詰め寄り、か細い声を少しだけ張り上げる。


「僕だって一応は年上なんです! へりくだれとは言いませんが、最低限の礼儀を大切にして下さいっ!」


「な、何でお前にそんな事──」


「僕にだって反抗期はありましたが、守る所は守って下さい!」


「うるさい!! そんな事分かってる!!」


澪が声を荒らげた所で、オクトーバーはハッと身を見開いた。


「あ、あぁぁぁぁ……す、すみませっ……」


「そんなの俺が一番分かってるよ……。でも……何かに当たらないと可笑しくなりそうなんだよ」


「澪君……」


異人の中で最年長である彼には、「皆より年上」というプレッシャーが強くのしかかっているのだろう。

まだまだ多感な時期で、遊んでいたい年頃だが、殲滅隊を引っ張る一人としての自由時間は少ないと思われる。それが今の彼にとって、発散出来ないストレスとなっているようだ。


「そ、そそそれは……」


「馬鹿みたいだろ……勝手に責任感じて、勝手に一人でイラついて」


「そっ、そんな事無いですっ……! えぇぇっと……あの、み、澪君は確かにっ……皆さんより年上で、しっかりしないといけないかもしれません……。ですがっ……澪君の上には、僕がいます……!!」


「────」


「そ、そそそそそれに、総隊長さん達もいるじゃないですか……! 澪君は一人じゃないです!」


「…………あはは。そんなありきたりなセリフ言うのに緊張してんの?」


どこかからかうように、澪は苦笑を浮かべた。オクトーバーなりに一生懸命考えた言葉だったのだが、澪にとってはありきたりなものだったらしい。


「うっ……」


パッ、と頬が熱くなるのを感じながら、ぶかぶかのシャツの袖で顔を隠す。


「……ごめん。怒ってくれてありがと」


ふと耳に聞こえた澪の声に、驚いて袖の隙間から彼の顔を伺ってみる。彼もまたどこか恥ずかしげに眉尻を下げていて、思わず微笑んでしまった。





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