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ZEHN HELDEN ─魔界の十勇士─  作者: 京町ミヤ
第2.5部《四天王編》
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第128話

「一つ、問いたいです。貴方方の『敵』は……誰ですか?」


おもむろに開かれた口から出たのは、その言葉だった。この場合、ヴェッターの指す敵とはどのような事を言うのだろうか。


「それは……どういう意味合いで?」


「そのままです。深い意味はありませんので、適当に答えて下さって構いません」


そうは言われても質問が質問なだけに適当に答える事は出来ない。頭を悩ませるモーナトに反して、ヤーレスツァイトは即答だった。


「そんなん簡単やろ。アルター様に仇なす全員が敵や」


それと、とヤーレスツァイトは一息置いてから口を開く。


「アルター様の部下、って立場を無くした……ただの俺やったら、大切な人を傷付ける奴が敵や」


「大切な人、ですか?」


「そ。お前等とかな」


ヤーレスツァイトにとって、モーナト達は大切な人ひとという認識だったのか。大切な仲間だという思いが一方通行では無かった、という安堵感と共に嬉しさが込み上げてくる。


「薄ら寒い事言わないで下さい」


「何やとお前人が恥ずかしさ堪えて言うたったのに!!」


「知りませんよ。貴方が言うと何だか全てがいやらしく聞こえます」


「お前も大概やろ!」


「一緒にしないで頂きたいこの遊び人」


「ストレートに貶すなやこの狂信者!!」


「信者で何が悪いこのいやら執事!!」


「誰がいやら執事やこの尻軽宰相!!」


「尻軽じゃねぇし快楽を求めてるだけだこのインキュバス執事!!」


「その時点で俺と同類なんやてあと俺はインキュバスとちゃうからこの変態宰相!!」


「ストップストップストーップ!!!」


ヒートアップし続ける一方の二人の言い合いを牽制しながら、机を叩いて勢いよく立ち上がる。ヴェッターが敬語を使わない場面が珍しかったのでもう少し見ていたい気もしたが、このままでは収拾がつかなくなるだろう。


「見苦しいからやめて。私から見ると二人共大概だから」


「女装男子に言われるのは腹立たしいな」

「奇遇やな、俺もや」


「女装男子は禁句」


実を言うと、ヴェッターとラヴィーネにもモーナトが女装して働いているという事は知られてしまっていた。聞く所によると酒の席で悪酔いしたヤーレスツァイトが秘密を漏らしてしまったらしい。


怒りはしたものの、一番バレてはいけないであろうアルターには知られていないので割り切る事にしたのだが。


何だかんだといじられる事が多くなったので面倒でもあるのだ。


「それと、ヴェッターのさっきの質問だけど……私にとっての敵もヤーレスツァイトと同じさ。君達の事を侮辱されたら、私はきっと声を荒らげてしまうね」


「……二人して、変な人ですね……」


そう悪態をつくヴェッターは、いつもより穏やかな雰囲気を纏っていた。ヤーレスツァイトもそれを感じ取ったのか、今度は何も言わずに肩を竦める。




──人間界でこれから起きるであろう事態は、モーナトの想像を遥かに超えるであろう。しかし今は、仲間との休息のひとときを楽しむ事にした。ここにラヴィーネもいたら、もっと楽しいのだろう。


そう頭の隅で考えながら、モーナトは柔らかい笑みを貼り付けた。



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