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ZEHN HELDEN ─魔界の十勇士─  作者: 京町ミヤ
第2.5部《四天王編》
134/161

第124話

人間界に蔓延る魔物を統率させる者がタールからヤーレスツァイトに代わった事。各自の報告を終えたヤーレスツァイトは、変装能力を持っているフルスという男に人間の姿へと変えてもらった。


タール曰く、偽の戸籍も用意しているそうで、生活拠点となるアパートに足を運んだ。

人間界でのヤーレスツァイトの名は『時節礼人じせつれいと』。

バイト等も好きにしていいと言われたが、行方不明や奇妙な事件に関するニュースは見逃すなと注意を受けている。


受け取っていた鍵を使って、扉を開けたその時だった。


「あらーっお隣さん入ってきたの!? しかも若いイケメンやないのー!!」


突如、豹柄のセーターを着た妙齢の婦人が話し掛けてきた。ヤーレスツァイトは現在人間の姿になっているので、彼女にも認識されているらしい。


「ど、どうも……本日からここに住まわせて貰います、ヤ…………時節礼人と申します」


「そんな堅苦しい喋り方せんでえぇよ〜! ウチは隣に住んどる佐々木(ささき)や。よろしゅうな〜!」


「は、はぁ……」


早口、そしてハイテンションな婦人に戸惑っていると、ポケットから取り出された包装された飴玉を手渡される。


「これウチが好きな店のやつやしあげるわな! 何か困った事あったらいつでも聞いてや!」


「は、はい……」


「ほんならね〜!!」


台風の如く現れ去っていった佐々木という婦人の背を見送り、ヤーレスツァイトは手渡された飴玉を見下ろした。


「……変なおばさんだな……」


飴玉を口に放り込み、ヤーレスツァイトは部屋の中へと足を踏み入れたのだった。






※※※※※





ヤーレスツァイトはある程度の生活費を稼ぐ為、コンビニでのバイトを始めた。自炊する気は無いので、弁当をバイト先で購入してニュースを見ながら食事をする、という生活を送っていた。


しかしそんな生活はものの数週間で幕を閉じる事となる。


空になったコンビニ弁当の容器を見た隣人の婦人が、


「若いんだからコンビニ弁当ばっか食べてちゃアカンよー! おばちゃん多めにご飯作っとるさかいそっち食べ!?」


と、作りたてらしい肉じゃがを鍋ごと持ってきてくれたのだ。最早スタンバイしてたのではないかと疑いたくなる程の行動力に驚きつつ、近所付き合いは大事なので礼を言って受け取る。


食べてみるとかなり美味しかったので安心した。米だけ炊く事にして完食した後、洗った鍋を返しに行く。


作った物を頂き、食べるという食生活に変化したものの、ヤーレスツァイトの生活に大きな変化は無かった。


しかしこの間接客している際「お弁当温めはりますか?」と口調が移ってしまっていたので、かなりの恥ずかしさを覚えた。


佐々木の婦人の話を聞いていると、夫を数年前に亡くし、息子も中々帰ってこないとの事。息子と年齢が近いらしいヤーレスツァイトに何かと世話を焼いてくるのは、彼女自身寂しい思いをしているからかもしれない。


食事を貰っておいて無視するというのも失礼というもの。そしてヤーレスツァイトが彼女の話し相手になる位はいいか、と許容した事もあり、何かと充実した毎日を送っていたと言えるだろう。


魔物達の間でも大きな争い事も無いし、今の所対処しなければならないような魔物の事件も無い。一度魔界に戻ってモーナト達に人間界での話をしてやりたいな、なんてぼんやりと考えながら、ヤーレスツァイトは一人微笑んでいた。



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