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熾天の魔導師  作者: シウ
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第五話

ふう、息抜きで、どうにか書けたので、投稿です。

 その後、午前の授業すべてが終わり、給食の時間になり澪たちは机をくっつけて仲良く給食を食べていた。しかしそのなかで一人、柚子だけは膨れっ面に不機嫌そうにパンをちぎって口へと入れる。そんな柚子に穂花と澪はそれぞれ慰めの声をかける。


「むーう…」


「もう。柚子ちゃん。さっきまでの事は忘れようよ、ね?」


「そうだよ。あれは運が悪かったんだよ。先生達もわざとじゃないはずだし…」


「それでも、幾らなんでも当てられ過ぎでしょ!?」


 溜まっていた鬱憤を晴らすようにそう言った柚子に澪と穂花はなにも言えず苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 柚子が不機嫌になった理由わけ。それは午前の授業のうち実に三つの授業で解答の際に指名されたのだった。それも一つの授業で三回も当てられて、だ。


 そして、それが四つある授業の内で三回も同様の事があったのだ、柚子が不機嫌になるのはある意味で必然とも言える結果だろう。


 そして、溜まった鬱憤を晴らす様に柚子はやけ食いをするかのように給食を食べ進める。そんな柚子を見て澪は授業を受けつつ考えていたある提案を柚子にする事にした。


「ねえ、柚子ちゃん、穂花ちゃん。お昼休み保健室に行ってリスの様子を見に行かない?」


「あ、そうだね。私もリスさんの様子が気になるし、柚子ちゃんも一緒に行こ?」


「…ふ、ふん! それなら仕方なく付いて行ってあげる」


「うん。それじゃあ早く食べて保健室に行こう!」


 澪のその言葉に穂花と柚子は頷き、澪たちは早く保健室へ行くために少々急ぎ気味に給食を食べ終え、食器とお盆を戻すと三人で保健室へと向かったのだった。そして保健室へと向かう間に話す三人の話題はやはり朝に助けたリスに関してだった。


「それにしてもあの時に澪が見つけなければリスはあのままだって思うとぞっとするわ。にしてもよく倒れているってよく分かったわね?」


「そう言えば‥‥どうして分かったの?」


「う~ん‥‥なんていうか、助けてって声が聞こえたような気がしたんだよね…何となくだけど」


「ふ~ん、そう言うものなのかしら?」


「う~ん、どうなんだろうね?」


 澪の曖昧に言葉に柚子はそう言い、穂花も首を傾げる。だが澪自身もあの時の事を上手く言葉に表現する事が出来そうになかった。とそんな事を話していると澪たちは目的の場所である保健室へと辿り着き、柚子がノックをしてドアを開ける。


「失礼しま~す!」


「「失礼しま~す!!」」


「あら、いらっしゃい。リスの様子を見に来たのかしら?」


「「「はい!」」」


「うふふ、それじゃあちょっと待ってね?」


 保健室に入ると、書類の整理をしていた佐藤先生が澪たちの方に体ごと向きを変え尋ね、それに澪たちは三人そろって返事を返し、それを聞いた佐藤先生は嬉しそうに微笑んだ後、椅子から立ち上がると日当たりのいい場所に置かれていた小型の段ボール箱を持ってくる。


「けど、今は眠っているから出来るだけ静かにしてあげてね?」


「「「は~い」」」


 佐藤先生の言葉に澪たちは小さく返事をし、それを聞いた佐藤先生は手に持っていた段ボール箱を優しくテーブルの上に降ろした。そして澪たちが段ボール箱の中を見るとそこには敷き詰められた新聞紙の上で穏やかな呼吸をして眠っているリスの姿があった。


「ずっと気になっていたけど、大丈夫そうね」


「そうだね。澪ちゃんも、安心した?」


「うん。本当に良かった」


 佐藤先生に言われた通りに、リスが起きない様に澪たち小さな声でそう小さく話しながら澪はリスが大丈夫なのを見て安堵の息を吐き、そのまま澪たちは昼休みが終わるまで静かに眠るリスを見ていたのだった。


 *  *  * 


 昼休みが終わり、掃除を終えた澪たちは午後の授業を受けた後、再び保健室に来ていた。


「はい、それじゃ病院には私が連絡しておいたからちゃんと病院に連れて行ってあげてね?」


「はい!」


「任せなさい!」


「ちゃんと連れて行きます!」


「はい。お願いね…と、そうだ」


 佐藤先生からリスが入っている段ボール箱を澪が受け取った時、佐藤先生は何かを思い出したのか白衣のポケットから四つ折りの紙を取り出した。


「これ。連絡しておいた病院の場所が書いてあるから」


「あ、ありがとうございます!」


 そう言って佐藤先生は四つ折りの紙を差し出し、穂花が受け取りお礼を言った。


「それじゃあ気を付けて」


「「「は~い!」」」


 佐藤先生にそう言った後、保健室を出た澪たちは玄関で上履きから外靴に履き替えた後、そのまま校門を出ると渡された紙に書かれた地図を頼りに動物病院へと向かった。そして学校を出て五分程だろうか、



「え~っと、うん、ここだね」


「へぇ~、結構新しいそうね」


 澪たちは書かれている地図を元に、学校からほど近い場所にあった動物病院へと辿り着いた。外観は最近建てられたのかとてもきれいで、植えられている木や花のお陰で心なしか空気が澄んでいる様に澪たちは感じた。


「それじゃあ、行こう」


「うん」


「そうね、佐藤先生を信用していない訳じゃないけど、ちゃんと動物の先生に見てもらわないとね」


 澪の言葉に穂花と柚子は頷くと澪たちは動物病院の中へと入って行った。中に入るとそこはごく普通の病院と同じだったが、しかしそこには誰も居らず静かな空間だった。


「誰もいないね…」


「もう営業時間を過ぎてるからかもしれないわね…すみませ~ん!」


「あ、は~い! ちょっと待って下さ~い!」


 柚子が大きな声で尋ねると奥の方から声が聞こえてきて、静かだからか道具を直しているのか、物が動く音が聞こえた後、足音が近づいて来て扉が開くと眼鏡を掛け、白衣を身に着けた女性が出て来た。


「お待たせしました~‥‥うん?その制服は…もしかして天ケ崎(あまがさき)小の?」


「あ、はい」


「って事は君たちが佐藤先輩が言っていたリスを助けた子達だね」


「は、はい…あの、もしかして佐藤先生から?」


「うん。先輩から大まかな話しは聞いてるよ。しかし、まあここじゃなんだし、一旦その子を診た方がいいから中に行こうか。付いて来て」


 事前に佐藤先生から大まかな事情を聞いているのだろう、穂花の言葉に答えた後、付いて来るように言い、澪たちは靴を脱いで女性の後ろを付いて行くように中へと入って行く。


「あ、そう言えば自己紹介をしてなかったね。私はここで獣医をしている明智 朱音(あけち あかね)。貴女達が通う天ケ崎小学校の保健室の先生、佐藤 縁(さとう ゆかり)の後輩よ。よろしくね?」


「あ、白崎澪です」


「立華穂花です」


「柚子・リルレーシャよ。ところで、もしかして貴女がここの院長をしてるの?」


「お、君は鋭いね。正解だよっと、ここよ」


 互いの自己紹介を手短に済ませた後、柚子の質問に朱音は少し驚きつつも嬉しい感じでそう答えつつ、目の前のドアノブに手を掛け、先程の様子に柚子は少しばかりの不安を感じているなか朱音が扉を開く。扉を開いた先は色々な器具が置かれた、傷ついた動物の治療をする処置室だった。


「じゃあ、準備をするからちょっとだけ待ってね?」


 そう言うと朱音は奥の方へと行き、処置室には澪たちと段ボール箱の中にいるリスだけが残されたのだった。


「…佐藤先生に悪いけど…大丈夫なの?」


「さ、さぁ?」


「だ、大丈夫だと思うけど…?」


 何せ、動物病院に来るという事自体が初めての澪たちは大丈夫なのかが判断できず、柚子の言葉に対して大丈夫と断言することが出来なかった。とそんな事を話していると準備が出来たのか、朱音が戻ってきた。


「さて、それじゃあ診てみようか」


 戻って来た朱音はマスクに手袋、エプロンを身に着けておりその雰囲気は一気に引き締まっていた。そして顔はまさに命を救う事を仕事にしている医者としての覚悟が宿っており、柚子たちの心配は杞憂へと終わったのだった。

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