第四話
現状で、書けているのはここまでです。合間を縫って書き出して投稿をして行きます。目先の目標は依然と同じ所まで戻す事ですね‥‥投稿。
家を出発して五分ほど歩いた場所にある左右の分かれ道の前で澪たちは足を止める。
「それじゃあ澪。気を付けて行けよ?」
「うん。お兄ちゃんもお姉ちゃんも気を付けてね?」
「分かってるよ、初やつめ!」
一応二人にそう声を掛けた澪に雪葉は笑みを浮かべながらグリグリとしてきて、澪はそれを抵抗することなく受け入れて笑みを浮かべる。
「えへへ、それじゃあね!」
兄と姉の二人にそう言うと澪は自分が通う小学校がある左の道を、絢夜と雪葉は通っているそれぞれの学校に行くために右の道へとそれぞれ別れて歩き出した。
そして、絢夜達と別れて歩く澪に澪と同じ制服を着た二人の女子が声を掛けた。それは澪の親友である柚子・リルレーシャと立華穂花だった。
「澪~!おはよう~!」
「澪ちゃん、おはよう」
「柚子ちゃん! 穂花ちゃん! おはよう!」
二人に挨拶をした後、早く二人の所に行こうと澪は駆け出す。
実は小学校に通い始めの頃の澪は姉の雪葉と一緒に登校していたのだが、雪葉が卒業して以降、少し寂しいと澪は感じていたが、その少し後から穂花と仲良くなり、そして少し喧嘩などをしたが柚子とも友達になり、今では親友である二人と澪は仲良く学校へと通っていたのだった。
駆け出して直ぐに二人に追い付くと澪と穂花、そして柚子の三人は仲良く話をしつつ学校へと歩いて行く。
そして、ふと学校に行くために必ず通る公園を通り過ぎようとした時だった。
(誰、か………)
微かにだが、澪は声が聞こえた気がして周りを見るが、特に何も無かった。
「あれ? ……気のせいかな?」
「澪? どうしたの?」
立ち止まり、辺りをキョロキョロ見ていた澪に気づいた柚子が近づいて来て澪にそう声を掛け、柚子と一緒に近づいてきた穂花も不思議そうに澪を見ていた。
「え、あ、うん。ちょっと声が聞こえた気がしたんだけど…」
「声?‥‥う~ん、私は聞こえなかったけど…穂花は何か聞こえた?」
「ううん。私も何も聞こえなかったよ?」
柚子は穂花にも尋ねるが、穂花も聞こえていなかったようで首を横に振り、澪は勘違いだったのかな? と思い歩き出そうとした時だった。
(たす…け…て‥‥だれ‥‥か)
小さいが、今度は確かに気のせいではないと確信を持って歩き出そうとした足を止めて注意深くを辺りを見て行く。
「澪? 本当にどうしたの?」
「早く行かないと、学校に遅れちゃうよ?」
「ごめん、二人とも。もう少しだけ待ってもらえないかな?」
「…はあ、分かったわ」
「ありがとう、柚子ちゃん」
歩き出してすぐにまた足を止めた澪にそう声を掛けて来た二人にそうお願いすると、柚子が仕方なさげにため息を吐いた後了承してくれて、澪はお礼を言った後、もう一度今度はさっき見た時よりも更に注意して辺りを見て行く。
道路や縁石、木や林の下などを見た後、公園の中へと視線を向けた時、公園の入り口近くに小さな生き物が倒れているのに気が付いた。
「っ、見つけた!」
「え、ちょ、どうしたのよ!?」
「澪ちゃん!?」
急いで公園の入り口へと澪は走り、急に公園に向けて走り出した澪を柚子と穂花は追い掛けてくるが澪は振り返る事無くそのまま見つけた動物の元へと駆け寄った。そして近づいて分かった、そこに倒れていた小動物は…リスだった。
「っ…酷い」
小学生である澪は医学に関しての知識はほとんどない。だがそれでもそんな澪が見ても分かる程にリスは重傷で、それを証明するかのようにリスの下の地面には血の跡があり、リスは今は途切れそうな程に弱い呼吸をしていた。そして、その様子を澪の直ぐ後を追い掛けてきた来た柚子と穂花も目撃した。そしてリスの状態を見て穂花は思わずといった感じで口に手を当て、柚子は痛々しげに眉をひそめた。
「…酷い傷」
「そうね。それにかなり血が出てるわね…」
正直に言って、誰の眼からみても助かる確率の方が低いと感じさせるほどにリスの状態も息の強さも弱々しいものだった。それでも澪はまだ助かる見込みがあるなら諦めたくないと思い、少しでもクッションになる様にとポケットからハンカチを取り出して広げ、そこに弱ったリスを負担がかからないように移した後、手に乗せて立ち上がる。
「ごめん、二人とも。私このリスを助けたい」
「た、助けたいって。どうするのよ?」
「取り敢えず、学校に連れていって、保健室の先生に診てもらおうと思う」
「あ! 保健室の先生にそのリスさんを診てもらえば!」
「助かるかもしれないわね…なら急ぎましょ!」
「うんっ!」
リスを放ってはおけないと二人とも思っていたのだろう、澪の言葉に穂花と柚子は理解をした後、出来るだけリスを揺らさない澪たちはしつつ時折後退しつつ学校へと向かい始めたのだった。
そして、いつもはすぐに着くはずの学校にようやく到着した澪たちは、教室に向かわずにそのまま保健室へと来ていた。そして澪たちの元にリスはおらず、今は保健室の養護教諭である佐藤先生が診察と治療をしている所だった。
そして診察と治療が始まって本当は五分も立っていないが澪たちはまるでもう一時間は経ったかのような感覚を感じていた。だがそんな状態を切り裂く様にカーテンが開く音が聞こえ、澪たちは一斉に佐藤先生の元へと近寄った。
「せ、先生。そのリスさんは、どう、でしたか?」
「ええ。動物専門のお医者さんじゃないから絶対とは言えないけど、貴女達が連れて来た時よりは安定しているし、出来る限りの処置はしたわ」
「「「よ、良かった」」」
そしてその後処置台で包帯を巻かれた状態で横になっているリスを見て、まるで妻が無事に出産した事を知って安心した旦那のように、澪たちはそれぞれ安堵のため息を吐いた。
そんな三人の様子を見て佐藤先生は僅かに笑みを浮かべた後、澪たちに提案をしてきた。
「それでも安心は出来ないから、リスは貴女達の授業が終わるまでは私が見ておくから、貴女達はリスの事が心配かも知れないけどちゃんと授業を受けてきなさい。もちろんお昼休みに来ていいから。いいわね?」
「「「は~い」」」
リスを一目見る事が出来て、朝よりも安定しているのを見た澪たちは佐藤先生の言葉に素直に返事をして、少しばかり後ろ髪引かれるつつも保健室を出て教室へと歩き出したのだった。
そして、澪たちが教室について自分の机に教科書を入れて少しして、教室のドアが開き澪たちのクラス、三年二組の担任教師である大渕綾乃先生が入って来て挨拶をする。
「皆さん、おはようございます」
「「「「「おはようございます!!!!!」」」」」
「はい、元気でいっぱいでいいですね!それじゃあ」
生徒達からの元気な挨拶をされ大渕先生は嬉しそうに微笑んだ後、教壇へと移動して朝の朝礼が始まった。
朝の朝礼は特に何事もなく終わりを告げた。
「はい、それじゃあ一時間目は国語だから、国語の教科書とノートを出してください」
そして、そのまま一時間目の授業が始まったのだった。
※ ※ ※