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熾天の魔導師  作者: シウ
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第二話 

ご迷惑をおかけしていますので、連続で書けている部分まで一気に投稿します。

階段を降りていると香ばしい匂いが澪の鼻をくすぐる中、階段を降りて左へと曲がり、リビングへと入る。


「おはよう、お母さん」


「あら、澪。おはよう」


 澪があいさつして挨拶を返してくれたのは澪の母親である白崎百合。雰囲気としては澪も将来こうなるのだと思わせる澪と同じく茶色に近い髪と澄んだ青色の瞳を持つ女性だ。

 歳は三十代後半のはずなのだが、その見た目は二十代と言われても通じる程であり、見た目はおっとりとしているような美女に見えるがその仕事は医療の現場である病院に勤務する現役の看護師だ。


 そして趣味はおやつ作りであり、その趣味のおやつ作りのお陰でちょうど怪我をして入院していた澪の父親である白崎優と出会い、そこで互いにお菓子作りが共通の趣味という事で仲良くなり二十代前半で結婚をし、澪たち三人を産み、ここまで育てた強い母だった。


「ごめんね澪。もう朝ご飯が出来るから、道場に行ってお父さんたちを呼んできてもらえない?」


「うん。分かった。じゃあお父さんたちを呼んで来るね!」


 お願いね~!という(百合)の声をは~いと返事をしつつ澪はリビングを出るとその足で玄関へと向かう。そして玄関で靴を履いて外に出るとそのまま家のすぐ隣にある日本家屋へと行き玄関を開ける。


 するとそこには三つの靴がある事を確認した後、靴を脱いで中へと入り扉を開けて一礼した後、澪の目に入ったのは防具を付け竹刀を構えた状態でその場から微動だにせずに相対する澪の兄である絢夜と、同じく澪の姉である雪葉だったの姿だった。

 どうやら朝稽古の最後の真剣勝負のようだったので、澪はその場で事の推移を見守ることにした。


(お兄ちゃんもお姉ちゃんも、凄い集中してる)


 二人の朝稽古を何度も見た事はあるが、実際に竹刀を振るった事のない素人の澪でも分かるくらいに澪の兄である絢夜は集中していた。

 澪の兄にして白崎家の長男である白崎絢夜は剣道で数少ない竹刀を両腕で使う二刀使いで、現在は美空町にある剣道の強豪として有名な公立高校へと通っていた。


 絢夜の体格は人の審判をしている澪たちの父親である白崎優によく似て鍛えられており、今は面を被っている為に顔は見えないが、その下には黒髪に黒い目に加えて、妹である澪から見てもその顔立ちは父親に似て整っている穏やかな印象を与える男子と言える事を妹である澪は知っていた。

 そしてまだ正式にお付き合いはしていないが、仲の良い女子がいることも知っていた。


 そんな穏やかな印象を持つ絢夜だが、それも試合では驚くほど一変する。それはまるで普段は鞘に納められて一見穏やかだが、ひとたび試合となれば穏やかな雰囲気は消え去り、変わりに触れれば斬れる抜き身の刀のようで、何も知らない人が見れば勘違いしてもおかしくは無いだろう。


 そしてそれは兄である絢夜と相対する澪の姉である雪葉にも全く同じことが言えるだろう。兄である絢夜と相対するのは絢夜の妹にして澪の姉である白崎家の長女である雪葉も同じだった。


 雪葉は澪と一昨年卒業した絢夜が通っていた施設分離型の小・中一貫校である天原学園の中等部に通う三年生で、今年は受験の年だった。そして実を言えば兄である絢夜が通っている公立高校から早くもスポーツ推薦が雪葉の元へと届いていたが、しかしそれは決しておかしい事では無く当然とも言えた。


 何せ、絢夜も推薦ではなく自力で現在の高校へと進学したが、小学から現在まで竹刀を振り続け、その実力は今の澪と同じ小学生三年生の時すでに、県大会で優勝するほどの実力を身に着けており、中学では個人で二度、団体では大将を務め全国優勝を果たす程の実力者だ。


 そしてその妹である雪葉も小学時代に何度か県大会決勝に進む実力を持っており、中学一年の時には全国大会にも出場するほどの実力を持っており、今年中学最後の県予選の団体戦では惜しくも負けたが、個人戦では優勝し、既に県体大会本選に出場する事は決まっている。

 そんな優れた兄、絢夜の妹である雪葉に呼び声が掛かるのはある意味で当然と言えた。

 そして、その容姿は年相応で鍛えられているが女子特有の柔らかさもあり、胸のは現在も成長中であるため正確には分からないがCからDほどあるだろう。

 そして、髪は剣道で邪魔にならないように肩の辺りで切り揃えていた。

 顔立ちは母である百合に似ているが、髪の色は父である優と母である百合の半分ずつとりいれたような茶色に近い黒で、眼の色も同様だった。


(でもお姉ちゃん。推薦を蹴っちゃったんだよね…)


 そう、高校からの推薦を雪葉は、自力で入学する、そう言ってスポーツ推薦を辞退したのだ。現在はまだ四月だが既に絢夜と共に朝の鍛錬に学校での剣道練習だけではなく受験勉強も始める文武両道をこなしていた。そして澪はそんな二人の兄と姉を素直に凄いと思っていた。


 澪自身は、兄や姉と自分を比べようとは全く思わず、偶にお兄さんやお姉さんの様に剣道をしないの?と友達や周りから言われるが親友である二人が跳ね返したりしてくれているので、今の日々がとても楽しい。

 でも、ふとした時に澪は思う。私は何が出来るのだろう、と。運動に優れている訳でも、頭が良い訳でもない自分に出来る事は何なのだろう、と。


「…はっ!」


 いつの間にかそんな事を考え始めようとしていたを澪の考えを切り裂く様に張り詰めた雪葉の声が朝の道場に響いたかと思うと、竹刀がぶつかる音が響き、澪が見ると絢夜が右手の竹刀で雪葉の竹刀を止めていた。


 どうやら絢夜の胴を右側から狙った雪葉の竹刀を絢夜が受け止めたようだった。そして僅かの間拮抗し、その拮抗を崩す様に、今度は絢夜が声と共に左の竹刀を振る。狙うのはがら空きの雪葉の胴。しかし、そのまま当たるかと思われた絢夜の胴薙ぎは雪葉が後ろへと引いたことによって空振りに終わる。

 そして、そこからは怒涛の攻防の戦いだった。


「やあああぁぁッ!」


「はああぁぁッ!」


 互いに一歩も譲らず、相手の隙をつくようにして竹刀を振るい、一本を取ろうと攻防を続ける。それは一、二分ほどの短い攻防だったが、見ている者からすればそれは実に長い攻防という感覚を与えるだろう。


 そして、いつの間にかつい先ほどと同じような状態、雪葉の胴薙ぎを絢夜が右の竹刀で受け止め、雪葉の先ほどと同じように後ろへと体の重心傾けた瞬間、絢夜が一歩踏み出すと同時に雪葉の右に通り抜ける様にして胴を左の竹刀で打った音が急激に静かになった道場に響く。


「胴一本。勝者 絢夜」


 そう宣言したのはその二人のその間に立ち審判をしていた澪たちの父親であり、元警察官にして現在は「harmony(ハーモニー)」でお菓子職人であるパティシエとして働く白崎優だった。


 ※  ※  ※

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