校長「えー今日は……異世界へ召喚された話をしましょう」
「えー皆さん、おはようございます。今日もいい天気ですね」
全校集会。いつも通りの流れで校長の話が始まる。
ウチの学校の校長はいつも話が長い。だから眠い。
「今日は、私の昔話でもしようと思います」
だけども、眠いからと言って寝ていると先生に叱られる。
あーあ、さっさと終わって――
「私は昔、異世界へ召喚されたことがあります」
……え? 異世界?
「異世界というのは、今皆さんが住んでいる世界とは全く違う文化を持つ世界のことです。漫画やアニメでも見かけるアレです」
嘘……だったら、こんな有り得ない話を全校生徒の前で話すわけがないよな。
とりあえず、ちょっと耳を傾けて聞いてみよう。
「あれは私が教師になる前のことでした。ある朝、いつものように外へ出ようと玄関の扉を開けると突然眩い光に包まれ、気が付くと目の前には綺麗な女王様と沢山の兵士がいました」
おお、よく見かける召喚物の話の始まりっぽい。
「そして、女王様にこう言われました。『この者を……牢屋にぶち込んでおけ』と」
なんで!? え、ええええ!? 大概こう言うのって歓迎されるものじゃないの!?
「そして私は牢屋に閉じ込められました。ジメジメとした地下室に灯りは蝋燭のみ。奇妙なうめき声があちらこちらから聞こえてくる場所でした」
それよりも、どうして牢屋に……。
「私は兵士に問いました。ここはどこなのか、何故、牢屋に閉じ込められるのか」
そりゃそうだ。
「兵士は言いました。『ここはお前のいた世界とは違う世界、つまり異世界だ。お前は魔王を倒す為の勇者として、我が国に伝わる召喚儀式によってここに来た』と」
ふむふむ。
「だったら何故こんなことに……と尋ねると、『勇者と名乗るにしては、あまりにも容姿が醜すぎる』」
……え?
「『だから女王様は召喚に失敗したと判断し、とりあえず牢屋に閉じ込めておけと命じられた』と、包み隠すこともなく、私に告げました。まあ、無理もありません。当時の私は物凄く太っていて醜かったのは事実でしょうから」
いや、だからと言っても、わざわざ牢屋に閉じ込める必要なくない……ひどくない?
「どうやら女王様はプライドというのが高く、先祖代々伝わる儀式で私を召喚したことによって大失敗してしまったと思い込んでしまったらしいのです。そして兵士が去り際にこう言ってきました」
嫌な予感しかしない。
「『女王様の性格上、お前は処刑されるだろう』と。召喚に失敗した怒りと、失敗したという事実を近隣諸国に知られて辱めを受ける前に、召喚した私を処刑してなかったことにしようとしていたみたいです」
ええっ……。女王様、頭おかしいだろ……。
「……あっ、今笑ってもいいところですよ?」
いやいやいやいやいやいや、笑えるかい!!
「勝手に呼んできたのに、勝手に殺そうとするなんて酷いですよね、本当に。私も相当怒りました。けれども、今は牢屋。どうすればいいか分からない状態です。だけども、どうにかして絶対生き抜きたい。そう強く思っていると……」
それでそれで……!!
「……と、話が長いと皆さん退屈でしょうから、ここで終わりますね。また、次の全校集会で続きをお話ししましょう。では、これにて話を終わります」
えぇ~……。
次の全校集会、明日にならないかな……。