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電話

今日は水曜日だから当然仕事があるのだが、受話器を置いた瞬間から体の力が抜けて、その場で仰向けに寝転がってしまう。天井を見て小さなシミを見つめていると、そのシミがどんどん大きくなって、深い深い沼が現れる。澱んだ水はまったりとした様子で、わずかに水面が波打っては収まりを繰り返して、私は澱んだ水でいっぱいになる。

時々、眼の端から溢れた水がこぼれ落ち、そして溢れた水に私は少しずつ沈んでいく。彼女の残した哀しみの中に沈んでいくのだ。

繰り返す。繰り返し。いつも同じ…。

なにかの儀式の様に、私は天井を見上げ、身体を投げ出し、他人の哀しみに沈んでいく。


彼女は私への電話で、少しは楽になっているのだろうか。

彼女は私へ哀しみを置いていくことに罪悪感は無いのだろうか。彼女が置いて言った哀しみは、無数の毛穴から少しずつ体の中に入ってくる…。

沼の中で他人の哀しみについて、アレコレと思い巡らしても何もいいこともなく、ただ体が重くなっていくだけなのだ。浮き上らなければ、哀しみの沼で溺れてしまう…。

水面を目指して水をかく。今日の水はぬるぬると妙な感覚だ。哀しみが深く重い。いろんな景色が見えてくる。私の見たことも無い街、人、物、事。体にまとわりつく彼女の哀しみが、私を沼の中に閉じ込めて、なかなか上へ上がれない。息が出来ない。

どうしたんだろう?圧倒的な哀しみが、彼女を襲ったのだ。きっとそうだ…。

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