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晴れたり曇ったり


 今日は嫌になるほどの突き抜けた青空が広がる朝だった。

いつものように電話が鳴り、耳に当てた受話器からは、もしもし…の声はなかった。

ほんの少しの息が漏れる音。その瞬間、彼女の哀しみが無数の穴からこぼれ落ちてきた。

今日の彼女は、哀しみを抱えきれなくなったから電話をしてきたのだ。今日も彼女は。そして次も。

彼女は古い友人だった。


 何にもない日常の中で起こった、人生最大の悲しい出来事をキッカケに、彼女と少しだが言葉を交わすようになっていた。

その時は二人の間に、「言葉」があった。


「何かあった?」

一呼吸…

「あったんだね… 私は相変わらずだよ。」

「朝起きて、鏡見て、あ〜今日も仕事かぁ、てため息ついて、支度して、出勤して、仕事して、買い物して、帰ってきたけど誰もいなくて…の毎日。そして今は、返事をしてくれない友達と電話してる。」

浅くふた呼吸…


これで終わりだ。


 受話器が置かれ、ツーツーツー。。。という音が聞こえる。私も受話器を置いた。

彼女は何故電話をしてくるのだろう。心配もしない、優しい言葉をかけるわけでもない私に。


 私との電話で、彼女は哀しみを置きにくる。それでも私は、そんな事にはお構いなしで近況報告をする。いつも同じ、近況報告はいつも同じだ。それが終わると電話は切れる。決まった手順の儀式のようだ。

置いてけぼりの哀しみは、行き場もなくそこに漂う。そうして私の周りには、置いていかれた哀しみが、わたゴミの様にふわふわと留まり続ける。わずかな風に舞う…


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