エゴイスト・ゲーム
愛用している中古ゲーム店の入荷ページをみていると、一時期話題になった無名メーカーのソフトが目に入った。
それは数年前のP○2のソフトであり、なかなか出来は良かったが対象年齢が全年齢対象に対し大人ですら難し過ぎて、優しいでも激ムズ難易度のゲームだった。
内容は、世界警察の主人公がテロリストや悪党などの悪人をターゲットに痛快アクションあり難解なパズルありでかなり作り込まれていた。
・・・・・・ここで手に入るとは…!
これはもう買うしかないと歓喜に溢れ、今日の曜日を確認する。
・・・・うん、定休日じゃないな、よしっ!
そのままレビューを開こうとした指が止まった、このゲームはパズルやクイズが大量にあり、ネタバレする可能性があると踏みとどまった…が、つい読んでしまった。
[――最高クラスの出来でした!程よい緊張感からの痛快アクション!そして頭を冷やすばかりに出題されるパズルを難易度!でも……]
そこで目を切り時計を見た「7時40分」…もう時間だ。
いつもギリギリで登校するので俺はすぐリアルに戻った。
自分の部屋から飛ぶように支度をすると
「もっと早く起きて余裕もって行けばいいのに、それだからモテないんだよ笑」
いつもは俺より早く学校に行く中ニの妹が走り回る兄にため息混じりに毒を吐く。
俺は大きなお世話だと手を振るとそそくさと家を出ていった。
学校は自転車で通うには遠く、電車で通うには近いやや田舎にあり、すぐ気を抜くと遅刻してしまう油断を持せない立地だ。遅刻しない為に電車に乗り15分。
遅刻しないかフラフラになりつつ自分の席に着いた。
「おはよ、玲司。またギリギリだねぇ〜」
隣の席の桜が冷やかし混じりに話し掛ける。
「どうも朝練ないんでな、あとおかげで睡魔と遅刻と戦う事になるわ」
と軽くあしらい手元のスマホに目を落とすと、遅刻3分前になるアラームと画面に反射するくせっ毛の男子高校生が映っていた。
桜葉玲司、今年で高二、やや特殊な考えを持っている。
その考えとは、超自己中で超合理的な思考をしていて超が1000個付くほどめんどくさい人間だ。
「(――あーあ、早く帰れねぇかな〜早くゲームやりたい…)」
しかも、ゲーマーではないがやや古いゲームをこよなく愛し3度の飯よりゲームが好きと言う変人である。
「(ねぇ、昼休み集合ね!)」
桜の訴えをシカトし軽く睡眠に入る。
玲司には、知り合いはたくさんいるのだが友人は少ない、親友なんてもってのほかだ。少し感覚がズレていて寄ってくるのは一癖二癖のある人間ばっかだ。
数少ない友人中の1人の小林桜は、身長は低く非常に軽い(色んな意味で)少しかわいいといった印象…容姿は、中身は小学生のような精神で玲司の頭痛の種の1部だったりする。
大きなため息と悪態を軽くつくと次第に意識が薄れていった。
――放課後――
「なんで来てくれなかったのさ!それも全部シカトするし!」
隣の小学生ならぬ桜がブーブーとプすくれて机を叩く
「やめろ小学生、おうちに帰りな」
火に油を注ぐのはこの事である。ぷんぷんと怒り帰ってしまった。「(また、やっちゃったな…今度何か奢るか…)」
だから友達が少ないのは百の承知で分かっていたがつい気が抜けると直ぐに素が出てしまう…悪い癖だ。軽く落ち込み俯きながら歩を進める。
「(まだ残っているといいけどね……)」
常連の中古ゲーム店の前で足を止めニヤッと笑う。周りからみたらただのゲームオタクか不審者だろう、そんな妄想を取り払い店に足を踏み入れる。
「やっぱり来ると思ってたわ、なんでシカトするのよ!」
「(昼休みスカしてたのは良いのか…)」
まだ飽きずにぷりぷりと怒ってらっしゃる。
これは品出し中の店員さんも苦笑い、見られたのが恥ずかしかったのか、店の奥へ来いと顎で命令するとズンズンと行ってしまった。
もちろん、俺は、行かない。
ふらふらと中古ゲームコーナーを覗くと…
「んっ!?」
そこに数少ない友人の気配がし、俺は思わず遠回りし棚の横へ身を隠した…が、時すでに遅し。
「やあ、奇遇だねぇー玲司くん笑」
よりによって地球上会いたくない人物4位に入る魔物に会うとは…ついてねぇ。
こいつの名前は齋藤宏、同じ仲間とは思いたくないがこいつもゲーム好きでソフトの傾向が俺に似たり寄ったりして、ここまではまだいい(シカト出来るから)でも、ここだけは許さん…なんでイケメンなんだよ!神はとち狂ったのか?もしや死んだのか!?ありえねぇ…。
思いもつかなかった悪魔的再開と会ったこの話が今後しばらくは聞かされるという事態に悶絶している。
「あ!いたぁー!どこに行ってたのよ!さがしたんだから!」
いつにも増して口調が厳しくなってる、探すの頼んでねぇよ…。
「(もう無理…病院行こ…)」
頭痛の種が増え、至福のゲーム時間がすり減り、胃袋がぐしゃぐしゃになるのが強く伝わった…。
「あれぇ?桜ちゃんどうしてここに?」
「んっ?別にいいじゃん」
即落ちするこの会話、日本人の察スキルを全開にしなければ到底理解できないであろう言葉の情報のなさ、泣けるぜ。
無言カバティ状態の2人をシカトし会計を済ませ帰路に着いた。
「!?」
家の前に誰かいる!?ス○ーク顔負けのストーキングで近付くと、やっぱりあの二人だ…心の豪雨止んでくれぇ!
「なあ!玲司、ゲーム買ったんだろ!?やろうよ!」
「えっ?買ったの?私もやりたい〜!」
「(あー!もう!ゲームさせてくれぇ!!!!!)」
この少しあとに、俺はこいつらと高校生活を共にし、ゲームを介して様々な友人達を作って行くのだが、まだ時間がかかりそうだ。
読んでくれてありがとう。
反応があればまた書こう。