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作者: Hato

鈍い轟音が夏の青空に響く。白い大きな翼を広げた鳥は、今日も不思議な鳴き声をあげて内陸へ向かう。

カジさんは突然わたしのところに訪れた。


久しぶりですね

「おお、いつのまにか大きくなって」

あなたと別れてからさほど変わってないと思いますよ?

「いや、他の子達に比べれば君の成長はずっと早い。やっぱ環境が整っているからかな」

カジさんは変わってませんね。

「ニンゲンはさほど変わらないさ。最近はどう?」

相変わらずです。まだまだ星の丘までは時間がかかりそうで。

「その調子じゃ俺の孫が死ぬ代までかかりそうだな」

寂しいことを言わないでください。

「寂しくなんかないさ。こうして何人もの人たちにずっと見守られているんだから」

はい…でもお一人お一人との時間が、本当に短いのです。気づいたらみなさん、星の丘より遠くにいます。

「ニンゲンの寿命はまだそんなもんだからな」

カジさん、あなたは特にですよ。足は目標に進むためにあるんです。それを失ってしまってはいけません。

「しょうがないだろう。時代が悪かったのさ。でも俺は目標のためなら足だってくれてやる」

カジさんの目標ってなんですか?

「この戦争が終わったら、教えてやるよ」


それがカジさんとの最後の会話だった。

カジさんは戻らなかった。そして私はまだ星の丘には全く届いていない。

やがて、星の丘があった場所にはコンクリートが流され、鉛の走る道路ができた。ニンゲンはカジさんも私の丘も奪ってしまった。今ではどこに向かって進めばいいのかわからず、ただ根ばかりが蔓延る。

あれから何年経ってしまったんでしょう。あの奇妙な鳥が空を飛ぶことはなくなりました。真っ赤な血を流す人も、恐ろしい炎も見なくなりました。

そういえば、この前また1人お友達ができたんです。

彼女は絵がとても上手で、カジさんのことを伝えたらそっくりに描いてくれました。しかし彼女はあなたの赴いた戦争というものすら知らないそうです。

あの争いが奪ったもの、あなたの命、わたしの丘、忘れはしません。しかし日々確実にこの島は忘れているのです。

今度会った時はもう少し大きくなっていたいですね。あなたがガジュマルに生まれ変わりたいと言った日をわたしは忘れません。それまでに、焼かれた木々の荒地をしっかり整えて起きますね。あなたにまた会えるのを楽しみに、夢と目標を根に込めて、今日もこの島を旅します。


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