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呪い纏いし姫君~中等部編  作者: 顔芸部部長
7/8

番外編、グルメの母娘

ははは、わしは怠けモノだからな!!最近はよく怠けた!

ごめんなさい。反省はしないけど、怠けてごめんなさい

前回概要:ないよ!!取り敢えず、凛と香里おかあさんが仲直りした後のお話と認識してください




グルメ業界では、ある二人の女性は非常に有名である。


もう四十を越えるが、優しげな面持ちの下に隠された熱い闘志を燃やすのは、伝説のキングメーカー、姫路香里である


決して美熟女とは言えず、前と比べて少々腰周りの肉が増えて、体重もつい六十台を切ったオバサンだが


成熟かつ高貴なオーラを放つ彼女は確かに総体的に美しい女性なのだ。


仕事を辞め、一人娘に集中した彼女だが、流石に無職ではいけなかった。


本当は専業主婦でも余裕で食っていけただろうが、残念ながら香里は食べ専で料理はまったくできない人種である


家事もまあまあで、むしろ娘の方がよほど上手くできる。


ただの無職じゃプライドが許さないのか、香里は軽めの職業を引き受けることにした



香里はキングメーカーとも呼ばれている。その観察眼と審美眼は日本、世界からも一目置かれている。


それは料理についても変わりはない。


自分で調理することこそできないものの、その舌と鼻が下される評価は的確で、若き頃もグルメとして知られている


娘のため、激業に追われることはもう御免だが、プロのグルメとして働くのなら別に問題はないと考えたのだ



本当のプログルメは実に大変なのだ。


口にするものは全て管理されており、毎食、一品は一口まで。


そして出された品は全部必ず食さねばならない。


それでいてその出された品全てに正しい評価を下すのは、至難な技であるが


姫路のお嬢様がそんなことするはずもなく


香里は自分のルールで、店と料理を試し、評価していく


日本の女帝ならではの我儘ぶりだが、実力と実績もあるので、誰も文句は言わない。


むしろ香里への依頼は次から次と流れ込んでくるのだ



んで、香里がグルメ業界へ舞い戻ったが、二人の女性のもう片方も想像できたであろう


無論、一人娘の姫路凛である。


既に高校に進学した彼女の整った顔は相応に成長し、幼い雰囲気も減った。


彼氏の叡山神谷と比べれば幼く見えるが、それはあくまでも神谷が普通の高校生より大人びいて見えるからであり


くるくると大きい瞳に長いまつ毛、大して整ってもいないのに綺麗な弧を描く眉毛


白磁のように曇りもない肌に、小ぶりの桜色の唇と中等部の時と見違えるほど大きく膨らむ胸


身長も前世と違い157センチ止まりで、実年齢より少し幼く見える美少女になっている。


でも彼女を知っている人間は皆、凛のことをただ幼い少女とは思えない


鈍臭い運動神経に反して天才的な頭脳、


少々少女趣味すぎる嫌いがあるものの、冷静沈着で見た目以上の精神年齢を有する


何かと頼りなる少女なのに、甘えたがりの一面がある妹キャラ


と、ある同級生の女子グループのリーダーが言っている。



最近は性転換もそろそろ最後の段階に入る時期になり、本人は緊張しつつも期待している。


彼氏は待っていてくれているが、明らかに性的な視線で自分を見つめてくるのを察知しているからだ。


その彼女はいつも母親である香里の仕事を手伝っているため、グルメ業界でも注目されている。


何せ容姿が目立つ、凛自身はあんまり自覚ないが、あんまり着飾らずとも、彼女は目立つ


寧ろシンプル好きが災いになって、服よりきる人間が際立たせる結果になった。



今日も、二人は手を繋いで夜の繁華街を歩く。


でも、今宵の仕事は、初めて香里自身が参加せず、全部凛に丸なげしたのだ


一つは凛の審査を信用しているからだが、



「本当にオバサンいなくていいのか?」


「ん?さあ」



もう一つは、せっかくなので、若い二人にデートをさせようという魂胆である。


本当は学園でいっぱいくっついているから、気を使わなくてもいいと思ったが


まぁ、一緒にいると落ち着くから、素直に嬉しいと想っている凛ちゃんであった


ちなみに、香里の今回の仕事は、とあるレストランの分店の調査である。


そのレストランは今勢いが付いている新しい中華料理の飯店だ。


全部本場のレシピ、美味いのはもちろんのこと、日本人に合わせようとわざと変なアレンジもしていない。


だからこそ、本物の中国人は無論のこと、本場の中華を食べたい日本人からも人気が高い。



神谷も、凛も、上流社会にいるだけに、本場の中華を味わう機会も多い。


そのような美食が普通に日本に馴染めるのは、もちろん嬉しいことだ。


他愛もない会話を交わしつつ、二人は長い列を並ぶ飯店の前に到着した。


本来ならば、そのまま列の最後尾に付く所だろうけど、残念ながら凛も神谷も並ぶのは好きじゃない


二人とも上流社会の人間。態々並んでまで何かを欲することはほぼない


神谷も、凛の実家も専門のシェフがいるので、いくら名店でも並ぶのは時間の浪費と苦痛でしかない


よって、今回の仕事のため、二人は前をもって予約したのである



「はい、予約された叡山様ご二名ですね、こちらへどうぞ」



姫路という苗字が熟知されているので、予約には使わない。


叡山は叡山で有名かもしれないが、料理界じゃ姫路ほどでもないので、いいカモフラージュになる


二人は予約席につき、メニューを読み始める。


前をもって注文するものを決める人間もいるかもしれないが、凛はその日その時の気分に乗るものを注文することが多い


そしてメニューを読むのも、レストラン巡りの醍醐味と考えているのだ



「お前は何を注文するんだ?」


「定番としてマーボー、それと緑色の野菜」


「じゃ、俺は肉にするわ。獅子頭しーしーとうとかどうだ?」


「いいんじゃない?紅焼肉ほんしゃおろうも定番でしょう」



中華として一番知られているのは多分マーボーと青椒肉絲ちんじゃおろーすーなどだろう


しかし凛の持論として、マーボーこそ中華料理で一番シェフの実力を図れる品と認識している


何故なら、マーボーは簡単そうに見えて、その香り、辛さとの感じのバランスを取るのが難しいからだ


他の料理は誤魔化しも効くものも多いが、マーボーはシェフの未熟さを無情に曝け出す


ちなみに凛はピーマンが食べない。多分食べれるけど怖がって食べようとしない。察してやれ



マーボー、清炒青菜(野菜の一種)、獅子頭、紅焼肉と最後に同じくシェフの未熟さを残酷なほど曝け出す卵チャーハンを注文する


シンプルな品ほど、工夫が必要で、シェフの実力が出て来る。


それを、凛と香里は熟知している。



程なくして、最初の品、獅子頭がテーブルに乗せられた。


獅子頭は、簡単に言えば肉団子だ。


凛の拳ほど大きい肉団子は、豚肉とネギ、生姜や卵などを混ぜてある


豚肉も一応油の多い所と少ない所両方とも特別な比率で調和している。


最初は中国の古代の一人の王様に捧げた一品であるが、今や庶民的な料理になっている



ふんわりとした歯ごたえ、ジューと滲んでくる肉汁


思春期男子らしく肉好きな神谷は満足そうに舌鼓をうっている所を見ても、シェフの実力は確かである


その獅子頭は色んな調味方法が施されており、一つ一つ違う味を味わえるという楽しさもある


無難に紅焼味を味わった凛も、思わず「できる」と思ってしまった



次に出されたのはやはり野菜炒めである。


シンプルなので、どうしても淡白になりがちな野菜炒めだが、


その下にある黄金に輝くスープみたいな出汁のお陰で、普通の野菜炒めでは成し得ないような旨味を出している


使われる材料は野菜だけではないのは明らか。


恐らく鶏のスープと少量な砂糖を加えて、その味に深みを加えたのだろうと、凛は考えた。



紅焼肉、中国のとある伝説の王様の最愛である


その王様は一週間紅焼肉を食べないと禁断症状が出ると言われるほど、紅焼肉を愛していた。


お陰でその王様は肥満に悩まされていたわけだが


その肉ももちろん、豚のバラ肉だ。


肉の油身と合わせて食べるのが普通だが、たまには油身を食べない人間もいる


神谷は言うまでもないが、凛は油身を嫌う傾向があるものの、やはり定石通り合わせて食べる


通常の油っこさが殆ど感じず、豚肉の美味しさがそれでもかというほど凝縮されていて、流石の凛でも刮目せざるを得なかった



最後に出たのはマーボーと卵チャーハンだった


マーボー豆腐は馴染みやすい品であるものの、本場四川のマーボーは非常に癖がある


まず、四川の人間は辛いものが何よりも好きで、辛くないと文句をいう。


だから四川のマーボーはまず非常に辛い。


流石に日本に来て、四川レベルの辛さは滅多に出されないが、それでも普通のレストランのマーボーより何段も辛い


でも、そのマーボーを飲み込んでから、喉の深い底から甦てくる、後味


麻。それがマーボーの一番重要なポイントの一つだ


ただ辛いだけではだめだ、人の感官全てを刺激し、心地よい後味を残してこそ、合格なマーボーと言える



それでいて卵チャーハンもしっかりと美味しい白米と卵の旨味を生かしていて、


肝のネギの香りが二人の鼻を刺激する。


久々に、二人は満足のいく外食を済ませたのであった。



「食った食った。凛、デザートも頼もうか?」


「ん」



中華のデザートなら、胡麻団子などだろうか


今考えると、甘味はそれほどインパクトがあるような品がなかったように見える。


メニューを睨んでみても、これだ!という品がなかった。


甘いスープみたいなのもあるけど、凛はどっちかというとアイスが食べたかった。


すると



「あ、パフェ」


「……マジかよ、中華にパフェか?」



実に合わないと言わざるを得ないが、チョコパフェは好きなので、取り敢えず凛は注文を済ませる


そして出されたパフェを見て、凛は端正な眉を曲げた



上に二つのアイスが乗っていて、アイスの下に生クリーム、そしてアイスに刺す○ッキー


それだけをみればまぁ、普通のパフェだろう。


でも、


その生クリームの下は全部コーンフレーク。小さなお椀ではなく、縦長いコップの70%がコーンフレークが占めている



「シェフ呼べ」


「……凛?気持ちはわからんでもないが落ち着け……」



気づいた時には、既に凛の口から地獄よりも深い怒り満ちた声が出ていた



「はあ、確かにアイスが二つ乗せてはありますよね……」


「貴方の目が節穴ですか?貴方の耳はアクセサリーか何かですか?私が知りたいのは、何故パフェの70%がコーンフレークなぞが占めているということですが」


「そ、それは、普通パフェというものはコーンフレークが」


「貴方如きがパフェを語らないで。そもそも、パフェの中のコーンフレークはアイスやクリームを混ぜて頂くものです。大量のコーンフレークをアイスとクリームの下に固めて何になるというのですか

 私にどう食べろというのですか。生で食べろと?舐めているんですか?こんなものよく店に出す気になれましたね。私がオーナーだったら、そんな巫山戯たものを出した奴を切腹させた所です」


「はぁ、はぁ……」


「とうとう、とうとう、落ち着いて落ち着いて」


「大体貴方の態度はなんなのだ!明らかに客がご不満なのに、その原因も良く聞かず、アマチュア並の下らん言い訳を並べて、客が納得するとでも思ったか。まずは客からのクレームの中身を聞き、その後合理性を考え

 自分達のミスなら補おうとする努力くらい見せなさい。客のクレームは全部全部不条理なものではない。貴方如きがチーフ?片方のお腹がいたいでしゅね。ここのチーフは日本語が喋れば誰でもなれるんですか?中々

 素晴らしい職場です。日本語喋れるオウムでも紹介しましょうか、多分貴方より仕事ができますよ」



普段無口な凛が一転して、次から次とシェフとウェイターを罵倒する言葉が出てくる


確かに辛辣極まりないが、指摘する点だけは的を射ており、反論しようとも、言葉が出ない


この猛毒状態の凛の罵倒を受けてウェイター(一応チーフらしい)は半ば放心状態に陥った


これが我らが業界ではご褒美ですとか口走るやつもいたが、あれは凛から怯えられて逃げられている。



「信じられません。料理は素晴らしかったが、どうやらマグレのようです。こんなモノ出せたシェフも、貴方も、料理を舐めています。客を舐めています。そして、自分の仕事をなめている。

 不愉快です。帰ります」


「ああ、おう。」


「お釣りはいりません。よくやりましたという意味でのチープとしてお受け取りください」



そう言って二万円をテーブルの上に置いて。凛はプンスカと店を出た。


慌てて後を追う神谷と、ポカンとしているウェイターを残して。



後になってわかったが、料理担当のシェフとデザートを作った奴とは別人である


そのシェフが叡山のことを知っているため、腕をかけて最高の夕食を作り上げたが


二人のオーダーが全て消化しきった後に気を抜いて、デザートがくることを忘れて、他の人間に任せてしまったのだ


運悪く、例のデザート担当は怠け者で、とうせガキ二人と手の抜きまくったモノを出しやがった


後にクレームを喰らったウェイターが取り乱したのは、凛に一目惚れしたから、罵倒されてショックなだけだが、二人が知るよしもなかった



毒舌の姫様


グルメ業界でよく名を知られた少女。


お姫さまのような輝きを持ちながら、料理のことで逆鱗に触れるとたちまち容赦なく毒を吐く


彼女とその母上を怒らせ、不合格の烙印を押された店は必ず長続きしない


その母娘の足跡を記録するグルメ雑誌もあるくらいだ。



因みに。例の中華料理飯店は、後に粗相をやらかした二人をクビにし、もう一度チャンスをと凛の所にやってきたのは言うまでもない


その後、中華風のデザートで母娘二人を満足させ、部下の尻拭いとリベンジマッチを果たしたシェフは一気に有名になった


「今思えば、お怒りを買ったのも何も全部悪いことじゃナイ。彼女は私の幸運の女神アルよ」


と、シェフがその弟子に語ったかいなかったか

中国人でみんなアルアルと言ってそうなイメージだが

まったくそんなことなかった。本当

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