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呪い纏いし姫君~中等部編  作者: 顔芸部部長
6/8

酔から覚めた夜に

他の連載もしていて、こっちが遅れてしまってごめんなさい

以外と進みにくいんですよ、ここは


前回概要:我が両親ながら、最低なやつだった。



別に母上は嫌いじゃない。


むしろどっちかと聞かれれば、多分好きだと思う。


今神谷んちにお世話になる機会が多いけれど、正直母上と一生離れ離れになるのは、つらい


私は感情に鈍い。


神谷への愛情を気づくにも、数年掛かった。


狂った人生の中、両親からの少々少ない愛情に気づくことわけもない


だから、自分から二人への愛情に気づくのも、難しい。


それでも、あの二人を失ってもいいのって聞かれた時、湧き上がる感情は誤魔化しようもない恐怖だった


だから、分かる。


感情が薄い私でも、一応その両親を愛しているのだなって



母上は、別に悪い人でもない。


恋に生きて、人生一番愛した男を自分の一番の作品にした


なのに、その男は私が生まれた後、浮気をした


前世の記憶によると、私が生まれて一年あたりからだそうだ


父上の浮気相手は母上と違って、美しい女性だった


結婚できなくとも、父上との恋だけで満足する健気な女性


それでいて父上の部下でもあれば、母上が勝てる要素などどこにもなかった


別に愛情は顔だけじゃダメだろうげれど、プラス要素の一つではあると思う。


前世と比べて、神谷が明らかに私に向ける目が優しいのはそのお陰もあるんじゃないかな


前世も悪くはなかっただろうげれど、今より暗いし、体つきは男よりだしね



誰が悪いのか、別に今更議論するつもりもない。


母上も、父上も、ただただ恋に全力疾走しているだけ。


その犠牲者が前世の私ってわけだが、まぁ、前世で死んで一番の責任は私がダメだったからだ


別に責める気になれない。


つくづく私は身内には甘いと実感する。


でも


私が悪夢から目が覚めて、幸福を願って歩き出した


ならば、母上と父上も、そろそろ目覚めてもいいのだ


淡い初恋の夢を持つ母上、本気の恋の夢に溺れた父上


そろそろ覚めて、現実を見なければならない。



父上は、このまま続いても、好きな彼女と結ばれることは絶対ありえない


母上は、どんなに反撃してても、浮気相手かのじょ以上の愛情を受けることはない


二人の眠りを壊すことができるのは、一人息子むすめたる私だけだ



辰巳のおじさんと希佐子さんに相談してみた


二人も両親の歪みに気づいているが、いくら友人でも、他人の家庭の事情に強引に手を出すわけにもいかない


下手すれば、二人の働き次第で、本来均衡ギリギリ保っている今の状態が崩れる可能性もあった


その責任と重責を背負わせることはできない


だから、私が手をうつ。


家族の私だから、干渉することは許される。


希佐子さんは私の計画を聞いて、母上は可哀想と少し反対した


でも、荒療治はやむを得ないと理解しているか、最終的に同意してくれた


無論、辰巳おじさんは最初から賛成だった。


母上とはそれほど友情がないが、母上を堕とせば、父上の攻略に繋がる。



「上手くいくかねぇ~」


「祈るしかない」


実際、子供の浅知恵のようなものだしね


策自体は単純明快。


前世、母上の目を覚ましたものは、私のうつだった


しかも高校に入っての頃。三年後には更に悪化して屋上直行した


さすがの母上も、私から漂う不穏なオーラに気づいて、自分の職を下げてもらい、私の世話に当てた


その時は既に手遅れだったが、すぐに父上も帰ってきたのを記憶している。


今、私は相変わらず感情の起伏が小さいが、前世と比べれて遥かにマシだ。


恋が人を変える。そのプラスの例だな。


たまにでも、神谷とイチャイチャできるのは激しく幸せなので、最近は表情筋もすこし柔らかくなった


だからうつ作戦は無理だが。


その代わり、もっと酷い状態を感じててもらう。



あれから、1週間、私は毎日神谷のウチに泊まっている。


中一だから、流石に幼い頃のように一緒に寝れないが、一つの客室を私専用にしてくれた


私に無縁な話だが、神谷は既に精通している。流石に私と一緒に寝るのは彼にも毒だ


まぁ、ナニされるわけもないから、私は気にしないけど、神谷にはまだ刺激が強いらしい


私の作戦は、母上に“私を失ってしまった”という状態に陥ってもらうというもの


例え帰っても、私がいない。連絡しても、もう神谷の家で寝てしまったと希佐子さんに答えてもらう


流石に息子むすめが奪われてしまった!と母上は涙目だったらしい


今は希佐子さんが母上を誘い出し、カフェでお話することになっている


母上は被害者の部分が大きいが、やはり沢山後悔してもらう



---------------------------------------------------------------------



「香里ちゃん、私を責めても意味ないわよ。そもそも凛ちゃんが可哀想よ」


「り、凛?あの子は好きな男のコと一緒に過ごせてよかったじゃない。それで私に会ってもくれないんでしょう?」


見当違いしている私の親友、香里を誘って、カフェでお茶をする


本当は頭のいい子なのに、あの人と関わることだと冷静を失い、ポンコツになるのよね~


「でも、いくら凛ちゃんでも、叡山家はあくまで他人の家なのよ」


「……じゃ、帰ってくれてもいいじゃない」


「姫路家に、凛ちゃん以外誰がいるというの?貴女は週二回だし、あの人は一度だって一緒に凛ちゃんと食事をとったことある?」


少し声を荒らげて、責めるような口調で香里に答える


香里はポカンとして、自分の仕出かしたことの意味を理解する。


「だから私達は凛ちゃんを自分の娘のように可愛がるのよ、あの子が大人しいけれど、大人しすぎる嫌いもあるわね

 寂しくとも、一人で耐えてしまう。そんなの酷いわよ。

 私は嫌よ、何れ私の義理の娘にもなる子だもの、それは沢山甘やかして、帰らせなくなかったわ。

 なんせ、凛ちゃんの両親は、自分のことしか考えてない、その凛ちゃんを捨てたのだから」


「ち、違う、私は、凛のこと……」


「大切?愛してる?言うだけなら簡単よ。行動に出た?ちゃんと頭撫でてあげてた?

 知ってる?あの子は夜一人では眠れないの。一人で睡眠薬を買って使っていたわ。

 でも、薬を取り上げて、ビタミンを睡眠薬に騙って飲ませて、頭をナデナデしてあげれば、すぐにすぅって眠っちゃうの」


恐らく知らなかったのだろう。凛ちゃんは自分が辛くても、殆ど言葉にすることはない


心が女性だってことも、恐らく限界まで耐えていたに違いない。


香里が、私が知る、自分の娘の真実を聞いて、ぽたぽたと涙が溢れてくる


己の不甲斐なさを実感したのでしょうけど、私は心を鬼にして追い打ちを掛ける


「知ってる?あの子はああ見えても甘ん坊さんよ?

 たまに寝ぼけてるあの子を撫でてあげたら、こっちに抱きついて頬ずりしてくるの

 後になって少し恥ずかしそうにするけれど、そこもまた可愛いのよ」


香里が知らない、それはおかしいことなのよ


まだまだ中学一年生になったばかりの子、香里がお世話してあげなきゃ、生きていけないような子供なのよ


凛ちゃん自身も気づいていなさそうだけど、あの子はいつも自分を甘やかしてくれる母を求めていた


その証拠に、神谷といちゃつく事があっても、甘えることはあんまりない


逆に、私には程よく懐いてくれてる


香里の目を覚ますと言っていたけど、本当は凛ちゃん、お母さまに甘えたいのよ


「貴女があの人を追うのならば、私は止めないわ。

 でも、貴女が凛ちゃんがいらないというのなら、私がもらう。

 私は専業主婦ですからね、娘一人増えたところで苦にならないし、むしろ嬉しいわよ」


追い詰めて追い詰めて


号泣する香里しんゆうにでも、私は攻めの手を緩めない


「凛ちゃんを愛しているのなら、大切なら、捕まえていて

 前も、凛ちゃんを寝かしつける時も、寝言でお母さんって言ってたわ

 大丈夫、きっと凛ちゃんは許してくれるわ」


「わ、わたし、うう……」


「謝りましょう。私も付き添うから。凛ちゃんは今も貴女の帰りを待っているわ」


最後の一言で、香里の防衛線は全部崩れ落ちた


私に抱きついて、大声で泣き叫ぶ彼女の様子は、


学生時代、いつも泣き虫だった香里と重なって見えて、凄く可愛らしかった



-------------------------------------------------------------------



明らかに大泣きした後の母上は、叡山家に迎えに来てくれた。


無表情を貫く私を抱きしめて、ごめんねと連呼して、また泣いてしまう


少しだけ、困惑と悲しみと寂しさが混ぜた表情になったのは秘密だった


帰る前に、またいつもの様に、私達が認めた穴場の醤油ラーメン屋に外食する


そこのラーメン屋は場所が悪く、客は少ないが、味は今まで食べてきた物の中でもトップスリーに入る。


余談だがキングメイカーの母上は昔ラーメン屋の大将に繁華街への出店を打診してたけど、


「分かる奴にはこの味が分かる。それで十分だ。忙しいく頂上を登るより、俺は知ってくれる客のうまいっと言ってる顔を眺めるのが好きだ」


とかなり渋いことを言ってて、断念したという。



家に帰って、二人が手分けして掃除と洗い物を片付けた。


長く掃除しなかったのだ。少し哀愁も覚える。


大掃除は次の日にまわすとして、いい子は寝る時間よと言われて、私は部屋に帰った。


パジャマに着替えて、横になった


これで母上は、少し酔が覚めたのだろう。



体感的に数十分が過ぎた。


眠れん……


前世からの影響で、私は少し不眠症がある。


流石に朝まで眠れないほどではなく、大体2時間3時間くらい過ぎれば疲れて眠る。


それが苦痛に思えて、私はこっそり睡眠薬を買ったが


そういえば、この前希佐子さんに没収されたっけ


これじゃ眠れないな……



何もしないままぼーとしていることは、嫌いだ。


私は常に動いていないと、落ち着かない。


別に座って絵を書いたり、囲碁をしたりするのは問題ない。


ちゃんと何かをしているからね。


でも、眠れずにただぼーとするのは、無理だ。


そう考えて、愛用しているペンギン抱き枕パタくんを連れて、部屋から出た



「あら?眠れないの?」


「……ん」


なんと、母上がスッピンになってホットミルクを飲んでいる


ここに来て気づいたが、私は初めて母上の化粧なしの顔を見た気がする


まさかの可愛い系美人!


超絶美人とかそういうわけではないけれど、私の知っているけばけばしい母上ではない


「……化粧しない方がキレイ」


「え?」


年もあって、若い瑞々しい感じはしないものの、若い頃は可愛いかっただろうなって想像できる顔立ち


今まで厚化粧だからわからんかった


絶対化粧しない方が可愛いよね!


「そう、かしら」


「ん」


化粧品、没収しようかな


「ごほん、取り敢えず眠れないなら、ホットミルク飲む?」


「…ん」


母上は飲みかけのホットミルクを差し出す。


基本的に前世は冷たい飲み物が好きだが、今は苦手になった。


ふう、甘い…はちみつ入りかな


「ん……」


甘いホットミルクで、顔が緩む


ふらふらしていて、母上が微笑みながら頭をナデナデしてくれている


「一緒に寝る?」


「ん……」


「じゃ部屋に行こうか?」


「ん……」


母上の差し出した手をとった後の記憶は曖昧だったのは仕方ないと思う



--------------------------------------------------


隣に寝ている凛のゴムを解いておく。


下ろしたままでも可愛いけれど、この子は学園以外ではポニーテールだ


大人しく、その上かなり大人びいている凛の寝顔を見ていて分かる


やはりいくら普通の子供より大人びいていても、我が可愛い子供で、甘えたがりの年頃だと


既にお気に入りのペンギン抱き枕を手放し、私にしがみついている。



やはり凛は希佐子の言うとおり、眠れなかった。


念のためホットミルクを作って正解だった。


別に睡眠薬を入れてなかったけど、飲んだ後凄く眠たそうな顔して、


凛を私の部屋に連れていった


凛の長いサラサラの髪を梳いて、気持ちよさそうに頬ずりしてくる



何この可愛い生き物


こんな気持ち、いつ以来だったかしら


どんな悲しいことも、この子さえいればどうでもよくなるような気がして


私は長い間自分の子供に目を向けなかった事実に気づく。



小四カンニングアウトしてくれた頃はよかった


自分を信用してくれたことが嬉しくて、欲しかった娘ができて舞い上がっていた


でもこの後、遂にあの人が浮気している現場に遭遇した。


悲しかった。怒っていた。


私があんなに信じて、愛していたのにと


気づいていたら、私の全ての気持ちはあの人に向いていた


負の感情に身を任せて、仕事にめり込んだ。


たまに仕事の立場を利用して嫌がらせもしてやった


凛は賢い、普通の成人よりも頼りになりそうな雰囲気がある。


だから大丈夫と自分に言い聞かせてきた


だからこの子はまだまだ中一の子供だと忘れてしまった


今までも、あの人を疑っていて


あの人があまり家に帰らなくて


両親からの愛情が足りなかったことから目を背いた



一週間、凛に会えず、声も聞けなかったことで目が覚めた


あの人ならそれくらい特に慣れているのに


あの人を失ったのに、今に私の最愛の娘も奪われるのって怖くなって


希佐子に強く当たった。


叱られた。


泣いた。


私は母親失格だと自覚してしまった



でも今、私の胸の中にスヤスヤ眠っている凛を見て、やはり沈んだ気持ちになれなかった。


だって、そんなにも可愛いんだもの


ごめんね、凛


もう、二度と手放さないから、


お母さんを許して?


沢山甘えて?


どこにも、行かないで……

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