お酒に酔った二人
シリアスな展開は何話ぶりでしょう
忘れました。えっへん
前回概要:今度は一緒に運動部も遊び回りました。面白かったです
会長:いや、結構被害が大変だったぞ?
「後はバスケと弓道だけだな。」
「残りは明日にしよ?私はすごく疲れました」
「体力ないな……まぁいいけど。」
私が体力ないのは確かですけど、何でこの人あんなに暴れまくったのに平然としていられるのかな
私より何十倍も走ってたので、汗ダラダラなのに、全然疲れてなさそうだよ。
こんなのチートだよチート、もう製薬を継ぐよりもスポーツマンやれよ。
心の中でツッコミを入れる練習をしてたら、ポケットの中から振動を感じた。
「あ、母上」
「叔母さんはなんて?また遅れるの?」
「部下ミスったので尻拭いしてきます。明後日まで戻りませんので愛し」
「伊都志?」
「何でもない。お母さんが出張するから神谷ちに泊まるようにって」
「わかった。」
何が愛しい彼氏にアタックして来なさいだよ、もう
ここ1年、私の家庭環境は以前と比べて好転所か悪化している気もしなくはない
なんせ父上は未だに週に2回くらいしか帰ってこない
その上今まで忙しくない母上も遂に昇進が決まって、戻って来れない日も増えた。
その都度、私は神谷の家にお世話になる。
「だから共働きは禁止すべきと思うのです」
「お前んとこが極端なだけだからな?共働きしないと食っていけない家庭もあるからな?」
実際前々から母上の昇進は決まっていたけれど、昇進すればそれだけ責任を負うことになる。
その分仕事が増えて、帰る時間が遅くなるものだから、今までは子育てを理由に拒否してたらしい。
でも寿司屋での告白以来、私と神谷は実質婚約者同士になった。
あら不思議、親が二人から四人になったよ!やったね!
だから母上帰れないなら神谷んちいけばいいじゃん!仕事に集中できるよ!やったね!
ってなるか!!!!
と最初は流石に拗ねて怒った。
「俺も最初は流石に酷いって思ったよ……」
「母上も父上と同じタイプの育児放棄になるのかと思った。」
でも母上は拗ねた私にこう言った
「神谷くんの家にいけば、スイーツとデザート毎食出てくるわよ」
「わ、私を甘いもので釣れるような安い女と思わないことだ」
「同じ屋根のしたでイチャイチャできるわよ」
「ま、まさか」
「一石二鳥でしょ?」
「……(;゜д゜)ゴクリ…さ、策士だ…」
という風に、コロリと騙され、おほん、説得されたのです。
母上がその暴挙に出た原因の一部は、父上とも関係あるらしい。
少し前に、盗み聞きした情報によると、父上は他の女性と不倫しているらしい。
英雄色を好むと言われればそれまでだけど、流石に母上はキレてた。
問い詰める気も起きません。お金を貯めて離縁します。と、恐らく希沙子叔母さんに愚痴ってた。
別に離縁するつもりならお金貯めなくてもいいんじゃ、と思ったけど。
母上は父上と違って、結構すごい家系だ。その母上も、当時有名な天才で、王者を育てるプロ。
彼女が手を掛けた人間は例漏れず、その分野の王者となったのだ。バスケ、サッカー、そして父上。だからついたあだ名はキングメーカー。
その母上は家族の反対を押し切って、当時大衆食堂を経営している父上と結婚して、彼を日本一のシエフに仕上げた。
その結果として、母上は私の祖父、お爺さんと大喧嘩して、親子の縁を切ったらしい。
何でこの人すぐ縁を切りたがるのかな
まぁ、つまり今私を養えるのは、母上だけってこと。
でも希咲学園の学費はもちろん、家の維持費も結構バカにならないし、
私の薬や食費、洋服代や家政婦代などなど。母上はああでも上流社会の人間、上流以外の生き方を知らない。
だから、母上の計算した、2人で生活する場合の予算は、前の母上の給料では賄えないものだった。
父上やお爺さんに頭を下げるつもりはない。ならば自分で稼ぐだけだと、母上は本業に戻った。
つまり、美食家の“悪魔の舌”ではなく、“キングメーカー”として働くと決めた。
前世と同じ、私を救えたかもしれないのに、母上の意地と父上の不倫。二つの要素が混じり合って、家庭を壊す劇薬になった。
そして一番厄介な事象は、今回の私は無事だった。
何よりも、私には叡山家という逃げ場があった。母と父、2人の家庭を壊す戦争から逃げられたのだ。
だから母上は容赦なかった、私を逃がし、父上と戦う準備を始めた。
はっきり言うけど。まず悪いのは父上だ。
不倫するな!子供との会話を増やせ!帰ってきても余り話掛けてこないのは親として最低だ
でも、母上も同じ。父上と比べてかなりマシだけれど、母上は子供よりも自分のプライドを選んだ。
キングメーカーなら気づいて当然なのだ。自分の子供の異常に、危うさに
でも気付かなかった。仕事に集中しすぎて、気づくはずもなかったのだ。前世に
気づいた時にはもはや遅かった。多くのメンタルクリニックに連れて行って、薬飲ませてもまったく効果なかった。
所詮は同じ。人間とは利己的な生き物。
自分の欲望に釣られて、前世において、あの二人は大事な人を失った。
そしてその悲劇を、再現しようとしている。
「なぁ、やはり親父達には言っておいた方がいいんじゃないか?」
「恐らくあの二人は、両親の状況について理解できている。その上、放置しているんだと思う。」
前まで、辰巳の叔父さんもちょくちょく父上に会って、叱ってたと聞いている。
そのことを語ってくれた父上は、あんまり耳に入らなかった。
曰く俺はお前のこと大事にしてるのに、何阿呆なことをとのことだ
しかし父上よ、
貴方は、私が女子の装束をしていることに、気づいていない。
私が、既に女子として、希咲学園の中等部に上がったことにも、気づいていない。
つまり、そういうことだ。
「両親は、酔っている。」
そう、二人は正に、酔っているんだ。
片方は新たな愛情という美酒に、
片方はプライドという強い酒に
酔ってしまい、周りのことが見えなくなって、大切にしていたはずの茶碗を壊した。
その時初めて、二人は酔を覚ます。そして後悔する。
かつての私のように。
「酔ってしまっていては、説得は通じない。
殴って、目を覚ますしかない。
でも、酔っている二人に近づけて、言葉を伝えられるの人間は少ない。」
だから、辰巳叔父さんも手こずっているのだ。
元々忙しい身なのに、一々酔潰れに構っていられるわけがない。
そもそも、辰巳叔父さんの言葉では、酔いで高揚し、自分の正しさを信じてやまない父上の心には届かないのだ。
突破口は、母上。
でも、掛ける言葉は未だに見つからない。
「まぁ、まずは帰ろうぜ?お前の前世通りなら、離婚のタイムリミットまで後三年掛かるだろ?」
「残念ながら、私の存在が変化したから、前世通りになると限らない。」
「それでも、だ。帰ってゆっくり考えようや。な?」
「……ん」
久しぶりに真剣モードになりましたので、疲れた。
ふぅ、本当に
人間というものは、難しいものです
しばらく、シリアスな展開が続きます