間瀬 弘
間瀬弘
ドアを開けた先に広がっていたのは、何もない部屋だった。本当に何もない。ただの空間。白というよりは灰色で、どこまあでも続いているようですぐに壁に当たってしまいそうな空間。後ろにあったはずの閉めていないドアも消え完全に独りぼっちになってしまった。
「おい!誰かいないのか!」
弘は叫んでみるもののその声は反響することなく掻き消え、この空間に壁のようなものがないことを感じ取る。
まったくの虚無の空間を歩き始めた弘は、どの位ここにいただろうか・・・
進んでいったとしても何も変化がないと判断した弘は、その場に足を止め先程初めて会った人たちのことを思い出す。高平、新妻、氷野、ギルニル、マリー。高平以外に面識がある人はいないし、その高平に関しても一方的に捜査対象に似ているだけの男に過ぎない。ッしてここはどこなのか?どうして自分たちが集められたのか?そのことに思考を巡らしていると、何もなかったはずの虚無の空間に突然一人の人間が現れる。
いや、人間と呼ぶにはその人影はあまりに細身で立っていることもできないほどか細い両足で直立していた。数センチ単位の首には不釣り合いな大きな頭には、トンボのような多眼の瞳の全てに反射した弘の顔が映っていた。
発狂しそうになる弘に対して、何か口にする前にその多眼の化け物は三本しかない指のような器官を弘の額に付ける。すると不思議と弘の中に広がっていた恐怖心は一気に掻き消える。
「お前さんは誰だ。・・・」
「我に名はない。ただ、古の世界の者だ。」
多眼の化け物に色が生まれる。形が変わる。タコのような職種が体のあちこちから生え始め、水ダコのような灰色に近い色になると周囲に少し海のにおいが充満する。
「ワシらをここに集めたのはお前か?」
「我ではない。ただ、我に関するものの誰かだ。」
弘の質問に対してその化け物は、正確に答えを出してくれる。
「理由は分かるのか?」
「もちろん。我の復活。旧世界の再構築だ。しかし、今までも上手くは行かなかった。今度はお前の番だ。」
そういうと化け物は、先程広場の中にいたメンバーの顔を投影する。
「この中に新世界の神の力を持つ者がいる。そのものが死ぬように誘導しろ。」
「ワシは刑事だ。そんなことは出来ん。」
「何を勘違いしている?これは、命令ぞ?」
瞬間、弘の呼吸が乱れる。酸素を吸うことが許されないようになったかのように、いくら空気を吸っても肺の中に酸素が入っていかない。
「もう一度言う。この中から神の力を持つ者を探し。殺せ。それだけだ。」
無酸素の状態でなんとか弘は、首を縦に振る。弘の意思が通じたのか、急に子流が元に戻る。それも、今までの息苦しさが一切なくなるように。呼吸の乱れなど無く、体も正常に作動していた。
「では、再び行け。殺すのもは間違えても構わん。すべて殺しても構わん。」
それだけ言い残すと化け物は消え、弘の目の前にドアが出現する。そのドアを開くとかなり久しぶりの感じる空間が広がっていた。
広間の中央で立っている高平と思わしき男性が懐かしく感じる。
「本当にすぐなんですね・・・。」
全ての扉が同時に開いていておりそこには、先程のメンバーがいた