薬と使い道・・
薫は、能力に関係のある部分は簡単に省いてそこに書かれていた内容を幸恵と沙良に話す。黒い奴のこと、緑色の奴のこと、薬の存在と正しい使い方があるということ。そして、自分たちを殺す存在がこの洋館には出るということを。
「・・・わたし達も殺されるのでしょうか?」
「分からない。でも、この緑の奴ってあの食堂にいたやつのことか?」
「分からないけど、薬も気になるね。」
そんな会話をしつつ薫たちはその他の二冊にも目を通そうとしてみるものの、三人とも何が書いてあるかわからなかった。
「すみません。自分の勉強不足です。」
「いいですよ。わたし達なんてさっぱりなんですから。で、この本はどうしますか?ギルニルさんか、マリーさんなら読めるかもしれませんよね。」
そう沙良が言ったとき、どこからともなく声が響く。出所は分からない。まるで直接頭の中にささやきかけるかのように三人の探索者へと届く。
『古の理は、この中でのみ眠る。新界へ運べばその眠りは覚め、滅びのときをむかえん。』
不気味な声はそれだけ伝えると何も聞こえなくなる。
「持ち出すなってことですかね?」
「だ、だと思いますよ。とりあえずここに置いておきましょう。」
幸恵の意見に賛同し、もし読ませるのなら全員でここに来ようという意見で一致し三人の探索者は一時間半の時間をかけて探索し、ようやく書庫を後にする。
一方その頃、二階の探索を終え、階段奥の探索にはいったAチームのギルニル、マリー、弘の三人は、階段奥の通路を進む。そこには左に曲がる通路と三つの扉があるのが分かった。
「どうする?どこから行こうか?」
「また一つづつ開けマスカ?」
「サキニススムノモ、アリマスヨネ?」
見たところ通路の先に右に曲がるルートともう一部屋あることが分かる。
可能性だけで言うのであれば、五つ近くの選択肢が存在する。
「ジブンは、間瀬さんの意見に賛同シマス。」
「ナンデデスカー?」
「年長者二従う、これ基本デス。」
そんな言い合いをしている二人をよそに、間瀬はキッチンのあった位置にほど近い、一番手前のドアに手をかける。この洋館の雰囲気に合った木製の扉には鍵はかかっていなかったようで、簡単に開くことができた。
中には、研究室のようになっており机の上にはこれ見よがしに四つの色のついた薬品が置いてあった。
「この薬品ハ、なんですカネ?」
「よくわからんが、他の所も見てみよう。」
Aチームは、手分けしてその研究所内を探索し始める。棚、机、床。その研究所内を三人で手分けして探索してみたが、机の上にある薬品と一枚の紙きれ以外には何も発見することができなかった。
「マタ、ナニモナイデス。」
「そのようだな・・・この薬品だけか・・・。」
「飲んでみマスカ?」
「ほう、ではやってもらおうか?」
「冗談デスヨー。間瀬サン。」
「ふん。そんなに仲良くなった憶えは無いわい。」
笑いながら弘の肩をたたくギルニルの手を少し不機嫌そうに弘は払う。
三人の探索者は、とりあえずその薬品には触れることはせず、近くに置いてある一枚の紙きれに注目する。そこには、プリントされたようなきれいな文字でこう書いてあった。
『赤き者は、黒き者を愛し。黒き者は白き者を敬愛する。白き者は緑の者に憎悪を抱く。緑の者はすべての関心はない。』
と。
「ドウイウイミデス?」
「さっぱりわからん。この薬の色と関係があるのか?」
机の上に置かれた薬。透明な容器の中に入っており、その中に入っている液体の色も見て取れる。
右から藍色、灰色、群青色、橙色とそのメモ用紙の中に登場してくる色とはあまり関連のない色しか存在しなかった。
さらに、一つ一つの容器には、ラベルが張られておりそこには、先程の順番通りに、忘却、悲愴、嫉妬、憤怒。の文字が書かれていた。
「全然関係ないみたいデスネ。とりあえず持っていきマスカ?」
「そうだな。あっちの奴らにも聞いてみよう。」
薬品の入っている容器は、小さくポケットに入る大きさであったため、弘が代表してすべての薬品を持あつことになった。
薬品以外に何も見つからなかった研究室を後にAチームは再び廊下に出る。探索時間はおよそ、一時間で廊下に出た。Aチームは、まだBチームの面々が書庫と思しき場所から出てきていないことを確認すると、廊下の奥の方まで行くことで意見は一致する。扉を素通りし、曲がり角がある場所まで行くとそこには、さらに下へと下っていく階段と一つのドアが存在していた。
「まだ、下って行けるようだぞ。」
「行きマスカ?」
「いや、まだ止めておこう。とりあえずこの部屋だ。」
そういうと廊下の一番奥にある部屋のドアノブを掴もうとする弘の腕をマリーが掴む。