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探索開始


 全員は部屋の中央から、出現した両開きの扉の前に歩みを進める。それは、かなり上品な装飾が施された木製の扉で、植物のようなツタが彫られていた。


 「開けますか?」

 「そう書いてあったんじゃないのか?」

 「それにここにいても何もなりませんし。」

 「ですが・・・。」


 薫が渋っている一番の理由は、幸恵の部屋から出て来たメモ帳の影響が強い。そこには、誰も信じることは出来ない。ともとれる内容のことが書いてあった。つまり、隣にいる誰かは、この扉をくぐった後は、何かしらのアクションを起こしてくる。それが、命にかかわるものであったら・・・。

 などと考えているとマリーが突然、その扉の取っ手に手をかけ、止める前に開いてしまう。


 「え、ちょっと。」


 言葉は理解できていないが、氷野の動作でマリーも理解したようで扉の中に入る前にマリーの動きは止まる。

 その中をよく見てみると、先程の部屋同様に一寸先も見えない暗闇が広がっていた。風も感じなければ、光も通さないその闇は明らかに異常なものを感じさせた。


 「また、別々の所に行っても困りますし、二人一組で行くのはどうでしょうか?」


 初めて、幸恵が全員の前で意見を出す。その意見に反対するものはいないようで、それぞれペアを作る。まず、言葉の関係上マリーとギルニル。そして、持ち物が元々幸恵の物であったことから薫と幸恵。最後に残った弘と沙良の二人の三組のペアが出来た。

 薫が一般人となることが不服であった弘は、反論したものの、その意見は覆ることなく先に進むことになった。


 「では、自分たちが初めに行きます。もし、先にいなかったら何とかして探してくださいね。」


 体格的にも、装備的にも一番貧弱な二人組の薫と幸恵のペアは、開いた闇の前に立ち同時に一歩を踏み出す。

 先に行くと、そこは先ほどの無機質な部屋からは想像もできないほど立派な装飾が施された洋館の玄関ホールであった。そして、横を見てみるとまだ入ってもいないはずの他のペアの姿がそこにあった。


 「うわっ。いつの間に入って来たんですか?」

 「お前らこそまだそんなところに立っていたのか?」


 どうやらこの洋館に繋がるあの扉も、時間の概念が関係のない扉だったのだろう。そして、全員は、後ろを振り返るとそこにはあの無機質な部屋はなく、高級そうな装飾が施された木製の両開きのドアがあるだけだった。


 「どうなってるんだ!!」

 「もうヤーー!」


 弘と幸恵は少々混乱している様子で叫びあがる。この状況でも冷静さを崩さなかったギルニルは、その扉に手をかける。


 「開きまセン・・・」


 どんなに力を込めても、押しても引いてもそのドアはピクリとも動く気配を見せない。


 「ここ。鍵穴がありますよ。」


 その扉を注意深く観察した薫が、入るときには気付かなかった施錠するための鍵穴のようなものがドアについていることに気付く。


 「じゃあ、鍵が必要ってことですか?」

 「けど、開けてもあの部屋にいけるだけですよね・・・。」


 いまだ混乱している幸恵たちを落ち着かせつつ薫たちが考えていると、


 「アノ・・・。」


 突然、マリーが日本語に聞こえる言語を話しだす。


 「ワタシ、ニホンゴ。ハナセマス。」


 ギルニルに比べればかなりぎこちなさが目立つが、確実にマリーの口から日本語が話せているようだ。


 「どういうこと?さっきまでは演技?」

 「だとしたら、今やめる理由がないだろ。確実にこの洋館に入ってきたことが要因だろうな。」


 ようやく狂気から戻った幸恵は、マリーの突然の日本語に混乱しつつも日本語で書かれたメモ用紙を渡してみる。


 「これ読めますか?」

 「・・・ゴメンナサイ。ヨメナイデス。」


 どうやら日本語が話せて理解はできるものの、文字の日本語を読むことは出来ないらしい。


 「じゃあ、これからは、訳さなくても意思の疎通は出来そうだな。」

 「だね。よかったー。これでマリーさんともお話が出来るよ。」

 「ワタシモ、ウレシイ。」


 こんな状況でも情勢人は強いようで、沙良は先ほど幸恵と話していたような雑談を躱し互いの親睦を深め始める。

 一方男性陣は、洋館を軽く見渡す。

 かなり、古い作りの洋館であるが、しっかりと手入れはしているようで、見える範囲に埃やゴミのようなものは一つも落ちていない。飾られている絵画や甲冑、照明に至るまでかなりの効果の物であることは一目瞭然であった。

  甲冑の一つに弘は近づいて、その置物が持つ槍に手をかけてみるものの、恐ろしく硬く接着しているのか、関節部分すら全く動く気配を感じられない。


 「こいつは動きそうにないない。見たところ金属製で壊すこともできそうにないな。」


 ギルバートは、玄関ホールの先にいくつかの部屋と上へとつながる階段があることに気付く。階段の上にもいくつか部屋があり、今この場所から見える範囲で一階には、四つの部屋があることが確認できた。


 「かなり広いヤシキのようデスネ。」


 そして、薫は洋館全体が、異様な雰囲気に包まれていることに気が付く。一見まとまっているように見えるが、よく見てみるとどこか歪で、言葉に表しようもない気持ち悪さに襲われてしまう。


 「大丈夫ですか?」


 顔色が明らかに悪くなった薫に幸恵が心配そうに話しかける。持っていた小さな箱の中から、安静剤を取り出そうとするが、薫がそれを拒む。


 「大丈夫です。その薬はもっと大事な時に使いましょう。」

 「そうですか・・・。」

 「それより、皆さんここからどうしますか?洋館を探索してみますか?」

 「そうだな・・・やはりここは人海戦術だな。手分けして探そう。」

 「それニハ賛同出来ないデス。知らない場所ナラ、まとまって行動するベキデス。」

 「自分も同意見です。ここは、三人一組の二ペアでの行動でどうでしょうか?」


 薫の意見に賛同したのは、ギルニル、マリー、沙良の三人。弘は一人の人海戦術。幸恵は、全員での団体行動を進言した。


 「もしも、あの紙に書いてあったように平和を望まない人が場合危険じゃないですか!?」

 「確かにそうかもしれないけど・・・じゃあ、装備や体格ごとにチームを分けましょう。」


 その後、全員は互いの体格ややってきたスポーツ、装備品を加味したうえで二つのチームに分かれる。

 チームA。二階を探索する、ギルニル、弘、マリーチーム。一番体格のいいギルニルと弘は必然的に同じチームとなり、その二人に対抗することが出来るのは、一段鋭利な刃物を持ち、体力的にも器械体操をやっているため、逃げ切ることは可能と判断したマリーとなった。薫でも良さそうではあったが、男性がいないチームを作らないための布陣だ。

 そして、チームBは、一階を探索する、薫、幸恵、沙良の三人になった。


 「大分戦力差がありそうですが、仕方ありませんね。」

 「気を付けろよ、お嬢さん方。その男は使用できないぞ。」

 「まあ現状、間瀬さんの同じくらい信用してませんが、気を付けます。」


 沙良は冗談気に笑いながら弘のもとをなあ離れて、薫と幸恵に合流する。


 「どうします?一階を探索することになりましたが・・・」

 「そうだな・・・」


 周りをよく見渡してみると、薫たちから見て両側に大きな両開きの扉があり、階段の隣に小さな扉が二つ。その先にも老化は続いているのが、誰の目にも明らかだった。


 「何かあっても困りますし、探索は二時間くらいで切り上げて、またここに集合しませんか?」

 「イロンハナイデス。」

 「右に同じく。」

 「そうしよっか。」


 とりあえずの方針は、A,B二班に分かれて一階と二階を探索し、二時間くらいで切り上げてまた再集合する方向に固まる。 

 誰一人として時計を持っていないので正確な時間ははかることは出来ないが、大体、大きな部屋で二部屋。小さな部屋で三から四部屋くらいで切り上げることになるだろう。


 「・・・じゃあ、どこから行きますか?」


 Aチームが二階に上がっていくのを見送ってから、一階に残った薫たちは行動を開始する。ここから見えている部屋だけでも、大部屋が二つに、小部屋が二つ。さらに奥に廊下が続いているところを見る限りでは、一階の全てを見て回ることは不可能だろう。


 「じゃあ、ここから行きませんか?」


 沙良は、玄関側から見て左側面にある両開きの大扉の取っ手を掴む。

 薫も幸恵も反論する理由もないので、黙って沙良の後ろに着く。

 先程の大扉を開けたときのようなきしむ音など一切出ることなく、スムーズに開いた扉の先には、大きな書庫が広がっていた。小さな本屋位なら余裕で蔵書数を上待っていそうな量の本で、とても三人で手分けしたとしても、全体を二時間で見ることは出来そうにない。


 「・・・どうしますか?」

 「とりあえず、書庫であることは分かったので、次の部屋も開けに行きますか?」

 「・・・賛成です。ここで時間を使うのは勿体無いですよね。」


 三人は一度書庫から出て両開きの扉を閉める。そして、その向かいにあるもう一方の両開きの扉へと向かう。


 「あ、あの・・・さっきはいきなり開けたんですが、一応、様子を見ませんか?」

 「でも、全く人気はないよ?」


 すでに、ドアの取っ手に手をかけていた沙良を、小声ながら幸恵が止める。幸恵が耳を澄ましてみると、かなり小さな音ではあるが、金属同士か接触する、カッカッカ、という音が聞こえてくる。そして、薫の鼻腔にある匂いが届く。


 「これは、ビーフシチューか?」


 その匂いは、他の二人には届くことは無かったが、薫の鼻には確かに、食欲をそそる匂いが届いていた。


 「もしかしたら、食堂なんじゃない?誰かいるかも!」


 もしいたとしたら、ドアの外で騒いでいる物音に気付いてもいいものだか、と、思っている薫をよそに沙良が両開きの扉を引く。

 その先には、大きな食堂が広がっており、その中には、長いテーブルが一つだけあった。壁には、陽気な雰囲気の絵画がいくつも飾られており、玄関ホールよりか、温かい光に包まれていた。

 長いテーブルには、偶然なのか六つの椅子が存在しており、一人一人の間は、十分すぎるほどのスペースが確保されている。

 奥には、恐らくキッチンに通じる扉になる金属製の扉が存在し、薫の嗅いだ匂いはそちらの方から漂ってきていた。


 「あっちから匂いがするぞ。」

 「本当だ。おいしそう。」

 「い、行ってみますか?」


 食堂に入ったことで匂いは全員のもとに届く。その、コクのあるスープや肉を長時間煮込むことによって生まれる独特の香しい香りは、探索者の鼻腔を擽り、いやおうなしに、全員の足をその鉄製の扉に引き寄せるだけの魔力を秘めていた。


 「・・・開けてみますか?」

 「もちろん。・・・クン、クン。はぁ~、美味しそう・・・。」

 「あ、開けましょうか?」


 今まで、消極的であった幸恵でさえもこの香りの魔力にやられたようで、金属製の押土に手をかけている。

 見た目の割にはかなり軽い金属製の扉を開くとそこは、今までいた部屋に比べてかなり光量の足りていない部屋が広がっていた。食堂内の光が届く範囲で見てみると予想通りキッチンであることには変わりないのだが、かなり暗く、部屋全体を見ることは不可能であることは、火を見るより明らかであった。


 「か、懐中電灯使いましょう。」


 幸恵は持っていた懐中電灯を、薫は幸恵から預かっている鞄の中から懐中電灯を取り出す。幸いにも中には電池がしっかり入っており、その明るさからもその懐中電灯は、すぐに切れてしまうことは無さそうである事が分かる。


 「・・・これ、氷野さんが持ってください。自分は、もしもの時のために金槌を借りてもいいですか?」

 「いいの?ありがと。じゃあ、よろしくね。」


 薫は持っていた懐中電灯をさらに渡し、代わりに金槌を右手に持つ。

 二人の女性の懐中電灯に足元と前方を照らしてもらいながら、キッチン内を探索しようとしたその時、


 「おい。」


 と、今まで聞き覚えのない声が、探索者たちの前方からかけられる。

 その声に反射するように、沙良と幸恵が音源に向けて光を向けてみると、そこには、


 人間くらいの背の丈で、人間のコックのような装束に身を包んだ、顔全体の夥しい量の瞳を持った生物がこちらを見つめていた。


 無数の瞳が探索者たちを見つめる。言いようのない恐怖が探索者たちの背筋を駆け上る。


 露出している部分の肌の色は、緑色。人間でいう口のような器官は存在しているものの、その場所は、人間で言う鼻に当たる部分に縦方向に開いていた。

 探索者たちは、一時的に狂気に陥る。精神力がしっかりしていたのか、これ以上の経験をしていたのかは定かではないが、沙良は、驚きはしたものの何とか平静を保っていた。しかし、元々、臆病であった幸恵は、その場で腰から崩れ落ち、その場に吐瀉物を出してしまう。


 「おぇえぇぇ。」


 一方、薫はそこまでの狂気に落ちることは無かったものの、その化け物に立ち向かっていく気力は完全に欠損してしまった。


 「@¥@¥ヴぃwのうrhくhpびwる?」


 全く理解することのできんない言語で、怪物が話しかけてくる。どうやら先程、置いとき肥えたのは偶然出会ったのだと、この中で唯一冷静な沙良は判断する。

 両者の間に沈黙の糸が張り詰める。

 しばしの間の静寂は、再び怪物が口を開くことで、失われる。


 「お前たちは、こちらの言葉も分からない状態でここに来たのか?そろそろここも潮時かもな・・・。最近の人間はどいつもこいつも、ていたらくで面白みに欠ける。」

 「あなたは何者ですか?」

 「俺の名前をお前たちにわかる言語で話すことは出来ない。何でも好きに呼べ。一番最近なら、アシュジュと呼ばれたのが最後だ。」


 どうやらこちらの言葉はその怪物に伝わっており、その怪物もこちらをすぐに襲ってくる様子はないと見て取ることが出来た、薫は、一時的な狂気から解放され、ようやく正常な思考を取り戻しつつあった。


 「では、アシュジュと呼んでもいいか?」

 「好きに呼べと言っただろう。で、お前たちはここに来たのは何が目的だ?」


 いまだ過呼吸で会話に参加することのできない幸恵をよそに、薫と沙良は目を合わせる。ここに来た理由。それを知りたいのはこちらの方だ。と言わんばかりに。


 「・・・理由は分からない。気が付いたらここにいた。」

 「・・・そうか、ならばお前たちにヒントをやろう。ここには出口は存在しない。そして、出るためには、人ならざる者の力が必要だ。そして、俺も人ならざるものだ。」


 と。

 緑色の立癌の怪物は続ける。


 「俺の姿を見たお前たち二人には、さらにヒントをやろう。俺をこの館から縛り付ける呪いから解いてくれた暁には、お前たち二人をこの館から出してやろう。悪い話ではあるまい?」

 「なんで、二人だけなの?私達以外も一緒に出してほしんだけど・・・」

 「それは出来ない。我々にも順位が存在する。ここにお前たちを閉じ込めたのは、俺よりも高位の存在だ。故に、そいつにバレないように連れ出せるのは、二人が限度だ。」


 怪物の言葉に、沙良は納得がいかない様子でいたため、薫が代わりにこたえる。


 「分かった。心にとどめておくよ。ただ、その言葉が真実なら、その高位の者はちゃんとした脱出の手段は用意してあるんだろ?」

 「?。何をおかしなことを言っているんだ?脱出の手段ならもう・・・。そういうことか・・・その女たちはいざ知らず、お前は俺の提案に乗るのが賢明だと思うぞ。」


 緑色の化け物は、指のような器官を書降りるに向けて差し出す。

 沙良の顔色を確認した薫は、どうやら怪物の言う通り、沙良には何らかの脱出の手段を持っていることを読み取ることが出来た。


 「まあいいさ。で、お前はここで何をしているんだ?」

 「食事を用意している。お前たちの食事だ。人間は愚かだが、確かな下を持っているようだな。美味なものが多くて楽しい。お前たちも何か好きなものを言うと良い。特別に作ってやることもやぶさかじゃないぞ?」

 「何を言って・・・。」

 「四川料理!・・・あ。」


 薫の言葉は、沙良の言葉によって遮られる。

 薫の驚く表情に沙良も自分の行動が変であることを悟る。あんな怪物の言うことを信じ、普通に会話をしてしまっていることの異常さに。


 「かっかっか。嫌いじゃないぞ。そういう心。男も言ったらどうだ。どちらにせよ餓死するか、俺の飯を食うしかないのだからな。」

 「・・・炊き込みご飯だ。」

 「うん。・・・大体のイメージはお前らの中からもらった。どちらも実に美味だな。良いだろう。楽しみにしておけ。」


 そういうと、緑色の怪物は目の前にある大きな鍋の中を見る。恐らくその中にはこのキッチンの中に広がる匂いの主であるビーフシチューが入っているのだろう。その香りからも、緑色の怪物の料理が美味であることは容易に予想がついた。


 「最後になると思うが、何か質問はないか?特別に答えよう。」


 そう、緑色の怪物が言うと、キッチン内の光量が徐々に増していく。それと同時に緑色の化け物の姿が薄くなる。


 「待て。消えるのか!?」

 「そうだ。俺がいられるのは、飯を作る間だけ、一日二回。午前4時から5時。18時から19時の間だけだ。もうすぐ19時になる。シチューも完成だ。今日の仕事は終了する。」


 そう化け物が話す間も化け物の体は薄くなり続ける。


 「じゃあ、最後にお前の願いはなんだ!」

 「カッカッカ。俺が言わずともすぐに察しが付く。長い生活になるんだ。ゆっくり楽しめ。」


 それだけ言い残すと緑色の多眼の化け物は完全にキッチンから姿を消し、キッチン内は懐中電灯が必要ないほど明るくなった。

 キッチンが明るくなったのと同時に、狂気に陥っていた幸恵が平静を取り戻す。


 「あ、あれ?あの怪物はどこに行ったんですか?」

 「・・・消えたよ。今日はもう出ない。」

 「どうする?あの話みんなにする?」

 「それも後で考えよう。とりあえずは、このキッチンと食堂に何かないか調べておこう。」


 薫は一人で物の少ない食堂を。幸恵と沙良はキッチンの捜索を開始する。


「食事が用意してあるみたいね。」

 「え!?これってあの怪物が作った奴じゃないんですか!?」

 「分からないけど、おいしそうな匂いがするわよ。」

 「でも・・・。」


 あまり気乗りしない様子の幸恵とあの怪物を好意的に見ている沙良は、怪物のことを話さないまま、食事以外何もないキッチンの捜索を進める。


 「何にもないみたいですね。食材も道具も・・・。」

 「そうね・・・。」 


 ここにあるのは、あの怪物が用意したと思わしきシチューとフランスパンのみ。他の食材も、調理道具の一切が存在しなかった。


 「どうしますか?」

 「とりあえず、みんなと合流してから、シチューのことも含めて決めましょ。」


 幸恵、沙良、薫は合計で一時間近く、食堂内を調べてみたもののこれと言ってめぼしいものがないまま、食堂の扉を開いた。




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