終わり
終わった。全部終わったんだ。薫を殺した。幸恵も殺した。みんな死んだ。
ワタシの目的は殺す事。全部殺せば元も生活に戻れる。
戻る?
元の生活に?
何も悪いことなどしていないのに追われる生活に?
なんで、そもそも追われることになったのかさっぱり分からない。
ワタシはワタシをまもっただけの話だ。それなのになんでミンナ分かっってくれないというの?
「ハハ、ハハッハハハッハハハハッハハッッ!」
狂ったように笑うマリーの声は、誰もいなくなった洋館に響き渡り、声の届く者たちを引き寄せる。
「いやさすがだな。まさか全滅とは恐れ入ったよ。」
「貴様がもっと協力的であればもっといい結果になったというのに。全く、こんな結果とは・・・。」
そこには、薫と幸恵の亡骸の上に立つ二つの異形の姿があった。それは、マリーが初めて見るものだが、もうマリーに正常な思考が残っていない。いや、これが彼女の以前の人格だったともいえるだろ。
「お前ら誰だよッ!ワタシを傷つけるのかッ!」
持っているサバイバルナイフでマリーは、緑色の怪物と白い怪物に対峙する
このナイフは、幼い時に拾ったものだ。それで初めて自信をまもってきてから幾度となく救われてきた。友人が出来たときも、家族がいなくなった時も、会社に勤めたときも、大会で優勝しなければならないときも。
今回も一緒だ。殺せ。その指示通り殺した。殺すことが好きなわけじゃない。だから、極力殺さないようにしてきたつもりだ。でも、傷つけようとしているなら仕方がない。「マリー」が傷つくくらいなら。
「でもこいつはいい異分子だ。今度はもう少し調整を行って大々的に行えばいいさ。」
「そうだな。介入も大きくなるだろうが、こちらの手駒になりやすい内界の人間は珍しいからな。」
傷つけるのなら。
マリーは、ナイフで二人の怪物に切りかかる。しかし、そのう刃は、彼らの淡くテカリの持ったその体に通ることは無い。空を切ったサバイバルナイフを見つめ、後ろを振り返るが、そこに二体の怪物の姿はなかった。寧ろ、
「ここはどこだッー!」
大きな声で叫ぶマリーに返答はない。
ただの暗い空間。虚無の言葉がふさわしいなにもない世界。反響しない声、返答のない問倲、いつの間にか、自身の体をも確認することが出来なくなる。あのナイフはまだ握っているのだろうか?不安に駆られながらも必死に右手の力を抜くことは無い。そうしてしまったらあのナイフが手からこぼれ落ちてしまうのではないか?そんなことは絶対にあってはならない。あってはならない。
マリー・マキュリー・・・目的、神の使いの殺害。達成。脱出ではなく、怪物に捕まり、処遇は保留。
高平 薫・・・死亡、目的罪人の的中、失敗。
新妻 幸恵・・・死亡、目的は無く脱出に失敗。
ああ、もう終わりだ。
甲高い断末魔を上げながら、たった今目の前でギルニルと弘が切り裂かれ肉塊へと変わる光景を目にしている沙良は、自身の死を覚悟する。
こんな事になるのであればもっと最初から彼を信用して行動を共にしていればよかったと心底後悔する。不安が沙良の心を離れなかったことは認めよう。どこまで、あの探偵のような風貌の男を信用すればいいのかも不明だったんだ。仕方がない。その対価が死と言うのは納得がいかなくても目の苗に差し迫った死から逃れるすべを沙良は持ち合わせてなどいないのだから。
転がり落ちた階段の下。たった一人で腰を抜かしている沙良へと黒と赤の混ざった色をしている怪物が目のない視線を飛ばしてくる。
ああ、短い人生だったな。
生まれてから26年間特にいいことも悪いことも起きず、ここまで生きて来た。ただ、漠然と大学に進み、気付けば卒業を迎え、看護師の仕事に就いていた。刺激など無い。ただこなすだけ。だから、このゲームに参加してしまったのだろう。恋人でもいればそんな気を起こすことは無かったのだろうか?家族を大切に思っていれば危険に身を投じることは無かったのだろうか?
今更遅いことは分かっている。でも、後悔しない死などやはりないのだな。
硬く目をつぶり、その時を待っている氷野 沙良に一つの声が届く。
「ゲームオーバーです。お疲れさまでした。次回も降ろしくお願いしますね。脱出するまでこのゲームは終わらない。そう言いましたよね。」
その声が終わるのを待っていたかのように黒と赤の混ざった色の怪物は、腕を振を振り降ろさない。
声が終わるや否や怪物の振り下ろした腕によって沙良の体に凄まじい痛みがほとばしる。
あぁ、せめてゲームなんだから痛みを感じなければいいのに
氷野 沙良。目標、殺人鬼の特定、失敗。死亡。
どうも片桐ハルマです。
今回で(仮)を終わらせようと思います。
少し難しくて、後半は更新が遅れたり、話の展開が少々変になってしまったのですが、とりあえずは完結させるようにしてみました。初めて話を完結まで書いたので、まだまだ、書き方がへたくそなのですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。。
この話は、自分がコントロールできない部分も多く、かなり苦戦しました(泣)失敗したなと思う反面、もっとうまく書けるように頑張ろうと思う作品でしたので、これに懲りずもう少し書いてみようと思います。
誤字も多く、約束した通りに投稿できない事も多かったのですが、本当に最後まで読んでくださりありがとうございました。次以降の作品も読んでいただければ幸いです。
それでは、皆様のご慈悲に感謝して、最後にさせていただきます。
では、




