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いざ行かん

知らない部屋で目覚めた六人。高平、氷野、間瀬、新妻、マリー、ギルニルの六人は、それじれの名前の彫られたドアを発見する・・・

「これ、私の名前が彫ったりますよ。」


 一番最初にそのことに気付いた氷野は、自らの名前が彫られた扉の前に立つ。つられるように全員が立ち上がり、氷野のもとに向かう。


 「開けますか?」

 「待ってください。なにか書いてありますよ。」


 ドアノブに手をかけようとした氷野を薫は止める。

 よく見てみるとその木製の扉には鍵穴のような穴があり、こう文字が書いてあった。


 『この扉は空虚の扉。あるはずでないもの。その扉を開きたくば、証を示せ。』


 「証って何のことですかね・・・」

 「This!」


 マリーが勢いよく自分の首にかかった鍵のような金属製の棒を見せる。

 全員も同様の、自分の持ち物ではないはずのその金属製の棒を首から下げており、その一つ一つは、全く同じものに見える。


 「これが鍵ってことですか?・・・あ、まだ何か書いてありますよ?」


 新妻は、扉の端に隠すように書いてあった文字を見つける。そこには、


『この扉を満たすのは、一つのみ。時の流れも隔絶される。』


 「・・・。だそうですけど・・・どうしますか?」

 「開けるしかないだろ。それしかないんだ。」


 間瀬の言う通り。この部屋には、六人の人間と六つの扉があるだけで、後は無機質な天井と床。それが、半径5メートルほどの大きさで広がっているだけであった。


 「分かりました。では、自分の扉を開けませんか?」


 と、一番最初に扉を開けると提案したのは、薫だった。

 

 「自分のことも分からないをわけですし、丁度いいかと。」


 特に反論する人は出てこない。自分の扉でかつ、他の人は入ることは出来ない。そんな扉を一番最初に開けたい者などいないだろう。

 

 満場一致で薫の扉の前に全員が集まる。


 薫の扉も他の五つの扉と同様で木製の扉。書いてある文字の位置、一言一句に至るまで同様の扉。唯一の違いはやはり、扉の上に『高平 薫』と書かれていることくらいだろう。


 「じゃあ、開けますね。」


 そういうと薫は扉に開いていた穴の中に自分の首に下がっていた金属製の棒を差し込む。根元まで完全に入ると、普通の鍵と同様に左右に回せることが、感触から伝わってきたため、薫は左に鍵を捻る。


 カチャ。


 施錠されていたののが開き、その穴と薫の手に持っていた鍵は音もなく消えてなくなった。


 「え?」


 鍵と穴がなくなったことに驚くが、そこまで取り乱すこともない。恐らく、この場にいる方が衝撃的だったためだろう。

 薫はゆっくりとドアノブを捻る。

 キィィ。

 古い木製の扉が放つ独特の音ともに薫はドアをひく。そして、その先風景が見えてくるはずだった。


 「・・・。」


 扉の先に広がっていたのは、部屋や出口などはなく、一寸先も見えない暗闇だった。


 光を全く通さないようで、この広間のすぐ近くの床でさえも暗黒に包まれ、扉から向こう側の風景は全く見えない。


 「薫さんには見えているんですか?」

 「いえ。自分には真っ暗に見えます。」


 どうやら誰が鍵を開けたかどうかはさほど重要ではなく、通らなければ先は見えないようだ。


 「じゃあ、行ってきます。」

 「本当に行くんですか!?」

 「行かないと始まりませんし・・・。」


 そういうと薫は、扉の中に入っていく。薫が入った瞬間、誰も触れていないのに、ドアが勢いよく閉まる。


 「わッ。」


 一番近くにいた氷野は挟まれそうになったが、何とか胴体から首を放さずに済む。


 「誰ですか閉めたの!」

 「勝手に閉まったよ・・・」


 あわや胴体と首が離れ離れになりそうになった氷野だが、閉めた一人もいない上に、一番扉の近くにいたのは氷野自身だった。


 刹那、閉まったばかりの扉が開く。すると、神妙の顔をした薫が出てくる。


 「えッ?もう戻って来たの?」

 「?どういうことですか?自分、中の部屋の隅まで見て回りましたよ?」


 全員の視線が、薫に集まる。当然だ。薫が入ってから出てくるまで十秒もたっていない。急に閉まった扉に驚いて帰って来たのだろう。そう判断しようとした時、


 「中にはこんなものがありました。」


 あんな短時間では何もできないはずだが、薫の手の中には一枚の紙が入っていた。


 「要約すると、全員が扉を開けるとこの部屋から出るそうです。とりあえず、皆さんも入ってみたらどうですか?あ、後これもありました。いりますか?」


 すると、薫は膨らんでいたズボンのポケットの中から一振りの金槌を取り出す。その金槌は、見たことも触ったこともない金属でできており、つるりとした表面はまるで鏡のように全員の顔を反射している。銀色に近い色をしたその金槌からは、かなりの重厚感を感じさせた。


 「それだけですか?」

 「そうですね。紙と金槌だけでした。」


 と、薫は一枚のメモ用紙を、一番近くにいた氷野にその紙を手渡す。そこには、薫が言う通り、全てに扉がなくなったときに新しい扉が出来る。というような内容の分が書いてあることが読み取れた。


 「どうしますか?とりあえず一人一人、入っていきますか?」

 「イエ。カオルさんの言うコトが、本当ナラ、みんな一緒に入っても大丈夫だとオモイマス。」

 「ワシも賛成だ。手っ取り早く全員入ろう。」

 「では、自分は外で待ってますね。」


 そういうと、全員はそれぞれ自分の名前の書いてあるドアの前に立つ。そして、首から下げていた金属製の棒を鍵穴にさすと、引っかかる部分など何もないはずの金属製の棒から、手にはしっかりとした、捻れるような抵抗感が伝わる。全員は、ほぼ同時に鍵を捻り開いた扉の中へと入っていく。


 バタンッ。


 薫だけが残る部屋に五つの扉が同時に閉まる音が広がる。しかし、すぐに薫は出て来た時の全員の不思議な顔の理由が分かる。なぜなら、閉まった扉全てが同時に開き、中から仁和が出てきたからだ。


 「本当にすぐなんですね・・・。」


 感心したように薫は、部屋の真ん中で全員が来るのを待ちながら呟く。すると、後ろにあったはずの扉は消えてしまい、それに呼応する形で一つの大きな両開きの扉が出現する。


 「薫さんの言ったと通りでしたね。」

 「それじゃあ、皆さん何があったか言い合いますか?」


 薫の提案に全員が頷き賛同する。初めの自己紹介の順番に習って間瀬が話すことに決定した。


 「初めから悪いんだが、ワシの部屋には何もなかった。情報が得れそうなものはなかったが、ワシの私物がいくつかあったぞ。」


 と言いながら、懐のポケットから、警察手帳と棍棒、手錠、そして、リボルバー式の小さな拳銃を取り出す。


 「拳銃ですか・・・」

 「そうだな。だが、こいつに入ってる実弾は二発だけだ。後は威嚇用の空砲弾が装填されている。」

 「分かりました・・・では、」


 全員、間瀬の持つ拳銃にかなり引っかかっている様子ではあったが、話は次の人に移る。


 「ジブンの部屋ニハ、手錠が三つ有りマシタ。そして、その机ニハ、マモレ!!と、大きく掘って有りマシタ。皆さんヲ守れ。って、コトデスカネ?」

 「そうじゃないでしょうか?この中で一番身体つきも良さそうですし。」

 「ワカリマシタ。皆さんヲ守りマス。」


 胸を強くたたいたギルニルに間瀬は、役に立てろと警棒を手渡す。間瀬自身もかなり体格はいいが、ギルニルには劣るし、自分には拳銃があるから十分だと判断したのだろう。


 「じゃあ、私の番ですね。えっと、私の部屋にも特に何もありませんでしたね。このリス?ちゃんが丸まっていたので、連れてきちゃいました。」


 すると、氷野の方に全長4センチほどの小さな小動物がいることが分かる。見た目はリスに似ているのだが、長く伸びた鼻や大きな耳は、愛らしいものの見たことのない生物であることが分かる。


 「それ、連れて行くんですか?」

 「ここに置いていくのは可哀そうじゃないですか?」

 「そうですね。分かりました。」


 「では、わたし、の番ですね。」


 おどおどしながら新妻が前に出る。新妻は他の人とは大きく違い、行く前には持っていなかった小さなリュックを持っている。


 「えっと、わたしの所にはこのリュックとメモ帳がありました。」


 リュックを広げてみると中には、丈夫そうな木の棒が二本と10メートルのロープ。懐中電灯が二本、小さなナイフ、そして小さな箱が入っていた。その箱の中身は、薬のようで頭痛薬、傷薬、感染予防、安静剤と書かれた袋の中に二錠ずつ入っていた。

 そして、中にあったというメモ用紙を読み上げる。


 「ここから先に進むなら他人は信用してはならない。誰もが出ることを望んでいるわけではない。誰もが、平和を望んでいるわけではない。です。」

 「どういう意味ですかね?」

 「ここから出たくない奴などいないだろ!」


 そして、全員の視線がマリーに向かう。薫とギルニルに訳してもらいうことで状況を理解するが、マリーは飄々と太ももから立派なナイフを取り出す。


 「えっと、メモ用紙などは無くて、ギルニルさんと同様に、守れ!!と机に彫ってあったそうです。ギルニルさん大丈夫ですか?」

 「エエ。大体、同じ内容デス。」


 薫は自身が訳した内容をギルニルに確認を取る。これで全員の持ち物は確認することが出来たので、今度は、その持ち物を振り分けるかどうかの話し合いが始まる。


 「ではどうしますか?持ち物というか、配分は。」

 「そうだな。銃は経験のあるワシが持つ。警棒は守ることを命じられたギルニルだな。」

 「そうですね。マニーさんも同様ですが、かなり立派なサバイバルナイフを持っていますしそれで行きましょう。」

 「あの、私。その金槌貰っていいですか?」

 「いいですよ。・・・あとはそのかばんですが・・・」


 氷野は薫の持っている金槌を受け取る。


 そして、一番ものが入りそうな鞄に全員の目が集中する。


 「ユキエさんノデスカラ、ユキエさんが持つのデハ・・・重いデスカネ・・・」

 「じゃあ、懐中電灯とナイフ、その箱は幸恵さんが持つのでどうですか?荷物は自分が持ちますよ。」

 「ありがとうございます。それで大丈夫です。」


 こうして全員分の持ち物が決まりようやく、出現した両開きドアに一行は正対する。


高平 薫 持ち物;メモ用紙、鞄(棒二本、10メートルのロープ、懐中電灯)

間瀬 弘 持ち物;警察手帳、手錠、拳銃

氷野 沙良 持ち物;金槌、リスのような生物

新妻 幸恵 持ち物;小さなナイフ、懐中電灯、メモ用紙、小さな箱

ギルニル・F・アデラート 持ち物;棍棒、手錠×3

マリー・マーキュリー 持ち物;サバイバルナイフ




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