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血と力

 沙良、弘、マリー、ギルニルの四人と別れて三階に向かうために二階に繋がる階段を上る。丁度、二階に上がったところで、薫がバックの中の鍵を取り出す。


 「あの。新妻さん。先程話していた扉に行ってみませんか?二階にあると言ってましたよね?」

 「え、でも、三階に行かないといけないんですよね?」

 「そうですけど、扉の方も気になりますし、先に行きたいのですが、いいでしょうか?」

 「わ、わかりました。でも、その場所ってどこなんでしょうか?


 薫は、鞄の中から一枚の紙を取り出す。それは、先程、書斎の中から見つけたこの洋館の見取り図だった。二階の見取り図を開くと客間のほかに『血』と『力』と書かれた部屋が存在することが見て取れた。


 「ドアの位置は書いてありませんけど恐らくこの二部屋だと思いますよ。」


 場所は、階段を挟むように二部屋が存在し、客間の真正面に存在するに部屋。しかし、階段を上り切ったところにある、廊下にはその部屋に繋がる扉は無かった。階段を上り切り、右折する形で廊下を時計回りに進む。そこには、小さな机とその上に一輪咲きの花瓶。一階にあったような小さなシャンデリアが廊下を照らしていた。しかし、廊下に存在する窓からは、太陽の光は一切入ってくることは無く、見える風景も灰色と群青色を混ぜたような世界が広がっていた。


 「ほ、本当にどこに来てしまったんでしょうか?」


 幸恵(ゆきえ)の呟きに薫は答えることは出来ない。恐らく、ここに誰がいたとしてもそこ答えを導き出せるものはいないだろう。ここがどこなのか?なぜ、このメンバーなのか?理由はきっと無いのであろうと全員が思う。


 「着きました。ここですね。」


 客室から時計回りに廊下を進み、長い廊下をさらに左折する。そこには、|弘

《ひろし》達が一日目に発見した扉が並んでいた。全部で四枚の扉。部屋は二つに分かれているようで、二部屋の間には三階に上がる階段がのぞいている。

 その二部屋の階段側に一枚づつ、廊下の角に一枚づつ扉はついているイメージだ。

 階段に向かって右側が『血』と書かれた部屋。向かって左側が『力』と、見取り図上では見て取れる。


 「恐らくここの扉ですよね。」

 「か、鍵が使えそうな場所はここぐらいですね。」


 (かおる)は、扉やその壁に何かの手掛かりがないかどうか調べ始めると、|幸恵

《ゆきえ》もそれにならってもう一方の部屋の周りを調べてみる。壁、扉、そこについている鍵穴やドアノブに至るまで調べてみるものの、特に異様な点を見つけることは出来なかった。


 「刺してみましょうか ?」

 「そ、そうですね。間違ったら爆発何て無いですよね。」

 「その時は、心中ですね。」


 冗談半分で言った薫の言葉に幸恵は、若干、顔がほころぶ


 「では行きましょうか。」

 「は、はい。」


 薫が、『月の鍵』を『力』の部屋へ。

 幸恵が、『太陽の鍵』を『血』の部屋へと差し込む。見た目の上では全く同じ形状に見えた一対の鍵は、根元まで難なく入ってゆく。

 互いに、顔を見合わせゆっくりと捻る。


 カチャ。


 一つの解錠音が鳴る。




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