束の間の・・・
弘―鉛丹色
幸恵―紅赤
沙良―銀朱
ギルニル―珊瑚朱色
マリー―真紅
薫―紅梅色
「自分が一番淡い赤ですね。」
「そうなると、年齢によって赤味が増えるってこともなさそうだな・・・後は何かあるか?」
全員が頭を悩ませるものの、その後は特に思い当たる差異など見つかることは無く、時間だけが過ぎていってしまう。
「アノ。ハナシノツヅキ、シマショウ?」
「そうですネ。他に情報ガ無いと難しいデス。」
マリーとギルニルの意見にも一理ある。現状、一日くらいしか過ごしていないメンバーの差異をそこまで多く出すことなど難しい。もっと話し合っていれば別なのだが、ここに来てから今までこの洋館の探索しかしていない。それに、全員が全員。なにかを隠しているような雰囲気が伝わってきていた。
「そうだよね。じゃあ、また何があったかの話に戻る?」
「そ、そうですね。えっと後は、ギルニルさんの破片ですか?」
「そうデス。」
「フンッ。それが何の役に立つ。」
「まあまあ。とりあえず、見てみましょうか。」
ギルニルは、両手に持っていた破片を机の上に置く。バラバラになってしまった、箱とマネキンだったものの破片は、全く同一だったらしく、今となってはどちらがどちらの破片であったかどうかは、全く判断することは出来なかった。
色は、銀色に淡い赤味を帯びている金属で、つるりとした表面などから、薫が持っていた金槌を想像させるのは容易だった。
「こ、これ薫さんの金槌と同じものじゃないですか?」
幸恵に言われ、沙良は薫から受け取っている金槌を取り出す。よく見るまでも無く金槌を構成する金属と破片の金属は、ほぼ同一のものであることが想像することが出来た。
「詳しいことは分かりませんが、見た目はほぼ同じものですね。」
「だとスルト、あの怪物ハ、別にこの金属が苦手じゃないデスネ。」
全員は、怪物との最後のシーンを思い出す。
沙良から金槌を受け取った薫が、怪物に金槌を振り降ろし、怪物の片方の顔が切断されていくシーンを。確かに、切断されていた。まるで、鋭利な刃物で裂かれるように綺麗なまでに。
「おい。お前、やはり何か隠してないか?」
元々、薫に対して疑心を向けていた弘が、立ち上がり薫に詰め寄る。
「マッテ。タマタマッテコトモ、アリマス。」
ようやく、指の硬直が取れ薫の袖から手を放すことが出来たマリーが、薫と弘の間に入る。
「たまたまであの怪物を倒せるのなら今後もそうしてもらいたいな。だが、何か倒せる手段を持っているのなら行ってもらおうか!」
しかし、弘は強い姿勢を崩す様子はない。それどころか、薫を庇うマリーに対しても疑心の目を向ける。
「言っておくがマリー。お前も怪しいぞ。ギルニルと同じ指令があったのに、お前はナイフで、なんでギルニルは手錠なんだ?大方、殺せ。とか、だったんじゃないのか!」
「待ってください間瀬さん。自分があの怪物を切断できたのは、自分にもわかりません。疑いたいのなら疑って構いませんが、あまり、不安を煽らないで下さい。」
全員に好意的ではない視線を浴びたにも拘らず、弘は納得した様子は見せない。空気が凍り付き一同は一言も発することもなく時間ばかりが過ぎて行く。しかし、現状、薫やマリーに対する不信感はただの弘の感に過ぎない。
「フンッ。まぁ、今はいい。」
それ故に、弘も不満な態度を隠す様子もなく先程まで自分が座っていた席に戻る。
「すみません。自分のせいで少し話の方向がずれてしまいました。とりあえず、宝石は沙良さんが、この破片は、ギルニルさんどうしますか?」
「薫サンが良ければ、バックの中に入れてくれますか?必要そうにナイのならココに置いて行ってもダイジョウブデス。」
「わかりました。預かります。では、この後は、皆さんで一階の探索。その後、地下へ向かう方向でいいでしょうか?」
全員が薫の意見に賛成する。弘も、あまりいい顔はしなかったが、一人だけ反対意見を示したところで、得策ではないことは理解しているようで、とりあえずは残りの階段横にあった扉へと一行は向かった。
高平 薫 持ち物;メモ用紙、鞄(棒二本、10メートルのロープ、懐中電灯)四つの薬品、金属片
間瀬 弘 持ち物;警察手帳、手錠、拳銃、メモ用紙
目的:神の力の持ち主が死ぬように仕向けること。
氷野 沙良 持ち物;金槌、リスのような生物、変色する宝石
新妻 幸恵 持ち物;小さなナイフ、懐中電灯、メモ用紙、小さな箱
目的:なし。裏切り者に見つからない事。
ギルニル・F・アデラート 持ち物;棍棒、手錠×3
マリー・マーキュリー 持ち物;サバイバルナイフ




