96話 奴隷王に俺はなる!
それから村人が数人やって来て、食材を運び出すとの事だったので俺達はミサさんの家で休ませてもらうことになった。
俺が運んでも良かったんだが、ミオさんから俺のアイテムボックスはそう人前で使うものじゃないと言われてしまった。
以前ルナにも言われたが、やはり破格の性能なのだろうな。
ミオさんは食材の運搬を手伝っており、ミサさんにはリムリとリリカを連れて怪我人のいる所に治療に行って貰っている。ルナが行った方が早いんだが、ミサさんからも恐れ多いと止められてしまった。その為、今は俺とルナとフーカの三人だけだ。
「結構な数だな。……神具以外のいらない物は村に寄付するか」
ミサさんの家ですることもないので、先ほど貰った武具を広げて確認しているのだが、今回は前みたいにグチャッとはならなかったので無事な武具も多い。とは言ってもフィロの店で装備を整えている俺たちが欲しい物は神具以外ないと思うが。
「それがいいかもね。結界を直してもまた魔物が来ないとは限らないからね」
「ジン様、神具とはこれですか?」
フーカが持ち上げたのは特に飾り気のないナイフだ。鑑定して見るとイルダの短刀(神)だった。
「フーカは武器の善し悪しが分かるのか?」
特に見比べるまでもなく一発で神具を見抜いたようだったぞ。
「分かると言うほどではありませんが、不思議な感じがするんです。これとか、あとこれも」
フーカが取り上げたのは全部神具だった。そう言えばフルンティングを見つけた時もフーカが最初に気付いていたな。
「流石はフーカだ。全部合っているぞ。他にもあるか?」
フーカの頭を撫でつつ聞くと更に五個取り出し、最後に首を傾けながら指輪を一つ取り出した。
「私が感じるのはこのくらいです」
鑑定してみると始めの五個は神具で最後の指輪だけ違った。しかしその指輪は、
「精霊の指輪?」
人間用の指輪だが鑑定するとそう出た。
「精霊の指輪? ちょっと見せて。……これって!」
ルナに見せると目を見開き、すぐさま窓の方に視線を向けた。何事だと俺とフーカが唖然としていると光りの玉が窓の外に現れ、窓を通り抜けてルナの前で止まった。
「精霊、か?」
「はい。小精霊だと思います。ルナ様と何か話しているのだと思います」
それから数秒ほど無言で光の玉を見つめていたルナがこちらに向き直った。
「ジン、どうやらこの村の結界はしばらくは直せないわよ。その指輪は精霊石が使われた物なんだけど、多分この村の結界の核に使われていた寄り代の一部だと思うわ。今この子に聞いたけど、結界の核自体が壊れているみたいだからそれを直すってなったら直せる子を呼ばなくちゃならないわ」
今は近くにいた中精霊が結界を直しに行っていたらしいのだが、そもそも結界の核が壊れていて直しようがないみたいだ。
ルナはその手の事は専門外らしく直すなら精霊の里から直せる精霊、それも精霊王クラスを呼ぶ必要があるらしい。だけど、精霊王など格上の精霊は無闇に里を出る事を許されていないみたいだ。
本当なら精霊神が出歩く何てありえない話らしいが、ルナは契約による例外中の例外だと。
「なら俺たちが直接行ってその核を作って貰えば良いんじゃないか?」
「うーん、ジンとルナならそれでもいいけど、でも精霊の里までかなりの距離があるわよ? 帰りは転移があるけど、行くだけで急いでもひと月は掛かるわよ?」
それは――流石に無理だな。結界がないとなると盗賊だけじゃなく奴隷狩り何かにも狙われる事になるだろうし。
どうするか。
「皆さんをジン様の奴隷にしたらいいのでは?」
……フーカさん? なにいきなりトチ狂ったこと言ってるんだ? それじゃ頭撫でないよ?
「そうね。それが一番いいかもね」
「……まて。ルナまで何言ってるんだ? ――ここにいるのはハーフの人たちだが、奴隷じゃないんだぞ! 結界が作れないから奴隷にしますってそれじゃその辺にいる悪党と同じだろう!」
「違います!! ジン様は違います!」
熱くなりかけた頭がフーカの叫びで一気に冷静になった。フーカの叫びに驚いた俺にため息を付いたルナが、
「ジン? ここはジンがいた世界とは違うわよ? 結界がなくなった今、ここにいる村人達に残された道は別の聖域に逃げ込むか、奴隷になるかその二つよ。一部の実力がある者なら冒険者になるって選択もあるけど、今この村の現状では難しいでしょうね」
「……それでもまだ別の聖域に行く方法があるんだろ?」
「無理よ。この近くに別の聖域はないわ。一番近くでも二十日は掛かるでしょう。とてもたどり着けないわ」
諭すように語るルナの言葉に現状の打開策はないと思い知らされる。この世界ではハーフは奴隷なのだ。それが常識なのだとフーカの表情からも見て取れた。
「ジン様、私はジン様の奴隷で幸せです。リムリンもそう思っています。もしあの時、ジン様に出会えなかったとしたら例え生き存えたとしても幸せではなかったです。これは皆さんも同じだと思います。ハーフの奴隷が良い主人に仕えられることは本当に稀なのです。だからジン様――」
……全員を俺の奴隷にしたとしても俺に全員を養うのは無理だろ。小さい村って言っても三十人近くいるんだ。奴隷にだけしてこの村で今まで通り生活してもらうか? 毎年掛かる奴隷税ぐらいは払ってもいいけど、そんな簡単にいくとは……。そもそも皆を奴隷にする方法が……。
「…………は? ……は、はははハハハ、――やってくれるな、神様!!」
何か打開策はないかと考えて、ふと自分のステータスを確認していなかったことを思い出して鑑定を使って見たのだが、
九条仁
人族LV45
使徒LV45
階級「准尉」
フルンティングLV53(神)
力の指輪(神)
空間の腕輪(神)
・神の使徒・神具鑑定・魔力充填・奴隷王・真実の瞳LV4・スキル鑑定LV3・夜目LV3・威圧LV4・異常耐性LV2・魔力吸収LV1
さっき盗賊の武器を天送したのが三つ目だったみたいだな。奴隷王が増えている。しかもこれレベルないしユニークだろ?
確かに俺とルナは神様に三回目はボーナスで破格のスキルをくれって言ったけどさ。こんな謀ったようにくれるとはな。
「ジ、ジン? どうしたの? 大丈夫?」
ルナの声に視線を向けるとルナとフーカが心配そうな眼差しで見ていた。……いきなり笑い出したからな。
「あぁ、大丈夫だ。……さっきの天送で神様からスキルを貰ってたみたいだ。……何と言うか、奴隷商の最上位版みたいなヤツだ」
フーカの前で奴隷王のスキルゲットだぜ! とは言えませんよ。
それに真実の瞳とスキル鑑定が上がっているからか大体の効果は分かるんだが――これ相手の承諾があれば触れるだけで何人でも奴隷にする事が出来るみたいだぞ。しかも俺の承諾が無ければ絶対に解放されないみたいだ。…………解放前に俺が死んだら道連れか?
「そう言えば三つ目は良いスキルを渡すように言ってたわね。……どう? そのスキルで問題は解決出来そう?」
ルナは俺の表情からある程度察しているみたいだ。もうちょっとポーカーフェイスを磨かなくては。
ただこのスキルで奴隷にすることができるってだけで根本的な解決にはならないよな。皆を奴隷にしてもやっぱりここで生活してもらうしかないだろうな。
「……そうだな。取り敢えずどうにかなりそうだ。もっとも村の人達の同意と協力が合ってだけどな」
「それなら問題ないでしょうね。ルナかジンが言えば皆頷くわよ」
それって強要だろ……。ミオさんに話してみるしかないか。
「――とりあえずこの武具を片付けてから外に行ってみよう」
それからフーカが取り出した神具以外も鑑定を続けたが、結局その後新たな神具は出てこなかった。
全部で八個。中々の成果だ。
これだけあるしフーカ達にも使わせようかと思ったんだけど、回収が目的な上、適正者以外の使用で副作用がある神具も存在するとルナに脅されたので使えそうな二つの神具を残し、六個天送して新たなスキルをゲットすることにした。
残す神具は、
鍛冶神の手袋(神)
光の盾(神)
この二つは当たりだろう。効果としては、
鍛冶神の手袋は数千度の熱にも耐えることが出来る上、両手だけじゃなく手袋で防護していない体にも多少の熱耐性が付与されるみたいだ。
そしてこの手袋を装備している間は鍛冶スキルがスキルに加わっていた。これはフーカ達が装備しても同じだった。伸縮もするのでルナでも装備可能だ。
光の盾は盾と言うより障壁に近い。通常時はリングになっているので手首に装着しておき、盾を出したい時は念じるだけで光の盾が出現する。盾の大きさは魔力に比例するみたいだが、俺が魔力を強めに込めると周囲を半円状に囲むように光の障壁を出せた。
強度も山賊王の太刀では壊せないほど強い。フルンティングは切り裂くことができたが、魔力の込め方と範囲を狭めることで強度が増すみたいだ。イメージで形を変化させることも出来るみたいだし便利過ぎるので使うことにする。
「それじゃこっちの神具は天送するわよ?」
「ああ。頼む。スキルを確認したらリムリ達の所に行こう」
「はい」
ルナが天送を使いしばらく経つと俺のステータスが更新されて、調合師LV1と念話LV1が増えていた。
調合師は薬草などを調合する際の技能を習得することができるスキルみたいだ。手元に薬草もないし実験はまた今度だな。
念話は俺と繋がりのある人物に魔力を通して会話することが出来るスキルみたいだ。試しに広場にいるリムリに念話をしてみたけど、リムリが突然のことにビックリしてて上手く会話にならない。携帯やテレパシーの概念がないから突然頭に響いてくる声に驚いているみたいだ。
念話はレベルが上がれば俺の魔力を込めた物を持つ人物にも念話が繋がるみたいだな。異世界版の携帯電話みたいなもんだな。俺専用だけど。
「増えたのは調合師と念話のスキルだ。ここじゃ試せないし、おいおい確認しよう。それじゃ広場の方に行ってみようか」
リムリが何やら慌てていたし、行って謝らんとな。想像以上に驚いていたし。




