87話 風呂は偉大なり。(アオイ)
「ふにゃー、すっっごいにゃねぇ」
「改めて見てもビックリするわ。アオイはこういうお風呂知ってたの?」
「ええ。私が元いた世界ではこういうお風呂で商売も行われていたわよ」
おチビちゃん達に呼ばれる少し前にミニャが来たのでついでに連れて来たけど、猫ってお風呂大丈夫なのかしら?
「アオイ様? 私一応人ですからね? 亜人差別辞めて下さいね?」
「――何も言っていないわよ?」
この世界の住人は勘が鋭い人が多くて嫌になるわね。でもホント凄いわ。良くこれだけ立派な浴槽を作ったものね。この世界の常識を覆すレベルだし、貴族が知ったらこの家取り上げられるんじゃないかしら?
「ミニャ、このお風呂の事は秘密にしなさい。もし貴族が取り上げようとしたら私は仁君に付くわよ」
「ちょ、怖いこと言わないでにゃ! 心配しなくてもリリカ様もいるし、領主様もジンにゃんの実力を認めてるから大丈夫にゃ」
それで安心なんて出来ないわね。きっとミニャも入ったら考えが変わるはずよ。
「それじゃ入りましょう。えっとジンの話だと先ずは桶を使って体を流せって言ってたわね」
「そうよ。本当はそっちの蛇口を使って体を洗ってからの方が良いんだけど、まだ石鹸も何もないからね。仁君は作れないのかしら?」
なんだか彼ならその内作り出しそうね。シャワー作らないかな。設計図があれば私でも加工できると思うんだけどな。
「ふにゃ! 思ったより熱いにゃ! 全然冷えてないにゃよ?」
「え? ……これ新しいお湯に入れ替えているわね。気が利くというより勿体無い、申し訳ないって感じね」
魔法で用意しているからそこら辺の感覚が鈍いのね。毎回されたら流石に申し訳なくて入りづらいって伝えときましょう。
「掛け湯は温度に慣れる為って言ってたからしっかり浴びなさいよ」
「はーいにゃ。フィロ姉はジンにゃんの言うことには素直にゃね?」
……あら? そう言えばそうよね。仁君って子供に好かれ易そうだもんね。
「私はこれでもアオイと二つしか違わないからね?」
「アオイ様って何歳にゃ?」
「……女に年齢聞くんじゃないわよ」
「フィロ姉何歳にゃ?」
「二十五」
「ならアオイ様は二十な――」
「そんなに私と稽古がしたいの? いいわ。お風呂上がったら地下に行きましょう。久しぶりに稽古付けてあげるわ」
「いやにゃ!! ゴメンにゃ! ちょっと魔が差しただけにゃ!!!
とりあえず生意気な猫娘を抱えて風呂に放り込んだ。良い子の皆は真似したらダメだよ?
「ふー。いいお湯ねぇ。生き返るわ」
この世界に来てこんなに広い湯船に浸かった事なんて一度もないわ。ホント仁君様々ね。今度何か困ったことがあったら協力してあげましょう。
「うぅ。酷い目あったにゃ。耳の中にお湯が入ったにゃよ」
ミニャは猫耳をぷるぷるさせてお湯を出しているみたいだけど、その反動で胸もプルンプルンしてた。しばらく見ない内に随分と育ったものね。
「フィロ、そんな離れていないでこっち来なさいよ」
「嫌よ。そっちは深くなっているでしょう。ジンは気が利くからちゃんと考えて作ってあるのよ」
彼の場合周りに小さい子が多いから自ずとそうなるのでしょうけど。やっぱり小さい子が好きなのかしら? 子供の奴隷を二人も買っているし。私やミニャには厳しい所もあるから。……やっぱり胸かしら。『ぷるん』これ重くて邪魔なだけ何だけどな『ぷるん』こうしてちょっと体動かすだけで『ぷるん』すぐ揺れるし。なんで男ってこんな『ぷるん』が好きなのかしらね。
「……アオイ? なに? それは私へのあてつけなの? 喧嘩売ってる?」
あら、胸を弾ませてたらフィロが怒っちゃった。可愛いわね。
「そんなわけないでしょ。ミニャも言ってやりなさい。こんなの邪魔なだけよね」『ぷるん』
「そうにゃね。男共の目がムカつくし。あ、でも昨日ジンにゃんに押し付けた時は喜んでくれたから少し嬉しかったにゃ」『ぷるん』
「なにそれ、なんであんた仁君に胸当ててるのよ」『ぷるん』
「しょうがなかったにゃ。そうでもしないとジンにゃんが暴走しそうだったにゃ!」『ぷるんっ!』
「言い訳はいいわ、彼を楽しませるのに使ったって言うなら私も楽しませてもらおうかしら!」『ぷるんぷるん!』
「うがぁ!! いい加減にしろ! もう私あんた達とは絶っっっ体!! 一緒に入らないわッ!! 私はジン達と入るわ!! 私と一緒に入りたかったらジンと一緒に入ることねッ!!」
ちょっとからかい過ぎたかしら。たぶん、後で冷静になってから自分が口走ったことに悶えるでしょうね。それに今の声の大きさだとジン達にも聞こえたでしょうし。
「フ、フィロ姉落ち着くにゃ。一応ここは他人の家にゃよ?」
「ッ! もういいわ、私は先に上がらせて――」
「ダーメー。ちゃんと百数えてからね」
上がろうと背中を見せたフィロに抱き着き深い方へ誘う。
「ちょ、ごぼぉ、ごほっ! はな、ごぼ!」
「お風呂のお湯を飲んではダメよ? 意外と雑菌が多かったりするんだから」
「なら放しなさい! 溺れるでしょうが!」
両腕ごとがっしり捕まえているからフィロは足をばたつかせるぐらいしか抵抗出来ないみたい。丁度私の胸が枕になっているから寝心地いいと思うんだけどな。
「そんなに足広げたらはしたないわよ? 声に驚いたジンが入って来るかも知れないわよ?」
「ッ、く!」
――あら、大人しくなっちゃった。この子、仁君に惚れてるのかしら? 私のって仁君に伝えとかないといけないわね。




