82話 チートは偉大なり
「いらっしゃい。ジンも無事みたいね?」
「あぁ、お陰さんでな。何か昨日は色々迷惑掛けたみたいですまんな」
いつもの如くカウンターに座っているフィロに手を上げて挨拶する。フーカ達に聞いただけで詳しくは分かっていないが、冒険者を集めて俺達の為に何かをしようとしていたみたいだし、昨日の夜はフーカ達の為に泊まって行ってくれたらしいからな。
「あー、昨日の事は忘れたわ。もちろんフーカ達とのお泊まり会は覚えているけどね。それで、そっちの女性がリリカ様?」
「リリカ・ガイアスじゃ。今は主様のただの下僕じゃ。よろしく頼む、神風のフィロ殿」
「神風?」
何やら聞き逃せない単語が。
「やめてよ。もうその二つ名は捨てたの。ジンも! 興味ありますって顔しない! ほら、フーカに荷物持たせているんでしょ!」
おっとそうだった。フィロの事は後で聞くとして先ずは商売だな。
「今日は二箇所分だけどちょっと少ないんだよな」
カウンターに素材を分けて広げて行くとフィロがジト目で睨んで来た。
「十分多いわよ? これで少なかったって言うつもりならその辺の冒険者に謝って来なさい。素材が百点を超えている時点で既におかしいって分かりなさい」
それから素材の質を確かめてフィロが提示した金額が、
熊爪が銀貨一枚と銅貨五枚、熊皮が銀貨一枚と銅貨三枚、鼠の皮が銀貨一枚、蜂の外殻が銀貨五枚、鉄の外皮が金貨一枚だ。
ボスの魔石はルナが使うから売りには出さない。
鉄の外皮は貴重な物らしく、金貨一枚という。ボスの落し物だしな。交渉すれば全体的に上がりそうだけど。
「分かった。ならそれでいいよ」
「……交渉はしないの? 今のは一応お得意様の金額だけど規定の金額よ。もう少しなら交渉の余地もあるわよ?」
それを俺に言っていいのか?
「今回はこれでいいよ。フィロには迷惑掛けまくっているからな。浮いた分はフィロが貰っとけよ」
「んー、そう言うわけにもいかないんだけどねぇ。まぁ、いいや。なら有り難く買い取らせてもらうわ。全部で金貨二十枚と銀貨四枚、大銅貨四枚ね。……確かに前回の金額からしたら少ないかもね」
フィロが苦笑しながら裏にお金を取りに行った。前回は金貨百十枚だったから全然低い、それでも金貨二十枚を二日で稼げる冒険者は限られているだろうけど。
今回は小魔石がなかったのも金額が下がった原因だからな。やっぱり小魔石が金になる。次は山賊王の太刀をメインで行こうかな。
「主様? 主様は毎回これほど稼いでおるのか?」
「ん? いや、今回が換金は二回目だしな。前回は結合ダンジョンの分で金貨百十枚になったぞ」
リリカが目を見開きフーカを見るがフーカは頷くだけだった。なに? 俺が嘘言ってると思ったのか?
実際には初めて来た時にも換金しているけど、それは内緒にしておこう。無許可でダンジョン制覇した分だしな。
「……主様にとって今朝の褒賞金はダンジョンを一回二回制覇することで稼げる程度じゃったか」
そう言われると何か微妙だな。結合ダンジョンは命懸けで頑張ったんだけど。
「はい。金貨二十一枚よ。端数分は値上げしなかったからその埋め合わせよ。あと普通の冒険者なら一回ダンジョンに潜って二階層辺りで引き上げることが多いみたいだから一日の成果は銀貨五枚ってところかしらね」
そんなもんなのか。まぁそれでもいい商売か。銀貨一枚が一万とするなら五万稼いでいるわけだし。
「妾もその程度だと認識しておった。故に主様は異常じゃぞ? そもそもダンジョンに潜ったら制覇しないと帰らないという時点でおかしいじゃろ! それも一日で全て制覇しておるというし!」
そう言っても行けるのに途中で帰るのも無駄だろ? むしろ転移が使えない冒険者が一々街に帰るっていう方がおかしいだろ。帰ってまた一から攻略するって同じところグルグル回っているだけだし。効率が悪いにもほどがある。そんなんだからダンジョンの制覇が出来ないんだろ。
「ジン様、丁度あります。フィロさんありがとうございます」
フーカがフィロに頭を下げて金貨を持って来てくれた。
「ありがとう。……リリカ、それくらい出来るヤツが居ないからダンジョンが増え続けているんだぞ? 他の冒険者も制覇するまでダンジョンを出ないってぐらいすれば数も減るはずだぞ」
死人の数も増えるだろうけどな。でもそれくらいしないとダンジョンが無くなることはないだろう。つーか将校冒険者はなにやってんだろうな。ミニャクラスが数人居れば今の俺ぐらいの活躍は出来るだろうに。強いヤツは深層迷宮の方に行ってるのか?
「ダンジョン制覇が遅れている理由としては荷物の運搬があるわね。せっかく拾った素材を捨ててまで潜って行くくらいなら一度戻った方がいいって考えが、低層を繰り返し攻略して素材集めの金稼ぎを助長させてるのよ。ダンジョン制覇の為に下に潜れば潜るほど、帰りづらくなる。引き時を考えるとどうしても深くは潜れないわ」
フィロの言葉でピンと来た。俺は運搬の問題がないし、引き際も転移があるから問題ない。
「それに怪我の治療もダンジョン内じゃ厳しいし、ダンジョンによっては魔物が大量に発生する所もあるわ。それを一撃で屠れるほどの実力がないと攻略は出来ないでしょうし」
俺には万能治療師ルナがいるし、フルンティングを始め、色々神具を持っている。つまり、俺はチートのお陰でダンジョン制覇が出来てるんだな。
「それも全部ジンの力よ。ジンだから扱えている、ジンだからダンジョン制覇も簡単に出来ているのよ」
「ルナ様! フィロ殿がいるのに姿を見せていいか!」
ルナの声を聞いたリリカが慌てていた。あぁフィロがルナの事を知っているって知らないのか。ルナは最初から姿消していないからフィロもルナに頭下げたりしてたんだけど。
「リリカ様、私はルナ様のこと知ってますよ。もちろん誰かに言ったりするつもりもありません」
「なに? 主様ルナ様の事を知っている人物はそんなにいるのか?」
「いや、フィロ以外だとアオイと……ハーフの村か」
「「ハーフの村?」」
フーカとリムリが食いついてしまった。
「なんじゃ、そのハーフの村とは?」
「あー、そうだな」
それから俺とルナがこの街に来るまでの事をみんなに説明をすることになってしまった。もちろん神様の話はしていない。東方の地から帝国へ向かってやって来たと伝え、とりあえずこの街に来る途中で世話になったハーフの村があると教えたが、場所は誤魔化しておいた。隠れ里だしな。
フーカとリムリは少し興味がありそうだったが、俺も詳しくはないから説明は出来ないしなぁ。ルナが変わりに少しだけ何やら話して二人共納得しているようだ。
「まぁそんな感じでちょっと世話になったんだ。ちなみにフーカを買った時の金はそこで貰った金だ!」
「なに自慢げに言ってんのよ。ちゃんとお返し行ったの?」
いや、俺も結構大変な日々を送っているんだが。でも、そうだな。今度見に行ってみるか。近くにまだ盗賊がいるかも知れないし、ついでに神具を回収するとしよう。
「よし、近い内に行ってみるか。フーカとリムリは一緒に行こうな」
「「はい!」」
「ちょっと待つのじゃ! なんで今、妾を除いた!」
「いや、ハーフの村って言っただろ? 純血エルフはお断りだよ」
俺の言葉に打ちひしがれているリリカは放って置いてフィロに視線を戻す。
「なによ」
「え、いや、ちょっと訪ねたいことがあっただけなんだが」
フィロがなぜが身構えたので出鼻をくじかれてしまった。
「えっと、この街に風呂屋ってあるのか?」
次の話から勢いで書きまくっている番外編に近い話になります。たぶん数話分になると思いますけど、もう止まれないので笑って許して下さい( ̄▽ ̄;)




