80話 俺って結構チート属性持っているのかも知れないな。
「……主様! 朝じゃぞ! 起きるのじゃ!!」
布団がガバッと剥がされリリカの声が部屋に響いた。
「……おはよう。できればもう少し優しく起こしてくれないか?」
リムリが腹にダイブしてきた時の方がまだ可愛げがあったな。リリカのは効率重視の母親のやり方だ。
「何やら失礼なことを考えているのは分かったのじゃ。では次からは布団に入って優しく揺り起こすとしよう」
………………………………うん!
「なに頷いてるの? ジン?」
「……おはよう、ルナ。今日はすんなり起きたな」
「話題逸らしてない? まったく、油断も隙もないんだから。おはよう、二人共。いきなり布団を剥がされて起きない方がどうかしてるわよ」
ルナのジト目を受けてもリリカは不敵に笑っていた。
「妾は主様の従者じゃからな、主様を起こすのも妾の仕事。そうルナ様と同じ従者である妾のな」
「アンタ昨日は従僕って言ってなかった?」
「昨日の夜、主様が仰っていた。主様の元では奴隷も貴族も精霊もない、と。つまり妾とルナ様は対等なのじゃ!」
俺、精霊まで言ったっけ? まぁ、その考えは嫌いじゃないんだけど、リリカが言うと何か違うような? つか起きてたのかよ!
「まぁいいわ。ルナも別に崇められたいわけじゃないから」
ルナならそう言うよな。リリカは予想外といった顔で身構えているけど。
「――よし! それじゃ領主様から貰うもん貰って、さっさと帰るとするか!」
「「おー!」」
「……それで、私はリリカに叩き起こされたという訳ですな」
昨日の部屋ではなく、領主の執務室で待っていた俺達を見て領主は苦笑いしていた。
リリカに案内されて執務室に来たのだが、誰もおらずリリカがすぐに連れて来ると部屋を飛び出し数分、髪の乱れた領主とセバスチャンがリリカに連れられやって来た。
「セバ・スチャンです」
「セバどうした? 分かっておるぞ?」
いきなりのセバスチャンの発言に領主がびっくりしていた。セバスチャンも俺の心を読むんだな。
「ごほん。それではジン殿がお急ぎとのことで身嗜みも整えれず引きずり出された私から、ジン殿に勲章と褒賞を与える。ジン殿前に」
何やら嫌味が篭った言葉だったが、貰えるなら文句はない。領主の前に立つと隣にいたセバスチャンから金細工の様な物を受け取り俺の胸に付けてくれた。
これが勲章か。……素材は金なのか? 幾らぐらいになるんだろうな。
「……ジン殿? 勲章はお金に変えられない名誉であるぞ?」
「顔に出てました?」
「くっきりと。金が入用になったなら売る前に相談に来い。リリカの面倒を見てもらっておいて無下にはせん。……もっともその必要があるのか分からんがな」
そう言った領主は次にセバスチャンから小さな箱を受け取り、俺に見えるように箱を開けて差し出してくれた。
「大金貨十枚、金貨四十枚だ。これは巨大蜘蛛の分も含まれている」
おぉ! 大金貨だ。奴隷商で使って以来だな。それも十枚か。一枚で金貨十枚分だろ? 全部で金貨百四十枚分か。アイテムボックスに別に八十枚あるから金貨二百二十枚だな。たった数日で金持ちになったなぁ。
「はっはっは。驚くのはまだ早いぞ? これは私個人からだが、リリカを任せる者に渡そうと思っていた物だ。ジン殿なら問題ないだろう。受け取ってくれ」
領主が懐から取り出したのは小さな宝石が嵌め込まれたペンダントだった。
エルフの光(族)
え? 族って何? 種族的な物か?
領主から恐る恐る受け取り鑑定してみるが神具ではないようだ。ただこのペンダントは凄い。付与されている魔法が、斬撃耐性、物理耐性、五大魔法耐性、投擲無効、光無効。となっている。
何これ無敵アイテムですか? 耐性はどの程度か分からないけど、少なくとも投擲は無力化って事だろ? 投げ武器には無敵になって、光は光魔法が無力化されるってことかな?
「これは?」
「このペンダントはエルフ族に伝わる秘宝とも言える物だ。代々受け継がれて来て、いずれはリリカにと思っていたのだが、ジン殿に託しましょう」
おいおいおい、それダメじゃね? いや、まさかリリカと夫婦になれって意味か? 返した方がいいかな? でもこれは勿体無いよな?
「あまり深く考えなさるな。そのペンダントは今は眠っておるが、いずれその力を解放する事が出来る人物が現れた時、その者に大いなる力を授けるという伝説が残っている。ジン殿がもし、そのペンダントを扱える者と出会ったのなら渡して欲しい」
……あれ? 俺って扱えてる?
「主様、くれると言っておるのだから貰っておけば良かろう。主様なら必ずや使いこなせるはずじゃ!」
まさにその通り、使えてそうだ。なら遠慮なく使わせてもらおうか。
「……そうだな。では領主様、有り難く頂戴致します」
「うむ! 今後もダンジョン制覇に励んでくれ。……あと、たまにはリリカと一緒に顔を見せに来てくれ。また良いお茶を用意して待っておる」
「はは、了解しました。フーカ達と一緒で良ければ喜んでご馳走になります」
その後玄関までアイラとアイリに見送られたのだが、屋敷を出る直前にアイラ達からアミュレットを二つ渡された。
「「バレン様からお家でお待ちの彼女達へお詫びの品です。どうぞお受け取り下さい」」
「え、いいのか? さっきから色々貰ってるんだが」
「「これは彼女達への贈り物です。クジョウ様へではありません」」
奴隷って主人のものって言うならフーカ達の物も俺の物では?
「「クジョウ様なら奴隷への贈り物を取り上げたりしないと信じております」」
いや、別に取り上げようとか思っていないけど。
二人から受取り鑑定してみると、物理耐性(小)が付与されていた。良いお土産をもらったな。
「ありがとう。領主様に伝えてくれ。この礼はいずれ必ずってさ」
「「かしこまりました。お三方に良き旅路があらんことを」」
「……セバよ。私は間違った事をしたと思うか?」
ジン殿とリリカが屋敷の外を歩いて行くのを眺めながら背後に控えるセバにそう問うてみた。
私が思うにジン殿はこの国で、いやこの大陸全土で名を残す人物となるだろう。リリカも心から心酔しているようだし、私もできる限りの支援はしてやりたい。だが、エルフの秘宝とも言えるペンダントを独断で渡したのは間違っていたであろうか。
「いいえ。私もジン殿はただならぬ者と思っております。旦那様の判断が間違っているとは思いません」
それはエルフの宝を差し出してでも関係を結ぶだけの価値があると言っているのか。
くくく、まだ出会って一日のそれも他種族の若者に娘と種族の秘宝を差し出してまでの価値か。
一体ジン殿は何者なのだろうな。ミニャにフィロ、そしてアオイ。私やセバ達も含めこの領地の実力者にこぞって認められている。それも僅か数日でだ。これほどの快挙、あのアオイでも無理だったはずだ。クジョウ・ジン、お前は何者だ?
「――セバにそう言われると安心する。……ふぅ、私も昨日から驚きの連続で疲れたな。急ぎの仕事はなかったな? もう少し休ませてもらおう」
「かしこまりました。どうぞごゆっくりお休み下さい」
リリカに叩き起こされたが、昨日寝たのは朝日が昇る少し前だ。二時間と寝ていなだろう。我が娘ながら自分勝手に育ったものだ。ジン殿の元で清らかに育ってくれたらいいのだが。




