78話 天国と地獄の双丘
「「お帰りなさいませ」」
領主達とダンジョンで合流してから四時間掛けて屋敷まで戻ってきた。外はすっかり暗くなっていた。領主達が居なかったなら転移の指輪で直ぐに戻れたんだけどな。
ダンジョンから戻る途中に一人にさせてもらい、フーカ達の元に転移して今日は帰れそうにないと説明してから、またダンジョンに戻って屋敷を目指して出発した。
今回のダンジョンも俺が制覇したので、その褒美と途中に倒した蜘蛛の懸賞金をくれるとのことだ。いくらくれるか知らないけど、前回のダンジョンでは小魔石を全部使ってしまったし、素材もそこまで集まっていないから助かる。
今回のダンジョンも山賊王の太刀は使っていないから素材はそこまで多くないし、小魔石は一個もないのだが。これが普通なんだよなぁ。
そしてダンジョン制覇の報酬のスキルは魔力吸収LV1だ。これは魔力を持つ生物を攻撃した時にその生物の魔力を一部吸収するものみたいだ。レベル1ではほとんど吸収できないみたいだけど、レベルが上がればかなり役に立つはずだ。魔力充填とのコンボが今から楽しみだな。
「今日はゆっくりしてください。褒賞は明日の出発前にお渡しします。早くにお戻りになるのですな?」
「ええ。家に二人残していますので」
「こんなことなら帰すべきではなかったですな。申し訳ない」
それから屋敷で食事を頂き、風呂があると言うのでお邪魔させてもらう。
「おおー。ちゃんとお湯が貯めてあるぞ。小さいけど」
「ルナにとっては大きいけどね。一緒に入りましょう」
それはいいのか? まぁルナだしいいか。
風呂場は脱衣所があってその先にお湯を貯めたデカい桶があり、それとは別に膝を抱えて入れるほどの小さな浴槽があった。
リリカの話ではこういった浴槽があるのは貴族の家でも珍しいとのことだ。水道があるわけでもないし、水を貯めるにもお湯を沸かすにしても大変そうだしな。
今の俺達の家にも風呂場はあるけど浴槽はない。貯めた水で体を流すぐらいしか出来ないのだ。しかし、一般の家にはそもそも風呂場自体がないと言うから驚きだ。
「……狭いな」
「そうねぇ。でも、お湯に浸かれるってだけで凄いことなんでしょ?」
日本人としてはデカい風呂にゆっくりと浸かりたいものなんだがな。……風呂場はあるんだし作るか。
「主様、湯加減はどうじゃ?」
「……丁度いいけど、何で普通に入って来てるんだ?」
扉が開きタオルを巻いたリリカが堂々と入って来た。タオルから溢れ出しそうな見事な双丘が上下に揺れ、ダンジョンでは見ることが叶わなかったすらっと長い美脚が目を楽しませてくれる。まさに眼福!
「ジン? いえ、これはリリカね。リリカ何のつもりかしら?」
俺がジッと見つめているせいで赤くなっていたリリカがルナの声でハッと我に返った。
「こ、これはルナ様、ご一緒されておられたのですか。わら、私は主様のお背中を流して差し上げようと思い」
「それはルナがするからいいわ。用が済んだならさっさと戻りなさい。風邪引くわよ?」
何時になく辛辣なルナの言葉に怯むリリカだったが、
「いえ! 主様のお世話は従僕である妾の役目! ルナ様のお手を煩わせるわけには参りません!」
こいつは何時から従僕になったのだろう? まぁその大きいので洗ってくれると言う――イテェ!!
ルナに太ももを思いっきりつねられてた。声には出さなかったがリリカが首を傾げていた。
「変なこと考えていないでジンも何か言ってやりなさい」
俺が言うよりルナが言った方がいいだろうに。――そうだな、ならどっちに転んでもいいように、
「――リリカ、俺が前いた所では風呂にタオルを持ち込むことは禁止されていた。俺と一緒に入るというな――」
「こ、これで良いのだなっ!」
リリカはあろう事かタオルを落とし、両手で上下を隠していた。顔を真っ赤っかにしてちょっと涙が浮かんでいる。
「――ジン?」
いや、ちょっと期待したけど、まさか本当にするとは思っていなかったぞ! つか、なんつー体してんだよ! 溢れそうな宝玉に、キュッと引き締まったウエスト、更にはバランスの取れた完璧な脚線美!
これは色々ヤバい。具体的に風呂から上がれなくなった!
「り、リリカ、そこまでしなくてもいいんじゃないか? あれだ、ここはお前の家の風呂だ。俺のことは気にせず、タオルを使ってもいいんじゃないか?」
「い、いやじゃ! 妾とて覚悟は出来ておる! それにここはもう妾の家じゃない、妾の帰る場所は――主様の隣じゃ!!」
「っちょ、おい、待て!」
真っ赤になったリリカが目を瞑ったまま俺達が入っている浴槽へダイブしてきた。咄嗟にルナを浴槽の外に出したが、次の瞬間顔に柔らかく弾力があるものが押し付けられるが、受け止めきれず後ろへ倒され後頭部に凄まじい衝撃が走り世界が回る。しかし顔に当る温かな弾力は安らぎをくれる。そうか、これが天国と地獄、か。バタッ。
「それじゃジンは今日帰らないのね」
「はい。先ほど一度戻って来られてすぐに戻られました。今日は領主様の屋敷に泊まるそうです」
「ふざけた力ね。ルナ様の魔法なのかしら? 転移の魔法を使える人物ってこの世界に何人いるのかしらね」
様子を見に来てくれたフィロさんがそう言って苦笑していました。
フィロさんはルナ様のことも病室で転移を使ったところも見られているので、ジン様が一度お戻りになったと教えたけど……ダメだったかな?
ジン様は結構気軽に転移を使っているみたいだったけど、やっぱり普通はそうそう使えるものじゃないんだよね。
「私は詳しい事は分かりません。ただジン様は凄いお人だとしか言えません」
「そうだよ! ご主人様は凄いんだよ!」
リムリンはフィロさんに抱き着いたまま嬉しそうに話しています。フィロさんは来た時こちらを伺う様な素振りを見せてちょっといつもと違うと思っていたけど、リムリンが「さっきはゴメンなさい!」っとフィロさんに抱き着き、初めは驚いたフィロさんだったけどすぐにいつものフィロさんに戻りました。
やっぱりさっきの一件があったからフィロさんも不安だったのかも知れません。
「まったく、こんなに可愛い子を二人も待たせて一体何やってるのかしらね」
「先ほど戻られた時にたくさん謝っていましたよ」
ジン様はご自身の力をあまり見せようとはしないので恐らく領主様に転移が出来る事を知られたくないのでしょう。わざわざ戻って来てくれただけでも嬉しいのに、あんなに謝られたら申し訳なくなります。ジン様は本当にお優しのです。
「謝らなくていいのにね。でもちゃんと約束通りすぐに帰って来てくれて嬉しかったよ」
「ジンは奴隷の主人として接していないみたいだからね。傍から見てたら家族にしか見えないわよ」
それは凄く嬉しいな。でもジン様は優しいから私達が役に立たないから奴隷として見てくれないのかも知れない。ジン様のお役に立てるようにもっと頑張らないと!
「フーカは頑張り過ぎだって良く言ってるわよ?」
「もっと力抜いた方がいいよ?」
あれ? 頑張ろうと思ったらダメだし!?
それからフィロさんが泊まってくれることになって賑やかな夜になりました。ジン様もお屋敷で楽しんでくれていたらいいけど。




