77話 義父さんと呼んで
「リリカ、ルナのことは内緒で頼む」
「分かりました」
「……普段通りで頼むな」
「う、うむ。分かっておる」
ちょっと言いづらそうにしているけど大丈夫だろうか。
「ふぅ、二人とも無事そうで安心したぞ。先ほどダンジョンが停止したが、やはりジン殿が?」
「ええ。ちょっと落盤に巻き込まれたので、どうせだからリリカの修行がてらに」
「……冗談ではなさそうですな。は、はは。本人から聞くとまた違うものですな」
領主は苦笑しつつ、リリカの様子を確認していた。
「よく見ると二人ともずぶ濡れだな。アイラ、拭くものはあるか?」
「「どうぞ、リリカ様、クジョウ様」」
アイラがリリカに、アイリが俺にタオルをくれたが声は二人とも同じだった。
「ありがとうございます。それで領主様はどうしてこちらに?」
「外の結界が壊されておったのでな。二人が降りた痕跡もあった――」
「結界を壊したのは妾じゃ! ジン様は何も悪くないぞ!」
突然リリカが声を荒らげて皆驚いていたが、
「分かっておる。お前が暴走したのであろう。それをジン殿が止めたがお前は聞かず、落盤に巻き込まれたがジン殿に救って頂き、そのまま下層へ。その後もジン殿に迷惑をかけ続けて今に至るのだろう」
まさに見てきたかのように言う領主だが、
「それで、ジン殿? ここは立ち入り禁止だとジン殿は分かっていたはずです。崩落の危険性もあった。それなのに娘をこんな場所で修行させた真意はどこにあるのですかな?」
「違うぞ! それは妾が!」
「……言い返す言葉もありません。軽い気持ちで行ったことです」
安全性に付いては最悪転移の指輪があったが、それを教えるわけにもいかんしな。娘をこんな所に連れ込んで怒らないわけがないよな。
「覚悟は出来ていると?」
「父上! 違うと言っておろう! ジン様は――」
「リリカ様、申し訳ありませんが、お静かに」
「むがー!」
セバスチャンに布を口に当てられて押さえ込まれているリリカを横目に領主を見る。
「はい。俺の軽率が招いたことです」
国外追放にでもなるかな。死刑とか言われたら転移してフーカ達と別の国に行こう。
「――では、娘を貰ってください」
「てん――、は?」
領主のあまりの眼光に最悪を想像して転移する所だったけど、このおっさん今何て言った?
「娘を嫁に貰ってくれと言っているのです。今後は家族として付き合うこととしましょう」
思わずルナの顔を見てしまったが、ルナも何言ってるんだコイツは。と言いたげな表情だった。
「むがー! セバ離せ! 父上! 何を言っておるのだ!! 妾がジン様の嫁になど成れるわけがなかろう!!」
なって欲しいわけじゃないけど、そうはっきり言われると少しへこむぞ。
「リリカ! お前も貴族の娘なら覚悟を決めよ。ジン殿は必ず大成する。お前――」
「そんなこと分かりきっておるわ!! 妾ではジン様に相応しくないと言っておるのだ! 奴隷ならまだしも、妻など、恥を知れ!!」
いや、お前こそ何言ってんの?
「り、リリカ、どうした? いや、何があった?」
流石に領主も狼狽えているぞ。まぁ、娘がいきなり奴隷OK宣言しているわけだしな。
だけど、ルナのことは言うなよ?
「っ、父上には関係ない! 妾は今後もジン様と共に歩む所存だ! しかし、それについて父上に、ガイアス家に指図されるつもりは毛頭ない!」
「な、なにを。ジン殿、一体娘に何をしたのだ」
「え? 俺は特に何も」
ルナが姿を見せはしたが、俺は特に何もしていないぞ? と言うか、今後も付いて来るとか言ってるんだが。
「父上! 妾はジン様の崇高さをこの目でしかと見た! この身がどれだけの役に立てるかは分からぬが身命をとしてお仕えしたいのじゃ!!」
「――分かった。ジン殿、先ほどの話は忘れて下され。そして不肖の我が娘をジン殿の下で働かせて頂きたい。もちろん私の方で出来る支援は惜しむつもりはない。お願い出来ないであろうか?」
領主に頭下げられて断れんだろう。リリカにはルナのことも教えたし、仕方ないか。
「(ジンの好きにしなさい。もし邪魔になったら追い出せばいいのよ)」
それは酷くないか? でも領主の協力を得られるのは大きいか。
「――分かりました。お嬢さんをお預かりします」
「本当か! でかしたぞ父上! 主様よろしくお頼み申します!」
大喜びでセバスチャンをバシバシ叩いているリリカを見ながら領主が俺の傍に来て、「いつでも手を出して貰って構いませんぞ」と笑いながら言っていた。




