70話 修行中
「ハァァァ! 双頭のアギトォ! ッ! はぁ、はぁ、やはり硬いな」
「リリカ、無理するな! 代わるぞ」
「く、分かったのじゃ」
リリカと交代して鉄熊の前に出る。
リリカは矢の数が残り五本になったので現在は双剣で戦っていた。自分で中々と言うだけあって双剣の扱いも上手く、流れるように二つの刃を扱っていた。
ダンジョンも既に八階層まで進んでおり、この階層から鉄熊が出るようになったのだが、リリカの武器ではその肌を切り裂くことは出来ないでいた。
「そんじゃま、おりゃ、斬・鉄・剣!」
「ベェアァァァ」
フルンティングに魔力を通して切れ味を更に上げ、鉄熊を切り裂くと豆腐でも切っているかのように抵抗なく切断できた。
通常のフルンティングでも十分に斬ることは出来るが、魔力の制御になれる為に練習しているのだ。……とは言ってもルナのお陰で失敗することはないのだけどね。
「(ルナは綻びを整えているだけよ。制御はジンに任せているわ)」
それにしては随分と簡単に出来るんだけどな。才能かな!
「流石じゃな、妾があれだけ切っても傷ぐらいしか付けれなかったのに。一刀両断か」
リリカから素材を受け取り、腰にバックを付けている風を装ってアイテムボックスに入れる。……それなりに入れているんだけど、リリカは疑ってもいないみたいだな。
「武器の性能が違うからな。リリカも強化出来たら良いんだけど」
魔力を武器に纏わせて強化するのは得手不得手があるみたいだ。俺はルナのお陰か何にでも魔力を通すことが出来るのだが、リリカは弓矢にしか出来ないみたいだ。
リリカの話では俺達がやっている魔力による強化方法もあまり知られていないみたいだ。リリカも知識として教えられていたが実際にやったのは今日が初めてだというし、実戦で使っている人物も知らないと言っていた。魔力制御が上手くないと魔力の消耗が激しいのだ。
「何とか矢に込めることはできるのじゃがな。剣には無理そうじゃ、こんなところで練習していては魔力が持たんしな」
リリカは笑っているが、かなり疲れが溜まっていそうだ。ルナの案内でスムーズに降りて来ていたが、既に四時間は経っている。魔物の強さ事態は前回の半日で制覇したダンジョンと同じぐらいだが、リリカの狙撃をメインにしていたことと、俺があまり前に出ないで戦わせていたことで疲弊していた。
「(ルナ、またヒールいいか?)」
「(ええ。魔力には余力があるから大丈夫よ)」
時折ヒールを使って体力を回復させているが、リリカは俺が回復魔法が使えることに驚いていなかった。昨日ミニャに聞いていたみたいだ。
「回復させるぞ? ――ヒール「(ヒール)」」
ルナも慣れたもので俺の声に合わせてヒールを発動させていた。最近は詠唱も放棄しているけど、いいのだろうか?
「(ジンの魔力が上がったから詠唱による消費軽減を考えなくて良くなったのよ。……元々詠唱してなかったから私も詠唱あまり覚えていないんだけどね)」
俺のレベルもかなり上がったからな。フーカも二回のダンジョン制覇でかなり上がっている。
しかし、もう結構な数の魔物を倒しているのにリリカのレベルは1しか上がっていない。弓が原因かとも思ったけど双剣で倒しても全然上がっていないのだ。
「(ジンの場合はヘルトスの使徒だから上がり易く、フーカはジンの奴隷だからその恩恵を受けているのかも知れないわね。普通はこの子ぐらいのペースだと思うわよ)」
なるほど。だから冒険者ギルドに居た冒険者達のレベルが低かったのか。僅か三回のダンジョン制覇でレベルを抜きまくっていたからな。
……待てよ。それならリリカの修行とやらはかなり長引くんじゃないのか? いや、レベルは俺以外認識できていないみたいだから、問題ないのか?
「ジン殿どうした? もう良いのだろう?」
俺が手を当てたまま考え込んでいた為、リリカが振り向き確認してきた。
「あぁ、もう終わってる。すまん考え事していた」
「いや、助かった。これでまだまだ戦えるのじゃ。ジン殿も考え事は家に帰ってからする事だな」
そういやさっきリリカにそんなこと言ったな。俺もグダグダ考えるのは止めないとな。なるようになるだろ。
「それじゃ、考えてるヒマがないようガンガン進んで行くとするか!」
「うむ! それでこそじゃ!」
「(はぁ、油断はしないでね)」
ルナの案内の元、俺達は更に先へと進んで行く。
「旦那様、やはり床が崩れているようです」
「結界は壊れておる。リリカめ、暴走したな。二人は落ちたと思うか?」
結界は部分的に破壊され、全体の機能が停止していた。この結界はガイアスの血に反応する作りになっているので、この壊れ方はガイアス家の血筋の者にしか出来ない事だった。
「もし落ちて居なかったとしたら屋敷に報告ぐらい来るでしょう。流石に結界を壊してそのまま帰るとは思えません」
「そうだな。では二人は下に落ちたと仮定して動くとしよう」
先ずは下に降りて状況を確認したいが、飛び降りるわけにもいかんだろうな。
穴を覗くと二階層分は崩落している。アイラ達ならこの穴から降りることもできるだろうが。
「「ちょっと見て来ましょうか?」」
「いや、待つのだ。ここで戦力を分断するのは得策ではない」
一応穴から二人を呼んでみたが返事はない。この程度なら二人とも大した怪我を負うこともなかったはずだ。
しかし、危険性があった為一時的とはいえダンジョンを封鎖していたのだ。魔力が篭っている可能性が高い。そうなると魔物も強くなっているだろう。
ジン殿ならリリカを守りながら上を目指すはずだ。
「このダンジョンの地図は確か四階層までだったな。二人は上を目指しているだろう。私達は正規のルートを通って下を目指そう」
「「かしこまりました」」




