34話 ルテクの宝玉
「まさか、本当に勝っちゃったの?」
眼前に広がる光景に呆然とするミニャにデュランダルを返した。
正直欲しいが流石に助けてもらった恩人の武器を奪うわけには行かないだろう。
「ジン、大丈夫?」
「ジン様!」
ルナとフーカが駆け寄り俺の身体をペタペタ触って怪我がないか確かめていた。
「大丈夫だ。流石に疲れたけどな」
ミノタウロスが居た場所を眺め居ているとキラリと光る物があった。
「あれは?」
「取ってきますね」
俺の返事も待たずにフーカは地割れの間に入り込み光る何かを持ってきた。
「どうぞ」
「あ、あぁ。ありがとう」
渡されたのは魔石だった。赤と青が螺旋を描いているような模様が入っていたが、それを持った時に俺の神具鑑定が反応した。
【ルテクの宝玉(神)】
え? これって神様が言ってた?
「それ、神具ね。それもかなり危ない系のものよ」
ルナが宝玉を見て眉を寄せていた。確かに持っているだけで変な気分になる。これさえあれば世界を壊すことも容易だと思えるほどに。
「ジン! しっかりしなさい! 意識を持っていかれるわよ!」
「ッ! 今のは? この宝玉のせいか? これマジでヤバイだろ。ルナさっさと送ってくれるか?」
これはこの世界に置いておくには危険すぎるだろ。
「ええ。――天送!」
ルナの声と同時に宝玉から悲鳴の様なものを感じたが、すぐに光となって天に帰って逝った。
「……これで、神様との契約は一つ目完了だな」
ルテクの回収をすればあとは自由に生きていいと言われたしな。まさかこんなに早く手に入るとは思わなかったけど。
「ええ。でもルナはジンのパートナーだからね? 契約は続くからね」
ルナが心配そうな顔で俺を見上げて来るがそんなの当たり前だ。
「当然だ。ルナは俺の家族だろ? 神様との契約が終わったからって帰すもんかよ」
「ふふ、ふふふ、そうよね。うん、もちろん分かってたわよ? ふふふふ」
ルナは嬉しそうに俺の周りを飛び回っていた。
「あの~、全然話についていけないんですけどにゃ」
「あぁ、気にしないでくれ」
「気にするにゃ! 何にゃ、さっきの光は、それにその精霊は! ジンにゃんは使徒なのかにゃ! 世界を守るために神が遣わすって言う伝説の――」
「あ、それ勘違いだ。俺はただの冒険者見習いだ」
そんなわけないにゃー、っと喚くミニャを無視してフーカの方を向く。
フーカは岩に腰掛けて黙って成り行きを見守っていた。改めてその姿を見ると本当にぼろぼろだった。昨日まで戦いと無縁の場所にいた少女なのだ。それが俺のせいでこんな所まで。
「フーカ大丈夫か。歩けるか?」
「あ、ジン様。は、はい大丈夫です。ぁ、ちょっと待ってください。いま、立ちます」
フーカの足はガタガタ震えていた。限界を超えてそれでも俺の為に無理をしていてくれたのだ。
「もう無理はするな。お前はボロボロなんだぞ、俺の魔力が回復するまで我慢しろよ」
俺はフーカの腕を肩に回しヒョイと持ち上げて背中に背負った。
「な、ななな、じ、ジンさま! わた、私は大丈夫です! ジン様こそお怪我を!」
「俺のはもう治ったよ。あぁ、ミニャ、他のヤツにはルナのこと秘密にしてくれ。騒ぎにしたくないからな」
すでにルナはミニャから見えないように姿を隠して俺の肩に乗っているが知られた以上口止めはしておくべきだろう。
「それはいいけど、ジンにゃんが生きてるってことと、ダンジョンを制覇したこと、ミノタウロスを撃破したこと。これだけあれば十分騒ぎになると思うにゃよ? ……それとそっちばかり帰り支度してないで疲れ果てた命の恩人を介抱しようって心意気はないのかにゃ?」
フーカを背負って出口の方を向きつつ、ミニャを一瞥する。
「ボスを倒したのはお前だろう。美味しいところ持って行きやがって。まぁ助かったけど。でも元はといえばお前のせいだろ、いや待て、お前俺達を利用してここまで来たとか言わないよな? いや、あれだけの力があるならそんな回りくどいことする必要ないか。いや、でも裏があるだろ」
「ニャハハ……随分疑われてるにゃね。ギルドに戻って詳しく話すにゃよ。でも言っておくけどこのダンジョンの攻略者はジンにゃんで間違いないにゃよ。私が到着する前にこのダンジョンは機能が止まったにゃ。それに王蟻からは魔石は落ちてないにゃ、さっき落ちてた魔石はボスが落とす魔石だったしそれがボスってことにゃ」
王蟻の亡骸があった場所には特になにも落ちていなかった。
ミニャが「くたびれ儲けにゃー」と嘆いていた。
「おいおい、小僧ども生きてやがるぞ」
ボス部屋を出て少しすると前から冒険者達がやって来ていた。
「わぁー凄いですねぇ」
「俺らでもやっとこさって感じだったんだぜ? 何か怪しくねぇか?」
「……結果が全てだ」
「お、ミニャが珍しく力使い果たしてんじゃん。今のうちに日頃の恨み晴らしておくか?」
「やめなよ、みっともない。男なら全快のミニャを倒しなさいよ」
「……それ、俺に死ねって言ってるよな?」
「にゃははは、プウロいつでも相手になってあげるにゃよ? 死にたくなったら来るといいにゃ」
「勘弁してくれ」
冒険者達の笑い声がダンジョン内に木霊していた。鑑定をすると全員が将校クラスの冒険者で戦いのプロって感じだった。
「いろいろ聞きたいこともあるけど今日はマジで疲れてるんだ。フーカも休ませたいし、さっさとここを脱出したいんだけど?」
「あぁ、そうだね。ここまでのマップは付けているから僕らの後ろをついておいでよ。最短距離でガルドまで案内してあげるよ」
「ま、仕方ねぇか」
「それじゃ行きましょうか。その子は私が背負ってあげてもいいわよ?」
「問題ない。ここまで俺の為に頑張ってくれたんだ。俺が責任を持って連れ帰る」
「じ、ジン様……」
フーカがギュッと俺に抱きついてきた。ちょっと照れくさいがこれも主人の努めだろう。
「全く、見せつけてくれるわね」
「けっ、いい気なもんだぜ。……ミニャ、疲れてんだろ? 俺が背負ってやろうか?」
「ゴメンだにゃ。それじゃ帰りますかにゃ」
冒険者達に先導されながら降りてきた道を戻って行く。途中俺達が拾えなかったドロップアイテムを皆で拾って周り、二割を手間賃で支払い残りは俺の物になった。フーカのバックをアイテムボックスに入れていたので代わりにでっかい布をもらいそれに入れて帰ることになったのだが、結構な重量みたいでフーカを背負ったままそれを持って歩く俺の姿に称賛の声と舌打ちが起こっていた。
そして俺達はダンジョンから脱出した。外はすでに暗くなっており、星が煌く空を見上げて帰って来たんだと笑い合った。




