106話 公開奴隷ショー
広場に戻るとフーカが村人達に囲まれて称賛されている。
魔物から自分達を守った上に、寄生種に一人で立ち向かったことを褒められ、注意され、謝罪されてと大忙しだ。
「フーカ、ちょっといいか?」
声をかけると俺に気付いたフーカが慌てて駆け寄ってきた。
「は、はい。どうかしましたか?」
人の輪から抜け出せて安堵した様子のフーカだけど、やはりその表情には一抹の不安を抱えているみたいだな。寄生種に負けたと言っても普通は一人で立ち向かうものでもないんだけどな。
……こればっかりはフーカ自身に納得してもらうしかないよな。
「あの中にいるのは辛いだろうと思ってな。用があったわけじゃないんだ」
「そうなんですか。いえ、助かりました」
ぎこちなく笑うフーカに声を掛けようとしたら何時の間にか隣に来ていたリムリが首を振って自分の胸を叩いた。私に任せてってことかな? ここはリムリに甘えるか。
なら次は、と。ミサさんに視線を向けると気付いたミサさんが近づいて来た。
「あのジン様? 少しいいですか?」
「はい。どうかしましたか?」
「えっと、ミオ姉さんはもう奴隷にされたんですよね?」
……実妹に向かって貴女の姉は奴隷にしましたって言うのはちょっと気が引けるのだが。
「ええ。ミオはすでにジンの奴隷よ。今日はミオと貴女だけを奴隷にするけど、他の人達もちゃんとするから安心しなさい」
俺が言葉に詰まっているとルナが説明してくれた。
って、ミサさんを奴隷王のスキルで奴隷にするとはまだ決めてないぞ?
「そうでしたか。……それでしたら、私は皆さんの前で奴隷にしていただけませんか? 不安を感じている方も多いので問題がないと言うことを見せてあげたいんです」
良い人だなぁ。あっちの二人に聞かせてやりたいものだ。
「私は検証の為だったので仕方がないかと」
「……音もなく俺の後ろに控えるの止めてくれませんか?」
いつの間にかミオさんが背後に控えていた。
何でこうも気配を消して近づくんだろうか。それに貴女も俺の思考を読むのか。
……リリカはまた地面をなぞっているみたいだな。
「これは失礼しました。ルナ様は気付いていらしたので問題ないと思っておりました。今後は気を付けますね」
……それは今後も俺の背後に控えるって言うことですかね? っと、それよりミサさんの方だったか。
話の流れ的にスキルで奴隷にする感じになっているんだが、どうするかな。
確かに奴隷王で奴隷にした方がメリットはあるけど、デメリットもあるんだよな主に本人に。
「ジン様、私たちのことはお気にされずに。ジン様の奴隷になると決心した時からこの身すべてを捧げる覚悟はできております」
「えぇっと、……はい。私もです」
ミオさんの重い決意にはミサさんも少し戸惑いもあるみたいだ。
いや、それが普通の反応だと思いますよ?
貴女の姉がおかしいと思います!?
はぁ、まずは奴隷王のスキルについて説明しないとな。
「えっと、ミサさん。奴隷にすることについて何ですが――」
現在確認が取れている奴隷王の内容についてミサさんに説明することにした。
ミオさんの時とは違い多少不安そうな表情を浮かべることもあったが、特に否定することはなかった。
「普通の手段で奴隷にすることも出来ます。他の方々はそうするつもりですし、ミサさんの好きな方を選んでくれて構いませんよ」
流石に奴隷王のスキルで皆さんを奴隷にするわけにはいかないからな。奴隷紋のこともあるし。
どうにかして通常のやり方で奴隷にするしかないだろう。
正直奴隷王のスキルが思ったより役に立たなかったのでキツイけど、手助けをするって決めた以上手を尽くすだけだ。
……ドリオラさんに協力してもらえないかな?
後はミニャに、領主だよな。はぁ、気が重い。
「――――私が選んで良いのであれば、ジン様のスキルで奴隷にして下さい」
散々奴隷王のデメリットを説明したつもりだったのだが、しばらく考えていたミサさんが何故か奴隷王のスキルでの奴隷を望む結果に。
大丈夫か? この姉妹?
「本当に良いんですか? 正直おすすめしませんよ? 本当に、これっぽちも」
「ちょっとジン? 何不安煽っているのよ」
「そうですよ。せっかく妹が決心したというの」
……俺がおかしいのか? この世界ではこれは普通のことなのか?
「ご主人様……あきらめよう」
俺の上着の裾を軽く引っ張りながらリムリが首を軽く振っていた。
「あ、あの。別に私は諦めて言っているわけではありませんよ? ジン様のスキルで奴隷になった方がメリットが多いと思っただけですよ? 私の魔力をジン様に渡せるって言うのは大きなメリットですよね。それに絶対に命令に逆らえないということは絶対に裏切らないと言うことです。つまりは絶対の信頼を得られたと言うことです」
まぁ嘘を付くなと言えばすべてを正直に話すだろうしな。
「離れる事ができないと言うことは常にジン様の傍にいて良いってことですし。何か用事がある時はジン様に一言頂けば良いだけですから困りません。緊急事態にはジン様の魔力を頂くことでパワーアップできるならこれ以上頼もしいことはありませんよ」
まぁそう受け取ることもできる、のか?
デメリットが多いと思っていたが受け取り手の気持ち一つで変わるのか。
……選ばせるって言った以上仕方ないか。本人が望んでいるわけだしな。
とは言え、今後は軽々しく使うつもりはないけど。
「了解しました。ミサさんを俺のスキルで奴隷にさせてもらいます。えっと広場でしますか?」
皆の前でって言ってるから広場が良いんだよな? 皆を集めて、……ん?
――村人達を集めて、同じ村の一員であり、村長の妹であり、何の罪もない少女を奴隷にするのか……。
あれ?
俺悪役じゃね?
本当に良いの?
子供たちの前だよ?
「お願いします。皆さんも集まっていると思います」
無垢な笑顔で言われたら断れませんよね。
それから皆さんの前でミサさんを奴隷にしたわけだが、まぁ見た目に変化が起こるわけでも神々しい光が眩くわけでもないからあっさりしたものだ。
衆目に晒された俺が一番動揺していたけど、俺の前で膝を付き安らかに祈りを捧げるミサさんを見て覚悟を決めた。
俺はこの女性の、そして村人達の仮とはいえ主人となるんだ。
ここで見っともない姿は見せられないだろ。
すぐさまスキルを発動した。
口上も何もない。ただ手をミオさんの頭に乗せ、問い掛ける。
「俺を主と認めますか?」
「はい、この身を捧げ、主様に報います」
ミサさんは神に誓うかの如く祈っている。
村人達、ハーフ種にとって精霊神は神そのもの。その神であるルナが仕えていると公言するのが俺だ。ミサさん達にとっては本当に神に仕えるつもりなのかもしれないな。
そして手の平を経由してミサさんの魔力が流れ込んでくる。
これで契約は完了だ。皆の前でやっても特に何も起こらないから、面白くも華やかさもないんだけど。
ま、それでも村人達からは崇められていたけど。
これでミオさんとミサさんの二人は俺の奴隷になった。
この後さらに三十人近くが奴隷になると思うと気が重い。
まぁ奴隷とは名ばかりの保護をしているだけで自給自足で頑張ってもらうつもりだけど。
……ミオさんは分かっているんだよね?
全部伝えているのだが、ニッコリ笑うだけなんだけど。
……大丈夫だよね?




