105話 勝者と敗者
「モテモテね。ジン」
「勘弁して欲しいんだが」
俺とルナが少し離れても二人は言い合いを続けている。話の方向性がちょっとおかしな方に行っているので俺は聞かない方が良さそうだ。
「でも、ミオをスキルで奴隷にするは賛成よ。ついでだからミサもスキルで奴隷にした方が良いわね」
「ルナまで何言ってんだ? 流石にまずいだろう。奴隷側には本当に拒否権ないんだぞ? フーカ達だって本当に嫌なら拒否することぐらいできるのにミオさんはそれを拒否する前に体が実行してしまうんだぞ?」
まだ検証したわけじゃないからはっきりとは分からないけど、たぶん意思の力で拒否とかしたら体に凄まじいダメージが行くはずだ。それ以前に意思でどうにかなるとも思えんけど。
「大丈夫よ。だってジンが主なんだから。ジンがそういう命令をしなければ良いだけでしょ? それで考えたら二人を奴隷にすることに意味があるのよ? ジンへの魔力供給があるんだから二人が魔力を温存していたらダンジョン内にいても安定して魔力供給が受けられるわ。それに万が一の場合にも二人から強制徴収をすることができるから二人分の魔力がストックできるのよ」
ルナが広場に集まっている村人達をチェックした所、村人の中で魔力が多いのはミオさんとミサさんの二人らしい。二人以外は魔力が少ないみたいだ。
「言っておくけど今のジンの魔力は結構凄いわよ? ヘルトスのせいだと思うけどかなり異常な成長しているわよ。ガルドの街で見た魔法師の十人分以上の魔力量よ」
そうなのか。ルナによるとこれまで見てきた中で一番魔力が多かったのはミニャだったけど、それも既に抜いているらしい。……アオイ? いやいや人外は別ですから。
今の俺は自分の魔力の他にリリカの魔力が合わさっている。そしてミオさんの魔力が定期的に流れて来るだろうから魔力の回復速度も通常の倍以上になるわけだ。ここに更にミサさんを繋げたら確かに凄まじいことになりそうだ。
「魔力量はデカいけど、ただ使う魔力量も多いってことか。光の盾も消費量ヤバいからな。確かに二人から安定して魔力が送られて来るなら助かるけど」
「それでしたら、ぜひ妹もジン様のお力で奴隷にして下さい」
「うおッ! ビックリした。あれ? リリカと言い合いをしてたんじゃ?」
いつの間にかミオさんが隣に控えていた。リリカを探すと隅の方に座り込んで地面を指でなぞっている。……何しているんだ?
「ジン様が離れられたので、リリカ様との不毛な論議は早々に決着を付けさせて頂きました」
……リリカのヤツ言い負かされて落ち込んでいるのか。
「出来れば仲良くして頂きたいのですが……」
「もちろんです。共にジン様にお仕えするのですから」
良い笑顔で言われても背後に映るリリカの姿で台無しだな。
「……まぁいいか。それより一つ試させて欲しいんですけど――」
「どうぞ」
最後まで言わせて貰えないのだが。
「……魔力の強制徴収を行った時の負担を知りたいので、試させてもらいますね」
許可はもうもらったし試させてもらおう。触れる必要はないよな。意識を向けるだけで良さそうだな。とりあえず半分ぐらいで。
「ッ、これは、ちょっと、ゾクゾクしますね。魔力を吸われているって感覚が、あります」
「大丈夫ですか? 止めますか?」
一応意識してゆっくり頂いていたのだが、逆効果だったか? 魔力充填の時は特に何も感じないで魔力のやり取りができるんだけどな。
「だ、大丈夫です。ですが、できれば、一思いに、ヤッてください」
体を震わせながら乱れた呼吸で懇願されてしまったのだが……さっさと終わらせよう。
「ッッ! はぁ、はぁ、お、終わりましたか?」
一思いにと一気に吸い取ったのだが、顔を赤くして息の乱れた、潤んだ瞳の美女がそこにいました。
「っと、はい、終わりました。――って取り過ぎました。すみません!」
魔力量を調べるのに鑑定をして分かったけど、かなりギリギリまで吸い取ってしまっていた。
息が乱れているのは魔力枯渇による疲労か。
「やっぱりジンは魔力の操作が下手ね。そんなに急激に奪ったら昏倒するわよ」
「私は大丈夫です。この程度で、ぁ」
「おっと、大丈夫ですか?」
足を縺れさせたミオさんを抱き留め、そのまま支えてあげる。
かなり無理をさせたみたいだな。これは使う時は慎重にしないと。
……肉体的ダメージはないみたいだな。単純に魔力を吸収するだけみたいだから使い勝手はいいな。
「ズルいぞ、主様! 妾のも奪うのじゃ!!」
ミオさんを支えていると復活したリリカが駆け寄って来た。
「リリカのは既に奪っている。むしろ俺が渡しているだろう」
リリカの魔力は全て俺に流れて来ているのにこれ以上何を奪えと言うのだろうか?
「ぬぬぬ、それなら妾も奴隷にして欲しいのじゃ!」
「お前とは昨日契約しただろうが!!」
せっかく奴隷にならなくても済むように契約を交わしたのに、何でコイツは奴隷になりたがるんだ?
「なるほど。ジン様、リリカ様のお相手は私が。ジン様はフーカさんとミサのところへ行ってあげて下さい」
俺の腕から離れリリカの方へ進むミオさんにリリカが怯んだ表情で後ずさっている。……上下関係が確定したみたいだな。
ミオさんに言われて広場にいるフーカの方を見ると村人達に囲まれて称賛されているみたいだ。ミサさんはそんなフーカを見守りつつこちらをチラチラと心配そうに見ている。自分の姉が奴隷になろうとしているんだから心配だよな。もう終わってるけど。
フーカも褒められるのに慣れていないから困っているみたいだし、それに寄生種に負けたと思っているフーカにあの称賛はキツイだろうな。助けに行くか。
「……それでは任せます」
「主様ッ!?!?」
絶望の表情を浮かべるリリカから視線を逸らしてフーカのいる広場へと向かうことにする。




