103話 何で脱ぐの!?
「――凄い」
フルンティングを収納してボス狼の亡骸を一瞥していると後ろからポツリとミオさんの称賛のお言葉。そして村人から歓声があがった。
「すげぇ!! まさかこんなに強かったんなんて!」
「凄いです! ジン様!」
「流石は精霊神様がお認めになられたお方です!」
口々に賞賛されるが自分でも本当に上手くいったものだと思う。最後に切裂いた感じからいってこの寄生種は弱かったわけじゃないと思う。たぶんフルンティングじゃなかったらもっと手こずっていたと思うし、光の盾がなかったら壁に押し付けて動きを止める何て真似は出来なかっただろう。
マジで光の盾様々だな。これ使い勝手良すぎだよ。最強の矛と最強の盾が揃ったみたいなもんだな。
「ご主人様! すっごく凄かった!!」
「流石は妾の主様じゃな。鮮やかな手並みじゃった」
「はい。凄かったです。私ももっと頑張らなくてはいけません」
「ふふふ、上手くいったわね。カッコ良かったわよ」
は、ははは。何か照れるな。偶々上手くいっただけなんだけど。って、それより、
「フーカ、怪我は大丈夫か?」
「少し痺れていますが、我慢出来ないほどではありません」
「ミサさん、魔力を頂きたいんですけど、いいですか?」
一応寄生種を倒して魔力吸収のスキルのおかげで多少は回復しているけど、全然足りないからな。
ミオさんはまだ回復していないだろうし、リムリも村の人達にヒーリングを使っていたから魔力は余り残っていない。リリカの魔力は俺に繋がっているから取れないし、フーカはそもそも魔力量が少ない。この中ならミサさんが一番魔力があるだろう。
それでも足りないなら村人全員から少しずつ回収しよう。
「もちろんです。全部使って下さい」
流石に全部取ったら倒れますよ。そう言えば最初に盗賊と戦った時もミサさんから魔力貰ったな。あの時はルナが無理をして回収したらしいけど、今回は魔力充填のスキルで無駄なく回収できる。
ミサさんが差し出してくれた手を握って魔力を俺に移し替える。おおよその魔力量は握っていると分かるけど、思ったよりミサさんの魔力量は多いな。リムリやリリカより多いし、普通の魔術師より多いんじゃないかな?
「よし、ありがとうございます。ルナ、頼む」
「了解。癒せ精霊の息吹、リカバリー」
ルナの治癒の光が当たりフーカの傷がすぐに塞がっていく。フーカの表情が柔らかくなったし、相当我慢していたな。全く、無茶し過ぎだ。
「フーカ問題はないか?」
腕を回したり軽く振ったりしているから問題はないみたいだな。
「はい。綺麗に治っています。ありがとうございます」
一通り動作を確認してから嬉しそうに駆け寄って来たので頭を撫でる。
そしてふと広場に視線を向けると村人達が膝を付いて拝んでいた。
「…………えーと? 皆さん? 何で拝んでいるんですかね?」
「ご主人様とルナっちがフーちゃんの怪我を治したからでしょ? 私じゃ応急処置程度だったからね」
……さっきから結構使っているよね。そんな何度も拝まれるものなのか?
いや、精霊神であるルナが癒したからか?
「ルナの功績はジンのものだって言ってるでしょ」
「……何も言ってないぞ?」
「言わなくても分かるもの。それにルナ一人に押し付けるのやめなさいよ?」
……偉いのはルナだよ? 俺何もしてないし。そういう訳で拝まれるのはルナに任せる!
「ダメに決まっているでしょ? ルナとジンは一心同体なんだからジンも受け持ちなさい!」
「何も言ってないだろ!? というか普通に思考に返答するなよ!?」
ルナと漫才みたいなことしていると治療の邪魔にならないように離れていたミオさんが近付いて来た。
そう言えば奴隷の話をしている最中だったな。
「ジン様、まさか寄生種をこれほど容易く倒せる程の実力を持っていたとは思いませんでした。先ほどの戦いで村人達の心も一つになったでしょう。改めて私達の主としてお仕えさせて頂きたく――」
「あー、そういうのいいですから。俺がするのは皆さんを奴隷にする事です。先ほども言いましたが感謝されたいとは思っていません」
何故か俺にまでルナ並みに敬意を払われている気がするな。正直止めて欲しい。俺はただの一般人だぞ? 敬うならルナ一人にしてくれよ。
……はぁ、邪魔が入ったけどさっきの続きといくか。まずは奴隷王のスキルを試す必要があるよな。村人全員を奴隷に出来ないなら別の手段を考える必要があるし。
えっと、奴隷王のスキルで奴隷にするには対象の同意と対象に触れる事が条件だな。
……一列に並ばせて一人一人奴隷にしていくのか? ……マジで?
いや、待て。それより簡単に奴隷にするって言ってしまったが、本当にいいのだろうか? 奴隷に出来る人数とか、この国の法律に引っ掛かることはないんだよな?
「……リリカ、ちょっといいか。ミオさんはちょっと待っててください」
「うん? なんじゃ?」
俺が考え込んでいるせいで困惑しているミオさんを放置してリリカを連れて広場を少し離れる。
「俺のスキルに対象の同意があれば奴隷にする事が出来るものがあるんだが、このスキルで皆を奴隷にして問題があるか? この国の法律とか規定とか」
「…………まず、そんなスキルがあることに驚きなのじゃが……。まぁ、主様じゃし、そんなものか」
それで納得するのかよ。……まぁ、自分でも大概だと思うが。
「皆を奴隷にすること自体には問題ないと思うが、……奴隷の印や制約などはどうなのじゃ? 奴隷紋が無ければ要らぬ争い毎が起こるやも知れんぞ?」
そうか。奴隷紋がないハーフ種が生活していれば売り払おうって思うヤツが現れる可能性もあるのか。……とりあえず試してみるか。
「ミオさん、ちょっと良いですか?」
「はい。……どうしましたか?」
こちらを心配そうに見ていたミオさんを手招きして広場の端に呼んだ。
「えーと、これからまずミオさんを俺の奴隷にしようかと思います。俺のスキルによるものなのですが、俺自身始めて使うので実験体になってくれますか?」
……実験体はなかったか。被検体? ……あんまり変わらんか。
「はい。もちろん構いません。例え死ぬことになってもジン様を恨むことはありません。どうぞ思う存分お試し下さい」
重いよ!? え、死ぬことないよね? ――うん。間違いなくそんなことはないはずだ。間違いなく奴隷になるだけだ。ただその課程が知りたいだけだから。
「そんなことはありえませんよ。ただスキルに寄るものなので奴隷になった人に奴隷紋や制約が正しく発動するかを知りたいだけです」
本当は奴隷紋と制約は無いなら無いでいいんだけど、もし確認された時に奴隷紋が無くて俺の奴隷扱いされなかった時がヤバいからな。
「もちろん構いません。どうぞ」
ミオさんはサッと背中を見せて跪いた。そして上着をずらしてその綺麗な肌をさらした。……さらした? ……え? ッ!? 何で脱ぐの!?
「ちょ、ミオさん!? 何で脱いでいるんですか!」
「え? ですが、奴隷紋を刻むのであれば背中を見せなくてはいけないのではないのですか?」
そうなの? 確かにフーカとリムリの時は背中に手を当てたけど。まさか全員そうするのか? って、広場にいる村人達がチラチラこっち見てるんだけど!?
「ミオさん、ちょっとこっちにいいですか」
ミオさんを連れて広場から見えないように家の影へ。半裸の女性を物陰へ……さっきより状況悪くない? いや、リリカもいるし大丈夫でしょ。
「えっと、ジン様、私は、その、どうしたらいいのでしょう?」
肌蹴た服を胸の前で抑え潤んだ瞳でこちらを見る美女がそこにいた。
「ッ、いや、と、とりあえず服を着てください。まずはスキルを試すだけなので」
「は、はい。失礼しました」
「……主様はあの様な仕草に弱いのか?」
「……後でお説教ね」
なにやら背後で不穏なやり取りが聞こえてくるのだが、きっと気のせいだよな。




