102話 強くなりました。
急いで村に戻って来るとまだ戦っている最中みたいだった。
『これで終わりじゃ! ――疾風、隼!』
リリカの声が遠くに聞こえたと思ったらその後に村人達の歓声が上がっていた。
「どうやら問題なく片付いているみたいだな」
「ええ。……あ、フーカも戦っているみたいね。――ん? フーカの近くに何か……」
歓声に耳を傾けながら広場を目指して走っていると気配を探っていたルナが眉を歪めた。
「どうした?」
「これ――ッ! まずいわよ! フーカの相手は寄生種よ!」
ルナの声に遅れて、
『フーちゃん!!』
『ッ! フーカ!!』
リムリとリリカの焦った声が聞こえた。
思い浮かべるのはミニャが倒した王蟻の姿。流石にあのレベルの寄生種が相手ではフーカ達ではどうしようもないだろう。
民家の角を曲がり広場へ続く通りに出ると大型の狼とその周りに五匹の狼、そして――囲まれるようにフーカの姿があった。
左腕を抑えて、膝を付いたフーカへ狼達が今まさに飛び掛ろうとしていた。
「俺の家族になにやってんだッ!!!!」
距離はまだ三十メートルはあるが腕を前に出す。
ルナは俺のやろうとしていることを察してすぐさま魔力の制御を始めくれた。
残りの魔力は殆どないけど、ルナが制御してくれるなら!
「届けよ――ドーム!!」
俺の声とほぼ同時に五匹の狼がフーカへ覆い被さるように飛びかかった、が。
「ッ! ……え? これは?」
フーカが身構えるが狼達はフーカに触れることは出来なかった。
フーカの周囲に薄らと光の膜が覆っていた。距離があったからかそこら中に小さな穴があり不完全なものだったが狼達の爪がフーカに届くことはない。最も距離が離れすぎている為、ルナが制御しているにも関わらず数秒と持ちそうになかった。しかし、
「――数秒もいらないからな」
ドームを発動し、そのまま一直線に飛ぶように地面を蹴り、すぐさまフーカの元へたどり着いた。
そしてフルンティングで障壁にくっついている狼を切断してドームを解いた。
「フーカ大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます」
左腕を怪我しているみたいだが、今の障壁で魔力がほぼ空になってしまった。
魔力が回復するまで我慢してもらうしかないか。リムリとリリカが駆け寄っているし、後は任せよう。
ボスらしき大型の寄生種は俺が飛ぶと同時に後ろに下がり距離を取って警戒していた。
「ジン様、その魔物は先ほどの一回り小さい狼を生み出すことが出来るみたいです」
「そういうことね。気配が減ったり増えたりしていたからおかしいと思ったのよ」
フーカの言にルナが納得していた。確かにあの程度の相手にフーカが負けるとは思えないしな。最も、
「こいつは中々強そうだけど」
迷宮のボスを超える威圧感だな。鑑定は出来ないけど、王蟻よりは弱そうかな?
流石にフーカ一人ではキツいだろうな。
……俺、魔力ないけど大丈夫か?
「ガアオォォォ!!」
考えている暇もなく、ボス狼が突撃してくる。
振りかぶられる爪に左手を前に出し、光の盾を発動させる。
ガキンッ! と音を鳴らし手の前に出現させた光の盾、シールドで防ぐ。
少し小さめにして強度を上げている。この程度なら魔力も使わないから盾としては十分に使えるな。
ボス狼の背後から二匹の狼が現れ左右に分かれて飛び掛かって来たが、フルンティングで右の狼を切断し、左側の狼は一度シールドで受け止め、ボス狼ごとフルンティングで横薙ぎに振り切るが、ボス狼はバックステップで下がられ躱されてしまった。
左の狼を切断して、ボス狼へ一歩踏み出すと更に四体の狼が生み出され突撃してきた。
「いい感じに邪魔だな! けど、この程度じゃ足止めにもならないぞ!」
一斉に飛びかかってくる狼達を目くらましにボス狼は物陰に逃げ込んだ。
見失うと流石にヤバイか。…………後で謝ろう。
「――虚空連撃!!」
四体の狼も含めてボス狼が逃げ込んだ物陰に虚空切りを叩き込む。
ドガガガガガッ! と建物が倒壊する爆音が響き渡る中、飛びかかって来ていた狼達はズタズタに切り裂かれて地に倒れ、ボス狼も俊敏な動きで躱そうとしていたが、物陰にいたせいで上手く動けず数発の手応えがあった。
「ガアオォウウウゥゥ! ガアァア!!」
歯を剥き出しにして怒りをあらわにしたボス狼が突撃して来るが、先ほどの斬撃で大分動きが鈍っているみたいだ。
虚空切りを放ちボス狼が避けて体勢が崩れた所をシールドを広げて近くにある家に押し付けて押さえ込んだ。
「ガッ、ガアオォォォ!!!」
かなりの力で暴れて逃げ出そうとするが、力の指輪があるから少しの間押さえつけるぐらいのことはできる。そして、その僅かな時間さえあれば、
「終わりだ」
シールドの隙間からフルンティングを突き刺し、シールドを解除するのと同時にフルンティングを切り上げボス狼の上半身を真っ二つに切断した。




