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忘却記  作者: ラム
1/1

奔放少女

初めまして。

処女作&見切り発車&亀更新です。どうぞ、生暖かい目で見守って頂けたら幸いです|°͈ω°͈)ノ

感想、批評、批判、なんでもいいので良かっら下さいm(_ _)m

 

  誰も知らない歴史を綴ろう。

  滅びた国の王子のため。滅ぼした国の王のため。王殺しの王のため。

  彼らが国のため、民のため墓場まで持っていった秘密を明かそう。彼等の想いをを、願いを後世に伝えよう。歴史は絶えず進み続ける。停滞などありはしない。

それでも俺は願う。一瞬でも長く続く平和を。

彼等を知り、最も遠くにいた存在として。


  五八七年、名君と言われた王が死に、この国ホノロス王国に最後の王が即位した。名君と呼ぶには程遠く、愚王と呼ぶには賢い、あまりにも中途半端な王だった。

それが悲劇の始まり……。

 ————


  眠り姫と書かれた看板を釣り下げた建物の中、体格のいい鍛えられ上げられた筋肉を持つ三十半ばの男が、十五過ぎの少年に必死で交渉していた。


「よく見ろエルド、百万リジェだぞ?こんなに美味しい依頼はめったにない。それをお前はドブに捨てるというのか?お前をそんな馬鹿な男に育てた覚えはないぞ」


「はぁ?俺の方こそヴィムさんのような頭のイかれたマスターに育てられた覚えはありませんよ。文字読めます?読めますよね?依頼内容理解できますよね?俺が女嫌いなの知っててなんで俺に言うんですか?」


エルドにとっても百万リジェはとても魅力的なのはわかる。信用で、きる仲介屋からの依頼だから、依頼人が貴族とはいえ踏み倒される心配もないだろう。


「お前ならできる。お前にしかできない。ベルック伯も大変お困りだから、こんな大金の依頼を出したんだろうよ。そんな困っている方を是非ともお助けしようじゃないか」


ヴィムは口では親切なことを言ってはいるが、大金に目がくらんでいるのは一目散だ。


「嫌ですよ。そんなにその依頼がやりたいのなら、ほかの人に頼んで下さい。というか、自分でやればいいでしょ?」


それは奇妙な依頼だった。結婚間近の伯爵の孫娘が村の男との恋に夢中になってしまった為、なんとか引き離して欲しいというものだ。


「ベルック伯の孫娘は美形好きだそうだ。な?お前ほどの顔があれば簡単だろ?それに俺は死んだ嫁さんを裏切れん」


ベルック伯の気持ちもわからなくはないが、なんともゲスい依頼である。


「じゃあ、ザノに言ってくださいよ。信頼できる息子でしょ?きっとこの依頼を成功させてくれますよ」


「あいつじゃ駄目だ。俺の嫁さんはとびきり美人だったが、俺のせいでそんなに顔はよくない。残念だったな、エルド前が行け。俺はお前以上に顔のいい奴を知らん」


エルドにとって、この依頼は嫌ではなく無理なのだ。おそらく伯爵の孫娘にを口説き落として、捨てればいいだけのことだ。エルドは自分が優れた容姿だという自覚はある。だが前提としての女を口説くということに無理があった。女嫌いなのだ。むしろ女性恐怖症といってもいい程だ。


「女を口説くなんて真っ平ごめんです」

「まあそう言うなって。それにお前実はどっかの貴族の出だろ?貴族を相手にする以上、作法とかを心得ているお前が最適なんだよ」


エルドは三年前にここに来てから、自分の生まれについては一切話したことがないが、貴族の出だということは半ば公然の話となっていた。作法や教養、言葉の端々から気づかれたのだろう。頑なに否定しているため、多くは聞かれずどこの家かまでは知られていないのが、せめてもの救いだ。


「成功したら、報酬の半分お前にやる」

ここ眠り姫では、基本的に報酬は共有財産として管理される。もちろん稼いだ人に再分配されるわけだが、生活費とお小遣い程度だ。だが、今回は半額の50万リジェ。エルドにとって破格の収入となる。


「八割ならいいですよ」

思わず、お金に惹かれて言ってしまった。

「けっ、足元見やがって。六割だ」

「七割」

「六割だ」

「六割五分、それ以上は下げません」

「わかった、六割五分だ。その代りザノを連れて行け」


息子に貴族相手の依頼を経験させておく為だろう。未来の眠り姫のマスターとして貴族と顔合わせをさせておきたいのかもしれない。


「わかりました。依頼が出されてからけっこう経ちますね」

「ああ、結婚間近と言うことは時間もないだろ。ケケ、ザノはどこへ言った?」


ヴィムは、椅子で新聞を読んでいたケケという男に話しかける。ヴィムとは対照的な小柄で細身の二十歳過ぎの男だ。ザノとはヴィムの息子で、エルドの二つ下、今年15になった少年だ。


「今日はグレイリーさんのところに行くって言ってたよ、帰ってくるのは夕方だろうね」

ケケは壁に掛けられた時計に目を移した。時計の針は二時の少し前を指している。


「エルド、お前急げば今日中にベルック領まで着けるか?」

「天馬貸してもらえれば、行けますよ」

天馬とは特殊な馬の一種で、風精霊の加護を持つ。そのため、移動手段としては最速だ。


「わかった、クリシュ貸してやる。お前のことだから大丈夫だとは思うが、貴族を敵に回すようなことはするなよ」

エルドは、はいはいと頷きながら荷物をまとめて出発の準備をした。


若干の後悔をしつつ。

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