宇宙人
「はじめまして。大阪から来ました、青山まいです。よろしくお願いします」
転校生は大阪からやってきたらしい。
大阪といえば「お笑い」「たこ焼き」そのくらいのイメージしか出てこない。私は昔からあまりテレビを観ないからだと思う。
私の住んでいる町は、関東地方の隅っこで、本当に小さな小さな町。
住人なんて、ほんの200人しかいない。その内、この北岡中学には三学年で60人しかおらず、私の三年一組には20人しかいない。と言っても三年は一クラスしかないんだけど。
こんな小さな町に、都会から転校生・・・
「おい上田!」
「え・・・」
「なにボーっとしてんだ。人の話を聞け」
私は顔を赤くした。クラス中の視線が私に刺さる。
先生の声が全く聞こえてなかった。
「ハァ。もう一回言うぞ。お前は青山と出席番号が前後だ。色々教えてやってくれ」
「え!」
「・・・なんだその顔は。嫌なのか」
「別に・・・そういう訳じゃ・・・」
そういう訳じゃないんだけど・・・なんていうか、この転校生、ちょっと怖い。
顔もキツめだし、なんといってもクスリとも笑わなくてちょっと不気味。
「上田?」
「あー・・・はい。やります」
「青山の席は上田の前な」と先生から説明をうけ、転校生は私の前で止まり、右手を差し出した。
「これからよろしく頼むで。上田サン?」
ニヤッと笑った。
「あー・・・はい。」
あまり聞きなれない“大阪弁”と、ニヤリと左の口角を上げて笑う青山さんを見て、まるで宇宙人みたいだとぼんやり思った。
私は、この宇宙人とはたしてうまくやっていけるのだろうか。
一抹の不安を抱いたと同時にチャイムが鳴った。