続・婚約者を寝取られましたが、案外平気です
前作が私の思った以上に好評だったので、続編を書きました。
王子はフルボッコです。
さて、王城を出てきたわけだが問題が発生した。
「足が圧倒的に足りない…」
私と父が登城した時に使ったのが4頭立ての馬車。それを御者が引いてきた。
それに対して、城から後ろをついてきた者が、宰相、魔術師長、薬学長、筆頭騎士、近衛兵の副隊長以下5名、うちの領内の貴族4名、メイド2名、料理長、隠密、魔道具開発の第一人者と私と父を入れて20名。
貴族の方が馬を1人一頭ずつ持っているのを入れて、馬が8頭しかいない。
「とりあえず、馬車は馬を外して異空間に収納しておくから」
御者が気を利かせて、馬車を収納する。
装飾が重いので、馬が最低でも4頭必要な馬車は役に立たない。
「私は走って領地に帰っても問題ないぞ?」
堅苦しい正装の上着を御者に収納してもらって準備運動する父。
「だとしても、馬を2人乗りにできるように組み合わせないと」
馬を操ることが出来るのは、皆出来る。
が、長距離の移動となるので体力のある者に操らせなければならない。
父は走る馬並みの速さで走れるが、他にそれがで出来そうな者は筆頭騎士位だ。
どうしても、あと2名は馬に乗れない。
「お嬢、俺も走れると思う」
名乗り出てくれたのは、近衛兵の中でも異色だった狼族のベルクだった。
彼は奴隷にされそうな所を逃げ出して倒れていたのを拾ったもので、獣人だから近衛兵の長になれなかったが、一番持久力に優れた存在だった。
これで後1名となった時にもう1人手を挙げた。
「私は馬に乗らなくても大丈夫よ」
魔道具開発の第一人者である彼女は異空間から大きな何かを出した。
「それは…‼︎サヤカさん、ついに開発できたのですね‼︎」
「ええそうよ!バイクの再現がついに出来たのよ、タケルくん」
御者とはいたっちをした彼女は異世界転生をしたらしく、タケルに至っては異世界召喚された元勇者である。
他にも隠密と薬学長、魔術師長が異世界出身で、ちーととやらを貰っているらしい。
ばいく?とやらは2名のれるらしく、あとは組み合わせだ。
貴族は馬で駆ける事が出来ないし、メイドも出来ない。
そう思っていたが、各自勝手に2人組になって乗馬していく。
馬には薬学長の作った栄養剤を飲ませて、途轍もなく元気だ。
結局、父と筆頭騎士、狼族のベルクが走り、
ばいくが魔道具開発のサヤカとメイド。
馬に近衛の4名と貴族の4名、女性の薬学長とメイド、魔術師長と隠密、宰相と料理長、私となった。
「んじゃあ、さっさとこんな所からおさらばしようか‼︎」
城門を魔術師長が魔術で吹き飛ばし、私達は城から去った。
第二王子side
宰相らが去った後、国外の祭典に参加していた父上と、お祖父様が帰国した。
アンナは母上と仲良くお茶会をしている。
「おかえりなさいませ、父上、お祖父様」
帰国の挨拶をしに王の間に向かうと、肩を怒らせたお祖父様と、困った顔の父上がいた。
「やらかしてくれたな、セイディよ」
「…?何をでしょうか?」
父上の言葉に困惑する。
「お前が婚約破棄した彼女だよ」
「城の優秀な人材が一気に居なくなったから、業務が成り立たなくなったのだ。さらにかの領地が独立する事になったという意味を分かっておるのか」
お祖父様が仰るが、たかが一領地だ。国の土地は減るが、問題は無いはずである。
「この馬鹿者が‼︎かの公爵は魔族を単騎で倒せる強者、そして連れて行かれた宰相は国外の貿易やらを担っておったのだぞ‼︎他にも我が国に最先端の技術をもたらしていたものがゴッソリ居なくなったのだ。これで国の資金繰りが大変になるというのに、お前が新たに婚約者としたのは只の平民の女。しかも浪費癖があるときた」
「そんな大袈裟な…」
笑い飛ばそうとしたが真面目な顔でこちらを見る父上に、笑えない。
「悪いが、お前の王位継承権は剥奪させてもらう。これは、お前を支持していた貴族共も納得している」
「そんな……馬鹿な」
「残念ながら、これは決定だ」
今第一王子のシルグスを捜索している。
あれは愛するものと結婚したいからと言って行方を眩ませたが、相手は平民ではなく男爵令嬢だ。お前よりかは幾分かマシだし、頭も切れる。
そういったお祖父様の言葉が頭の中から離れない。
一体、何を間違えてしまったのだろうか……
「どうしたの?セイディ」
「母上…」
お茶会をしていた母上とアンナの元に報告しておこう。
「俺はどうやら間違えたらしい。………王位継承権を剥奪された」
「なんですって⁉︎」
母上とアンナが驚きに目を見開く。
「じゃあ、シルグスが王になるというの⁉︎あんな側室の子供如きが‼︎」
「嘘よ…だって私が王妃になるんだもの……こんなのありえない、ありえない」
激昂する母上は、持っていた扇子をティーテーブルに叩きつけた。
「セイディ、やりなさい」
「?何をです?」
「王を、先王を暗殺しなさいと言っているのよ‼︎毒でも事故死でもいいわ、一刻も早くよ」
私の矜持が許さないわ、という母上は鬼女のようであった。
しかし……。
「王妃様、その言葉はあなたの身を滅ぼすことになります」
母上に仕えていたメイドは、先ほどまでの会話を王に入れていた。
母上は反逆罪で、牢に幽閉される余生を送る事になった。
もう俺の見方はアンナしかいないと思い、アンナの部屋に入る。
ノックもしなかったが、いずれ結婚するのだ。それぐらい良いであろう。
「アンナ…もう俺にはお前しか………」
「きゃっ。なんでセイディが⁉︎」
アンナの部屋にはアンナともう1人いた。
「なぜ貴様がこの部屋に入っている」
そいつは俺の学生時代からのライバル、近衛兵隊長ギルマンがいた。
しかも、抱き合った姿勢だ。
「なぜって、この女に誘われたんだが?」
ケロっというギルマンを殴り、アンナに詰め寄る。
「アンナ、本当なのか?お前はあいつの言っていたように複数の人間と関わりを持っているのか」
たのむ。
否定してくれ。
しかしその願いは叶わなかった。
「そうよ?義姉の言った事は真実だし、どうやら誰かの子供がいるみたいだったのよね〜。まぁ、堕ろしちゃったけど」
基本的に子供を堕ろすのは、重罪である。
無理矢理された場合と、娼婦は早期に申請すれば、堕ろすことが一度だけ出来る。
アンナは、そんな事も知らないのか。
「私が好きだったのは王様になれる王子様だったの。今のあなたじゃ私には役不足だわ」
とても可愛かった顔を嘲りに色を染めたアンナは、とても醜悪で魔族に見えた。
「………もう、疲れた。アンナニーナ、子供を堕ろす事は重罪だ。おとなしく、誰かが身元引き受け人になるのを待つんだな」
「え?ちょっと待ってよ、そんなの聞いてない!セイディ、あなた第二王子じゃないの。どうにかしてちょうだい」
俺はアンナニーナに背を向けて歩き出した。
これからではもう遅い事も多くあるが、やり直そう。
只のセイディとして。
日間ランキングで20位代、短編では2位と、評価してくださってありがとうございます。
チート感が余り無かったのでまた、別視点で書くかもしれません。
誤字修正しました
ご指摘ありがとうございます