遺してくれたもの
雨が遺してくれたのは
薄暈けた庭の片隅の
しっとり膨れた軟い泥濘
晴れ間雲間の隙間から
差し照らす目映さが
誘う清かな息つく間
君が遺してくれたのは
白茶けた壁の片隅の
ぽっかり浮かんだ苦い焦跡
破れた襖の軋みから
舞い戻る寂しさが
おとなう幽かな息つく間
夜が遺してくれたのは
満ちかけた月の片隅の
おっとり揺らいだ淡い星影
割れた煉瓦の欠片から
吹き翳る侘しさが
宛がう僅かな息つく間
時が遺してくれたのは
落ち込んだ崖の片隅の
ふっつり途切れた暗い隧道
熔けた記憶の遺灰から
燃え尽きる優しさが
揺蕩う確かな息つく間