前編 モノローグ
この小説は2部構成で前編はバトル少なめだと思います。
後編はシリアスになる予定です。
ガブッ、ムシャムシャ
「やはり最高じゃな。のう、じぃや。」
「それはそれは。それはようございました。」
西洋風の屋敷の中。いかにも金持ちという感じの朝食風景。
真っ白なクロスの上には、朝の光に照らされ、白く光る銀食器が並べられている。テーブルの中央には1メートルほどの大きな肉の塊がおかれている。この家の主は、今その肉の切れ端を食べている。
「うむ、やはりうまいのぉ。
人の子は。」
目の前に、骨まで見えている人肉がありながら、平然とその肉を食べている。
犬歯をむき出しにし、口の端から唾液をこぼしながら、かぶりつくその姿はまさに
悪魔。
コトンッ。
骨までしゃぶりつくし、一息つく主。
「じぃや、最近悪魔狩りがはやっているそうじゃな。」
「はい。一昨日も奴隷の何人かがやられております。ですが、もはやあとかたもなく灰のみが残っておりました」
そのようなことを言われても全く動じない主。
「そうか。そのような輩さっさと見つけ出して殺してしまえ。さもなくば貴様の首をとばすぞ。」
「はっ、お任せください。」
一瞬、顔を引きつらせた執事。いや微笑んだかのようにもみえた。
部屋から出て行こうとした執事は何かを思い出したかのように振り返った。
「あぁ、ひとつ言い忘れておりました。」
「あぁ?なんじゃ?」
また執事は薄く微笑み、
「その輩・・・顔を変えられるそうですぞ。」
執事の顔は、半分が溶けていた。その下に見える顔には、執事の顔のようなしわはなかった。真っ黒に焦げた若い肌が見えている。瞳は炎のような赤だ。口には半分は薄い笑み、半分は犬歯をむき出しにした獰猛な笑みを張りつけている。
「こんな風になぁ!!」
主は、突然のことに反応が鈍っていた。
男はミサイルのように主に迫る。その手には真っ赤な炎をまとっている。そのスピードのまま炎手を主に向ける。その炎手が触れた次の瞬間には、主の頭と胴は強引に引き裂かれていた。
男の手に、鷲掴みされている頭は既に炭と化していた。さらに手を後ろに回し主の胴に向ける。男の手の中央には野球ボール程の大きさの火球が生成されていた。それを男は容赦なく発射する。頭と同様に燃え尽きる胴体。
「あの水龍の使い手だった男が堕ちたもんだな。」
先ほどよりも、さらに獰猛な笑みを浮かべる男。彼の周りには炎がまとわりついている。その炎は彼を中心にどんどん広がっていく。その広がりが限界に達したとき、
「地獄に堕ちろや、外道が!!!」
数時間後には豪邸が消え去っていた。かなり大きな事件になったのだが、原因不明なまま時間がたつにつれて忘れ去られていった。