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彼女は祈るようにも、願うようにも

「つ、つかれたぁ〜」


 オルス達の後始末をララに任せて、俺とルナリスは核の間で倒れ込んだ。

 ひんやりとした石床が気持ちいいが、予想以上に汗をかいていたことがわかる。


 隣に視線を向ければ、ルナリスが息を吐きながらブーツを脱いでいる。

 汗ばんだ額にかかった前髪をかき上げながら、ふぅと小さく笑った。


「そういえばネモさん、さっきの人達って……」


 猫のように身体を伸ばしながら、ついでのように聞いてくれる。

 聞き流されても構わない、といった声量に彼女なりの優しさを感じた。


「俺が前に組んでいたパーティのやつだよ。ルナリスと会った時、怪我してただろ? その時の、冒険者としての最後の仲間だ」


 俺はあそこで死んだと思ってただろうから、かなり驚いてたなと自虐してしまう。

 それはルナリスにとって、笑える話ではなかったようで。

 まるで誰もいなくなってしまったのかと思えるほど、静まり返った。


「……人間って、なんでそんな酷いことが出来るんですか?」


 堰を切ったように、彼女から言葉が溢れた。

 前にも簡単に見捨てられた話をしたと思っていたが、俺にも事情があると黙っていてくれたんだろう。

 疲れが、彼女から遠慮をなくしてしまった。


「前に聞いた時も思ったんです。なんで仲間を見捨てられるんだろうって。治療にお金がかかるから? でも、ネモさんが傷を負ったのってことは誰かが助かったってことじゃないですか。それなのに、どうして……」


「お、落ち着けって……。俺は別に気にしてないから」


 言葉を返す前の彼女の表情は、まるで納得していないというか……。

 怒りの感情をどこにぶつければいいのかを探しているようにも見えた。


「気にしてください!」


 初めて見る険しい顔に、思わず息を飲む。

 目鼻立ちがハッキリしてる分、怒る彼女は迫力があった。

 出来るだけ怒らせないようにしようと思っていると、急に目頭が熱くなってくる。


「ネ、ネモさん!? どこか怪我でもしましたか!?」


「え……。あ、いや、違うんだ! その……、これは……」


 取り繕うと、余計に涙は止まらなかった。

 ルナリスが俺の代わりに怒ってくれたからという嬉しさもあるが、それはキッカケにすぎない。

 結果を残せず、冒険者になってからというもの自分を否定することに慣れてしまっていた。

 仲間から見捨てられことを、正当化してしまっていた。

 治療に金がかかるから、怪我をした自分が悪いから、仲間とは言っても一時的にパーティを組むだけだから。

 ルナリスに、気にしてくださいと言われ、この二年で抱えていた劣等感が涙となって溢れてしまった。

 俺は、傷ついていたことを気にして良かったんだ。


 何かを察したのか、ルナリスは言葉を発しない。

 ただ、手を握ってくれていた。

 その手は、力強くも、どこか震えていた。

 まるで俺のために、何かに祈るようにも、何かを願うようにも見える。

 俺は格好悪く泣いてしまった。

 我慢することが、格好悪いと思ってしまったから。

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