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船出そして ~最悪の再廻~

私はパイモンと一緒に、今、私たちがいる賑やかな街を後にし、次なる目的地であるインシデントという街へと旅立つことになった。この街での騒がしい日々も終わりを告げ、新たな場所での冒険が始まるのだ。港にはすでに私たちを乗せるであろう船が停泊しており、その堂々とした姿は、これから始まる長い船旅を予感させていた。私はこれから始まる航海に、希望と少しばかりの不安を抱きながら、胸を躍らせていた。未知の世界への扉が開かれる瞬間が、すぐそこに迫っていた。


「今から船に乗るけど、船酔いは大丈夫?」

パイモンは私の体調を気遣い、心配そうにそう言い、私の顔をじっと見つめてくる。その小さな顔には、私への深い友情と心配の色が浮かんでいた。しかし、正直なところ、私はこれまで船に乗った経験が一度もない。だから、今回の船旅は私にとって、完全に初めての経験となるのだ。波の音や潮の香り、船の揺れなど、すべてが未知の領域だった。この旅が、私にとって最初で最後の船旅になるとは、今の私には想像もできない、ずっと先の未来の話になるだろう。今はただ、この新しい体験に身を任せることしかできない。


「初めて乗るから、ちょっと不安だけど、大丈夫かな」

私は少し緊張した面持ちで彼女にそう答え、いよいよ乗船を試みる。足元がおぼつかないかもしれないという不安と、新しい世界への期待が入り混じっていた。幸い、船酔いをする人間はそれほど多くないと聞いているので、私はあまり気にせず、この船旅を心から楽しむつもりでいた。水平線の向こうに広がる景色や、船上での人との出会いなど、きっと素晴らしい体験が待っているだろう。船内に入ると、パイモンとは別の部屋になるため、私は自分の部屋へと向かった。それぞれの部屋で休息を取りながら、航海を続けることになる。しかし、部屋のドアを開けて中に入った途端、目の前に何かがいることに気がついた。それは、全く予想だにしない人物だった。一体誰が、なぜここにいるのか。混乱と驚きが私を襲った。


「やあ、初めまして、と言った方が正しいかな」

その人物はそう言い、穏やかな笑顔を浮かべている。しかし、その笑顔の裏に何か隠されているような、そんな不気味な感覚がした。しかし、その瞬間、私は急に目の前が真っ暗になり、意識を失ってしまった。何が起こったのか理解する間もなく、私は深淵へと落ちていった。


暗闇の中で、ぼんやりとした声が聞こえる。

 「彼女はこんなにも力がなくなっているのかい」

誰かがそう呟き、弱々しい私の状態を嘆いているようだ。僕は目の前にいる彼に質問を続けた。相手が誰なのか、なぜここにいるのか、全く見当もつかなかった。

 「昔と全く同じ容姿だと聞いて、少し安心したよ。昔みたいに、また彼女と一緒の世界に入れるなんて、本当に嬉しいんだが、少しだけ何かが違う気がするんだよね」

僕はそう言って、彼の返答を待つ。その言葉には、懐かしさと僅かな疑問が込められていた。しかし、彼はすぐに答えることはなく、無言のまま自室へと帰ってしまった。彼の沈黙は、さらなる謎を深めるばかりだった。部屋に一人残された僕は、意識を失っている少女、私に向かって静かに問いかけた。

 「久々のご対面はいかがかな、”カーネーション”?会えて嬉しいとか、色々と積もる話があるんじゃないかな。まあ、絶対に会話なんかさせないんだけどね」

僕はそう言い捨て、少女からの回答を期待せずに待った。相手は意識を失っているのだから、返事が来るはずもない。しかし、もちろん返事はなかった。静寂が部屋を支配し、重苦しい空気が漂っていた。

その頃、私の意識の中で、必死の声が響き渡る。

 「紫陽花!起きて!早く!!!!!!!!!」

少女は必死に、気絶している私に声をかけている。その声は、切実で、痛みに満ちていた。しかし、私の体はまるで魂の抜けた木偶人形のように、ピクリとも動かない。意識は暗闇に閉ざされたままだ。彼女の声は届いているのに、何もできないもどかしさが、少女の心を締め付けていた。

 「いやぁ、残念だよ。せっかくの再会なのに、片方は起きすらしない。これって会話する意味ないんじゃないかな」

僕は少女にそう言い放ち、冷たい嘲笑を浮かべた。琴音という少女を連れて、部屋を後にした。目的も分からぬまま、連れ去られる琴音。一体何が始まるのだろうか。



 「ここが…始めてきた…!」

一人の研究者が、興奮した声でそう言い、目の前に広がる幻想的な花畑を見渡していた。その表情は、狂喜に満ち溢れていた。色とりどりの花が咲き乱れ、まるで生きているかのように、不思議な光を放っている。その光景は、息をのむほど美しかったが、同時に、どこか不気味な雰囲気も漂わせていた。

 「この花を使って、彼女を転成実験のモルモットになってもらおう」

研究者はそう独り言ち、まるで獲物を狙う獣のような、冷酷な目をしていた。最も美しい一輪の花を摘み取ると、花畑を後にした。その表情は狂気に満ちている。その顔には、科学への執念と、倫理観の欠如が、はっきりと表れていた。

 「さあ、始めよう。100年前の再現を…!」

過去の失敗を繰り返そうとする研究者の狂気が、周囲の空気を震わせた。

 「うーん…ここは…?」

私は冷たい床の上で目を覚ました。体が鉛のように重く、意識も朦朧としていた。そこは窓一つない密室で、光もほとんど入らず、じめじめとした空気が漂っていた。目の前には、さっき私を気絶させた男が立っていた。その男の顔は、薄暗がりの中でも、はっきりと認識できた。薄暗い部屋の中には、いかにも研究室といった雰囲気で、多くの薬品や花に関する図鑑が数多く存在している。棚には試験管やフラスコが並び、壁には奇妙な図形や記号が描かれていた。

 「やあ、目が覚めたかい?意識チェックをしようか。自分の名前と、船に乗っていた理由は?」

彼は落ち着いた口調で私に質問をしてくる。しかし、私の頭の中は真っ白で、何もかもがぼやけている。記憶の糸が、ぷつりと切れてしまったかのように、何も思い出せない。彼の言葉はまるで他人事のように、私の耳を素通りしていく。ここがどこなのか、そして私という存在が本当に正しいのかさえ、分からなくなっていた。自分が何者なのか、なぜここにいるのか、全く見当もつかなかった。

その後、私は彼に言われるがまま、この場所について説明されることになった。彼の口から語られたのは、驚くべき内容だった。彼の話は、まるで荒唐無稽な物語のようだった。


 以下、彼から説明された点

  ・この場所はかつて無人の研究所だったということ

  ・私は記憶を失っていること

  ・”探している人”がここにいること


私にとっては、このようなことが説明されても、まるで現実味がない。それは、夢の中の出来事のように、非現実的に感じられた。自分は一体なぜ、こんな場所に連れてこられたのか。全てが謎に包まれている。何もかもが分からず、ただただ不安だけが募っていった。

 「それじゃあ、今から君の今後について、ザックリと話してあげるよ。まず初めに、君はこの部屋から出ることはできない。そして、この部屋から出る方法は、私を殺すしかない。飯と風呂はそこにあるから、有意義に使いなさい」

彼は信じられないことを告げた後、笑みを浮かべながら私に近寄ってくる。その笑みは、まるで獲物を追い詰める獣のように、冷酷で、ぞっとするほどだった。その目は冷たく、底が見えない。暗い海の底を覗き込んでいるような、そんな恐怖を感じた。

 「それじゃあ、君のことについて研究したいからね、脱ぎたまえ」

そう言い、彼は私の服に手を伸ばしてくる。その行動に、私は底知れない恐怖を覚えた。私は恐怖に駆られ、必死に逃げ回った。しかし、所詮は女性。体格の良い男性に勝てるわけもなく、抵抗もむなしく、そのまま押し倒されてしまった。抵抗すればするほど、絶望感が増していく。

 「大丈夫。痛いのは今だけだ」

彼は囁くようにそう言い、ついに私に手をかけようとした、まさにその瞬間だった。全てが終わってしまう、そう思った瞬間。

 「琴音!あぶない!」

聞き覚えのある、焦燥感に満ちた声とともに、彼は勢いよく壁に押し倒された。壁に叩きつけられた男は、苦悶の表情を浮かべていた。目の前には、息を切らしながらも、怒りに震えるパイモンが一人、その場に立ち尽くしていた。信じられないほどの怒りと、私を救いたいという強い意志が宿っていた。

 「お前、奏炎…生きてたのか。この悪魔め…」

パイモンは憎しみを込めてそう言い放ち、力尽きたように、私の目の前で倒れてしまった。その言葉には、過去の因縁と、深い憎悪が込められていた。

彼女が目の前で倒れてしまったことに、私は絶望し、再び意識を失ってしまった。深い悲しみと無力感が、私の心を蝕んでいく。何もできない自分を、激しく恨んだ。


再び目が覚めると、私は見慣れない部屋にいた。そこは、先ほどの研究室とは異なり、より簡素な作りの部屋だった。あたりを見回すと、そこには誰もいないことに気づいた。体には無数の注射針などが刺された跡が多くあり、いかにも私が研究されていたかのような、そんな不快な感覚が全身を覆っていた。皮膚の下を何かが這い回るような、そんな嫌悪感を覚えた。

何とか立ち上がろうとした瞬間、激しい貧血を引き起こし、視界が歪み、そのまま床に倒れてしまった。体はまるで操り人形のように、自分の意志とは関係なく動かなくなってしまう。意識は再び闇へと沈んでいく。どこまでも続く、暗い闇の中へ。

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