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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
二章
80/80

米艦隊、接近す

明けましておめでとうございます。

大変遅くなり申し訳ありません。

しかも短めです……、頑張ります!

               米艦隊、接近す







「米艦隊はどこまできたのだ。」

連合艦隊司令長官古賀峯一大将は眉根を寄せながら、

参謀長の野崎少将に話しかけた。

「現在、アッツ島を過ぎ、日付変更線に差し掛かろうとしているとのことです。」

「……、米国側は何か言ってきているか。」

「艦隊の訓練航海であり、無用に日本を刺激するつもりはないと。」

「そうか、艦隊の詳細は。」

「伊号潜水艦三隻の報告では、

エセックス級空母十隻、艦種不明戦艦二隻、他艦艇多数とのことです。」

「大艦隊ではないか。

正規空母が十隻とは…。艦隊の派遣は済んでいるな。」

「現在、山口中将の第二航空艦隊と近藤大将の第一艦隊が合同で、

オホーツクに向かっています。」

「よろしい、北海道の陸軍にも、警戒を厳にするよう、伝えてくれたまえ。」

「了解しました。」






それから二日後、外務省では、重光外相が駐日米大使を呼び出していた。

「大使、どういうことですか。」

重光はそう言うと、言葉を続けた。

「ソ連が、満州国境の軍を増強。

それと時を同じくして、

米国の艦隊がウラジオストクに向かうと言うのはどういうことですか。

説明していただけますか。」

駐日米大使グルーは手をひらひらと振りながら口を開く。

「前にも申し上げました通り、訓練ですよ。

我が国は欧州大戦で多くの将兵、航空機、艦船を失いました。

そのため、我が国は建造した、新型艦と、新兵の訓練のために、

遠洋航海が必要なのです。」

「それにしても、空母十隻というのはいささか大規模過ぎませんか。」

「それは……。」

途中でグルーは口を閉じると、軽い笑みを浮かべる。

「外相、本当の事を教えましょう。」

「ええ、我々は最初からそれを望んでいます。」

「米国は共産主義を好みません。

対独戦が有利に展開するにあたって、ソ連は再び力を付けつつあります。」

「つまり、今回の派遣は、ソ連への牽制だと。」

「ええ、そうです。ソ連も外面では艦隊の到着を歓迎していますが、

内心は我が国の大艦隊に竦み上がっているはずです。」

「……、その大艦隊は津軽海峡を通過するのでしょうか。」

「まさか。それでは本当に貴国に対する威嚇行為となってしまいます。

まあ、宗谷海峡と言ったところでしょうか。」

「大使、我々も本心を教えましょう。

正直言って、海軍は殺気だっています。不測の事態を避けるため、

米艦隊にはぜひとも引き返していただきたいのですが。」

「それはできません、ソ連との外交関係にひびが入ります。」

「それは、我が国より、ソ連との友好の方が大切と言われるのですか。

つまり、共産主義……コミュニズム国家との友好の方が。」

無表情のまま、淡々と言ってのける重光に、グルー大使は笑みを浮かべる。

「それは誤解と言うものです。

講和以降、日本は米国にとって、強大なパートナーですよ。

いささか、強大すぎるのですが。」

「なるほど。」

重光は軽いため息をつく。

「大使の意向は総理に伝えましょう。

しかし、貴公も我々の懸念を大統領にお伝え願いたい。」

「承知いたしました。」

グルーは立ち上がると、重光と握手を交わした。






「長官、ついに来たようです。」

「そうか、絶対に手は出すな。」

第一艦隊司令長官近藤大将はそう言うと、旗艦「大和」の艦橋から、

接近しつつある、米艦隊を眺めていた。

水上艦艇の主力部隊である、第一艦隊は、

戦艦「大和」「武蔵」

重巡「羽黒」「摩耶」「利根」「筑摩」

水雷戦隊の駆逐艦十二隻、そして、講和後、護衛艦隊とは別に作られた。

連合艦隊専用の対潜戦隊に所属する駆逐艦四隻がつき従っている。

そして、第一艦隊の後方九十海里には、山口中将を長官とする、

空母「雲龍」「天城」「蒼龍」「飛龍」「瑞鶴」「翔鶴」

の六隻の空母を中心とする、第二航空艦隊が控えている。

米艦隊は占守島とカムチャッカ半島の間を通るように進んでいく。

速度はおよそ、十六ノット。

「しかし、遅い。巡航速度を遥かに下回っているだろうな。」

「新兵の訓練とのことですから、操艦を教えているのでは。」

「………」

黙り込む、近藤長官に参謀長は声をかける。

「長官はなにか別の考えがあるのですか。」

「うん、これは陽動ではないかな。」

「……、陽動ですか。」

「いや、私の思い違いかもしれんがな。」

自嘲気味に笑みを浮かべる近藤提督のもとに、通信員が慌てて走り込んでくる。

「どうした。」

「米艦隊から電信です、我が艦隊は引き返す、以上です。」

通信員の言葉に、艦橋にいた者は近藤長官を除き、首を傾げる。

「引き返す? 米艦隊は何がしたかったのでしょうか。」

「……、やはり囮か。」

「と言われますと。」

「今、北には多くの日本海軍艦艇が引き付けられている。

速度を落としていたのは、無論新兵の訓練も兼ねていたのだろうが、

実際のところは少しでも長く、我々を引きとめて置きたかったのではないかな。」

「しかし、あれほどの大艦隊が囮とは…少し考えにくいのでは。」

「米国の国力は我が国を遥かに上回っている、忘れたのかな。」

「それでは、南方が……危ないと。」

「いや、まだ推測の域は出ないさ。

だが、心配だな。司令部に連絡を取ってくれたまえ。」

近藤長官は微かに顔を曇らせながらそう呟いた。


今回で80話になりました。

これも読んでくださっている皆さんのおかげです。

本当にありがとうございます。

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