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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
70/80

激戦再び

遅くなりました、すいません。

      激戦再び





「長官、ハワイ駐屯軍総司令官秋山大将から連絡です。

ハワイ守備航空隊は全滅、目下敵の艦砲射撃を受けつつあり。

我が部隊の内、戦車部隊及び決死部隊は水際で敵の上陸を防がんとす。

残りの部隊は内部の密林でゲリラ作戦を取るとのことです。」

報告を受けた山本五十六連合艦隊司令長官は重い口を開いた。

「秋山閣下はどうすると言っている。」

「はい、戦車部隊と共に行動し、小沢艦隊の救援まで持ち堪えてみせると。」

「……、あの人は口で言って聞くような人ではないからな。

説得は無理だろう。もともと駐屯軍の司令をやるより前線の方が好きな人だ。

小沢君の艦隊はどれくらいでハワイに着くのかね。」

「どんなに早くともあと二日といったところでしょうか。」

「二日か。ハワイ駐屯軍の兵力は二個師団、

米軍の兵力は偵察機が発見した輸送船の数から考えて、およそ九個師団。

おまけに制空権、制海権は敵の手の内だ。」

「長官、それでは…。」

「だが、二日ならなんとかなるかもしれん。

君は小沢君に連絡を取ってくれ。」

「了解しました。」





「そろそろだな。」

ハワイ駐屯軍総司令官秋山大将はそう言うと副官に視線を向けた。

「準備はいいか。」

「ええ。」

副官の小松少将は秋山の顔を見ながらしっかりと頷いた。。

水際で上陸作戦の阻止を行うべく、

決死隊三千五百人、三式戦車八十輌を沿岸部に配置したが、

米軍の猛烈な艦砲射撃及び空襲により、多数の重砲、二十両の三式戦車が破壊された。

正直言って、これだけの部隊で敵の上陸を防ぐのはまず不可能だろう。

「司令、始まりました。」

偵察員の報告を受け、秋山と小松は双眼鏡を手に取る。

そこには海を覆い尽くさんばかりの上陸艇の姿があった。

「…、敵の上陸艇が沿岸部三百メートルに近づき次第、砲撃を開始する。」

「了解しました。」

秋山の凛とした声を聞いて部下達は叫んだ。





ハワイ攻略作戦の指揮官であるハリー・シュミット少将は、

近づきつつあるハワイを見て笑みを浮かべた。

半年弱の間、ジャップに占領されていたハワイをようやく奪い返す時が来たのだ。

「司令。」

参謀のレーモン大佐がハリーに声をかけた。

「どうしたのだ。」

「沿岸部からの距離が一キロを切りました。そろそろ敵の反撃が来るでしょう。

司令は一時後方に待機していただき、先遣部隊の上陸開始後に上陸してください。」

「レーモン君、その提案は飲めないな。

勇猛な米海兵隊の指揮官は勇猛で無くてはならない。

私が先頭で指揮を取らなければ部下は付いてこないんだよ。」

「……、了解しました。」

不服そうな顔をしながらも頷いたレーモンの肩をハリーはポンと叩いた。





「敵、上陸艇の距離三百です。」

「よし、砲撃を開始しろ。」

秋山の怒声と共に重砲を中心とするありとあらゆる重火器が火を噴いた。

次々と上陸艇が四散し、真っ赤に海が染まる。

それでも多数の上陸艇が岸まで辿り着くと、米兵が次々に突進してくる。

大型艇からはお馴染みの M4戦車がのそりと姿を現し主砲を日本軍陣地に撃ち込む。

「三式を出せ。」

小松少将が叫ぶと、温存していた三式戦車が一斉に主砲を撃ち込んだ。

四輌のM4戦車が直撃を受け、歩みを止める。

「良くやった。」

小松が笑みを浮かべた時だった。

「敵機来襲。」

上空を覆い尽くさんばかりの米軍機が前方からやってくるのが見えた。

対空砲員が必死に機銃を撃ち込むが、落ちていく機体はほんの少しだ。

陣地に多数の爆弾を落とされ、虎の子の三式戦車も次々と破壊されていく。

その間に陣地を造った米上陸部隊も重砲を撃ち込んでいく。

もはや限界が来ようとしていた。

「司令、撤退してください。ここは私が食い止めます。」

「馬鹿を言うな、部下を見捨てるような真似は絶対に出来ん。」

秋山の揺ぎ無い眼をじっと見た小松は苦笑する。

「分かりました、もう撤退しろとは言いません。」

「ありがとう、君には迷惑をかける。」

「いえ、ハワイの司令部で書類に埋もれて死ぬよりは、

こうして死ぬ方がましというものです。」

「ふふふ、私もだ。」

お互いに笑みを浮かべると必死の反撃を続ける部下達に叫ぶ。

「撤退だ。後方の密林で指揮を取っている林少将の部隊と合流しろ。」

「司令と副司令はどうされるのです。」

「責任を取る。」

二人はそれだけ言うと、腰に差した軍刀をすらりと抜いた。

「お供します。」

周囲にいた部下達がそう言うと秋山は静かに言った。

「そう言ってくれるのは嬉しいが、連れは小松君だけでいい。

もう少し耐えれば小沢君が救援に来る。それまで頑張ってくれ。」

「……分かりました。」

そう言うと部隊長達は無線で連絡を取り合い撤退していく。

「ああ、言い忘れていたことがあったよ。」

「何ですか、司令。」

二人だけになった陣地で小松は秋山に聞き返す。

「世話になったな。」

秋山の言葉を聞いた小松は涙声で言葉を返す。

「まだですよ、地獄でもお世話しますから。」

「おいおい、俺たちは地獄行きか。」

「ええ、軍人は皆そうでしょう。」

「ふ、そうだな、では行くとしよう。」

「ええ。」

ふっと一息すると二人は軍刀を振りかざし、米軍陣地へ突っ込んで行った。





日本軍陣地を占領したハリー少将は被害の確認をした後、天を仰いだ。

負傷者が六千人に死傷者が二千人。

僅か三千そこそこの部隊に負わされた傷はかなりのものだった。

「……、ハワイ司令部まで部隊を進める。軍港と飛行場を占領することが先決だ。」

「了解しました。」


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