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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
7/80

南海の激闘

すこし、長めに書きました。

よろしくお願いします。

               南海の激闘 




真珠湾奇襲と呼応させる、南方攻略を、大本営は準備していた。

その攻略範囲は、

イギリス領、香港、マレー、ボルネオ、ビルマ。

アメリカ領、フィリピン

オランダ領、ジャワ、スマトラ、セレベス、アンボン、チモール

中部太平洋では、

アメリカ領グアム、ウェ―ク

オーストラリア領、ラバウル、カビエンを含む、

東西八千五百キロ、南北三千六百キロに及ぶ広大なものである。

これを支えるための護衛艦隊は今設立しているところだ。

日本が南方へこだわる理由は、そこに豊富な資源があるからである。

マレーのゴム、スズ、ポーキサイト。ボルネオの油田

とくに油田は、戦争遂行と民生のためなくてなならないものである。

そして、東南アジアを欧米の植民地支配から、解放し、日本を盟主と

する、大東亜共栄圏を結成させるつもりだった。

しかし、天皇陛下のアジア間の上下関係はあってはならないとの

御考えから、日本は、盟主という立場ではなく、個々のアジアの国々

を独立させるという方針をとることに、変更になったのだ。




十一月の末には、南方陸軍部隊の主力を乗せた船団が、台湾に集結し、

十二月二日には、マレーに向けて出発が始まっていた。

マレー半島の攻略及び占領がこの作戦の第一要目だった。

この南方軍の編成は、

フィリピン攻略が本間雅晴中将の第十四軍。

ビルマ攻略が飯田正二郎中将の第十五軍。

蘭印攻略が今村均中将の第十六軍。

マレー攻略が山下奉文中将の第二十五軍。

一方これを支援する部隊は、

近藤信竹中将の指揮する第二艦隊

戦艦「長門」「陸奥」

軽空母「龍驤」

重巡「高雄」「愛宕」「摩耶」「鳥海」を中心とする部隊が全面支援にあたる。

フィリピン作戦の支援は、第三艦隊(重巡四、駆逐艦二十四)が当たり、

マレー作戦には、小沢中将指揮の南遣艦隊(軽巡四、駆逐艦一二、潜水艦一六)が

これに当たる。

そのほかに、グアムとウェーク作戦の支援に井上成美中将の南洋艦隊がいる。

これは、軽巡三隻が主力の艦隊である。

海軍基地航空隊としては、台湾とサイゴンに強力な部隊が布陣されていた。

戦闘機に零戦を多数配備している。

陸軍も二つの航空集団を配備していた。

潜水部隊は三十隻を配備していたが、

これは、ほとんどが真珠湾作戦に従事していた。




ここでこの世界の潜水艦の運用について、述べておきたい。

この世界でも、艦隊撃滅が、潜水艦の優先事項である。

しかし、史実よりは、通商破壊も考えられている。

十隻の通商破壊専用の潜水艦が作られているのだ。

その名は、「巡潜四型」

スペックは、

排水量二千二百トン

全長九十八メートル

全幅八,四メートル

機関水上十二万馬力、水中三千馬力

速力水上二十四ノット、水中十ノット

兵装

四十口径14㎝連装砲一基二門

五三センチ魚雷発射管六門

魚雷二二本である。




ともあれ、南方攻略作戦は始まった。

マレー半島の総指揮官は、サー・ブルックボーハム空軍大将で、

陸軍八万八千人。そのうち三分の一がシンガポール防衛に当てられ、

残りが、マレー半島に展開していた。

シンガポールの防衛指揮官はパーシバル中将であった。

陸兵のほかには、サー・トマス・フィリップス中将の東洋艦隊。

陣容は、

戦艦「プリンス・オブ・ウェ―ルズ」巡洋戦艦「レパルス」

巡洋艦三隻、駆逐艦七隻。

空軍としては、プルフォード中将指揮下に、バッファロー戦闘機

ブレンハイム爆撃機を主体とする、百三十八機の航空部隊がいた。

イギリス極東軍の士気は低い…というより、日本軍をなめていた。

黄色い猿が人間様に勝てるかよ。大部分の兵士がそう考えていたのだ。

十二月八日、日本軍は、マレー半島のコタバル、シンゴラ、パタニ―

に強襲上陸を開始した。シンゴラとパタニ―では無血上陸に成功

したが、コタバルでは激戦となり、輸送船も被害を受けた。

しかし、日本軍の猛攻はとどまることを知らず、

インド兵主体のイギリス軍は、恐慌をきたして、敗走し始めた。

日本の将兵は裸足で海岸を突撃し、ある信号兵は、自らの体で

人間アンテナを務めた。それをみて、インド兵たちは、

恐怖したのである。

マレー半島上陸成功の報を受けて、香港、グアム、フィリピン

の部隊は、一斉に行動を起こした。

サイゴンからの、シンガポール爆撃も始まり、その猛攻により、

マレー半島のイギリス航空部隊は壊滅し、

シンガポールに少しを残すのみとなった。

その、報告を受けたフィリップス中将は、東洋艦隊を出動させることにした。

エアカバーをうけることはできないが、かまわないだろうと思っていた。

プリンス・オブ・ウェ―ルズのような巨大戦艦が、飛行機ごときに、

沈められるはずがないと考えていたからだ。

近藤中将の「長門」「陸奥」は、ベトナムのカムラン湾にいたため、

小沢中将の案により、航空機で痛めつけたあと、潜水艦、駆逐艦の

魚雷で沈めるという作戦がとられた。

南シナ海に入った極東艦隊は、伊65に発見され、松永貞市少将は、

策敵機をだしたが、発見できなかった。

しかし、十日の朝に策敵機によって、東洋艦隊は発見された。

それを受けた、美帆航空隊の一式陸攻八機が飛来した。

この八機は、索敵の任務に就く途中だったため、

二五十キロ爆弾二発だけしか、積んでいなかった。

しかし、戦意は旺盛だった。




このとき極東艦隊は昼食に取りかかっており、いささか気が緩んでいた。

フィリップス中将は大艦巨砲主義者であり、古い海軍の体質から、

抜け切れていなかったのだ。




敵の対空砲が撃ち上げられるなか、白井大尉は思案した。

二百五十キロ爆弾では、戦艦の装甲はぶちぬけない。

しかし、巡洋戦艦なら、なんとかなるだろう。

大尉は翼を振ると、中隊をレパルスに指向させた。

レパルスはすかさず回頭を始めたが、一発を艦尾に受けてしまった。

日本軍の爆撃は当たらないと信じていたイギリス兵は、恐怖した。

この一発は、格納庫付近で爆発し、缶室に大損害を与えた。

このとき、魚雷を抱えた、元山航空隊が接近してきた。

日本機は超低空で突っ込むと魚雷を次々発射した。

イギリス兵は、その果敢な攻撃ぶりを信じられないような目で見た。

極東の黄色い猿が、こんな勇気を持っているとは、信じ難かったからだ。

その狙いは正確無比で、プリンス・オブ・ウェ―ルズに二発、レパルスに

一発が命中した。

レパルスのテナント艦長はシンガポールに無電を打った。

十一時五七分、第三波が飛来した。美帆中隊の八機である。

魚雷は命中しなかった。

十二時十九分、シンガポールから、バッファロー十一機が救援に向かった。

そのころ、鹿屋航空隊の二十六機の雷撃隊が飛来した。

プリンス・オブ・ウェ―ルズは五本、レパルスは七本の魚雷を食らった。

「総員退去用意。」

最後の時が来たのを悟ったテナント艦長は、命令を下した。

部下たちは、艦橋から、離れない彼を、無理やり降ろした。

救援のバッファローは鈍重すぎるため、日本機を捕まえられず、

役に立たなかった。

そして、最後の攻撃隊がやってきた。五百キロを抱いた美帆二個中隊十七機

である。

二発食らったプリンス・オブ・ウェ―ルズは激しく振動した。

フィリップ中将も最後を悟り、駆逐艦に乗組員を移乗させた。

部下たちは彼らに離艦するよう、頼んだがフィリップスとリーチ艦長は

首を振った。

フィリップスは微笑んでこう答えただけだった。

「さようなら、元気でな……みなに神の御加護があらんことを。」

フィリップスは、親指トムとあだ名されたほど小柄な男だが、

その心根は巨人であることを立証したのである。




海戦の翌日鹿室空の壱岐大尉は、二つの花束を投下した。

一つは友軍、もう一つは健闘した、イギリス将兵に捧げられた。

イギリス首相チャーチルはこの知らせを受け、生涯でかくも

大きな痛手を受けたことはなかったと嘆き、日記にこう記した

「インド洋にも太平洋にも、英米の主力艦は一隻もなく、

この広莫たる水域において日本は最強であり、我々はいたるところで弱く、

裸である。」と。


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