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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
68/80

零戦散る

よろしくお願いします。

         零戦散る




「凄い。」

安藤少尉は戦闘中にも関わらず思わず神谷少佐の零戦に見惚れてしまっていた。

いつも無表情でどこかぼけっとしている普段の神谷少佐からは想像もできないような

動きだったからだ。

「噂には聞いていたがこれほどとは…。」

無線機から霧島大尉の驚嘆の声が聞こえる。

その神谷少佐の零戦に再び突撃してくる機体を安藤は見つけた。

突撃してくる機体は先ほどのアブとは比べ物にならないほど敏捷な動きで、

神谷の零戦とためを張っている。

それにともない他の米軍機も安藤達に襲いかかってきた。

たちまち両陣営の編隊が崩れ騒然とした空気に包まれる。

安藤は唇を噛み締めると同高度から迫ってくる三機のアブに挑みかかった。




「こいつはやるな。」

先ほどダリウス少尉の機を一瞬で落とした神谷少佐は無表情のままそう呟くと、

機体を左旋回させた。

格闘戦に持ち込んで撃墜するつもりだったが、予想以上に相手の動きが良く、

上空に逃げられてしまった。

神谷は、視線は敵機を捕らえたまま周囲にも気を向ける。

流石に三倍の戦力差はかなり大きいようで、次々と烈風が落とされていくのが見える。

それと同数ほどのアブも落ちてはいるが、分は悪い。

神谷は一気に急降下すると、下方にいたアブに機銃を向けた。

たちまち二機のアブを落とすと苦戦していた安藤、霧島の掩護に当たる。

声は聞こえなかったがぶんぶんと手を振る安藤に思わず苦笑した神谷は、

再び周囲に視線を向けた。

先ほどまで戦っていたアブはもう見当たらない。

神谷が一瞬気を抜いたその時だった。

太陽の光と共に雲の切れ間からアブが姿を表したと同時に、

自機に機銃の当たる音が聞こえる。

「ちっ。」

幸いエンジンには当たらなかったようで火災などは起こっていないが、

破片で頭を切ったのか、血が流れ出て両目が見えにくい。

おまけに健でも切ったのか、左腕が動かない。

「眼が見えん。」

他人事のように呟くと神谷は右腕でマフラーを掴み、血を拭った後、機体を旋回させた。




「ちっ。」

神谷と同じように舌打ちしたカイム少佐は機体を再び急上昇させた。

どうやら火災は起きていないようだ。

ジークは機体を旋回させながら周囲に気を張っている。

もうさっきのような奇襲は利かないだろう。

カイムとしてはこのまま一対一でやりたいところだが、

戦闘の経過を見る限りそうもいかなくなってきた。

無論、圧倒的に戦況は有利だが、

自分達にはこの後にも日本海軍が誇る、機動部隊とも戦わなければならない。

「ディクソン、二機であのジークを潰すぞ。

ジーク一機に時間をかける暇は無いからな。」

苛立ちの声が混じるカイムにディクソン中尉は苦笑いしながら答える。

「了解しました。」

カイムはそれを聞くと機体を急降下させ、再びジークに突っ込んだ。

それをひらりとかわしたジークはカイムの後方に着く。

それを確認したカイムは振り返ることも無くそのまま急降下し続けた。

耐久性に難があるジークが急降下を続けられないことを見越してのことだった。

しかし、ジークはいつまでたっても急降下を続けたままだ。

追いすがるジークの後方にディクソン機がついているのをバックミラーで確認した

カイム少佐は笑みを浮かべた。

「もらったな。」

そう呟いたのとディクソン機が機銃を発射したのは同時だった。

あれほどの腕前のジークがこんな簡単な罠にかかったのが不思議だったが

ディクソン機の機銃をまともに受けたジークは煙を噴き上げている。

パラシュートが開く様子もなかった。




カイム少佐が上空から突っ込んでくるのを避けた神谷は腹部に鈍痛を感じ、

思わず呻き声を上げた。

目線を下に降ろすと腹に九センチほどの破片が突き刺さっているのが見えた。

肉に刺さっている部分の長さは想像するしかないが、

最低でも四、五センチぐらいはありそうだった。

急な回避をしたため、腹部が圧迫され痛みが出て気付いたのだろう。

腹部の服は真っ赤に染まっている。

「これは助からんな。」

ぼそりと呟くと神谷少佐は先ほどのアブの後方に着き、急降下を始めた。

愛機である零戦がぎしぎしと音を立てるのが聞こえる。

「悪いな、後少しの辛抱だ。」

目が霞み始めてきた神谷はそう言うと愛機を撫でながら歯を食いしばる。

F6Fに零戦が急降下速度で勝てるわけがないのだが、

神谷は急降下を続けた。

それが意地だったのか、もう意識を失っていたのかは誰にもわからない。

こうして太平洋戦争で華々しい戦果を上げた零式艦上戦闘機は

ハワイ航空戦を最期に実戦から姿を消した。

最期の零戦搭乗員、神谷少佐の生涯戦績は、

確定撃墜機数十八機

推定撃墜機数三十六機

ハワイ航空戦での撃墜数五機である。





遅くなってすいませんでした。

神谷少佐の結末も微妙ですし…

これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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