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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
67/80

ハワイ上空での激闘

早く更新できました。

        ハワイ上空での激闘





「我、敵艦隊を発見す、空母十隻以上、戦艦四隻、他艦艇多数。

味方からの方位百二十度、距離二百五十海里。我敵艦載機の攻撃を受けつつあり。」

「いよいよ来たな…。」

ハワイ航空隊司令東郷少将はそう呟くと緊急集合している搭乗員達に訓示した。

「諸君、長話をしている暇はないから簡潔に言おう。

敵の空母の数は十隻を超えているそうだ。」

東郷の言葉に周囲は騒然となる。

「無論、トラック島の艦隊も救援に駆けつけてくるだろうが間に合わまい。

だが、何としてもハワイを奴らにやるわけにはいかん。

諸君らの健闘を祈る、以上だ。」

東郷が言葉を終えるとほぼ同時に搭乗員達は慌ただしく自分の愛機のもとへ向かう。





「神谷少佐。」

彼にわざわざ声をかけてくる人といえば安藤少尉くらいしかいない。

「どうした。」

「編隊に自分を入れてもらえませんか。」

緊急時の小隊編成は日本軍では自由となっている。

史実のラバウルでもよく自由な小隊編成が行われた。

「自分もお願いできますか。」

そう言ったのは霧島大尉である。

「ああ。」

そう言うと神谷は愛機である零戦五十二型に乗り込む。

安藤と霧島も愛機の烈風にそれぞれ乗り込んだ。

周囲を見渡すと凄まじい数の烈風が飛行場へ歩を進めている。

「こんなにいたんですね。」

安藤の感嘆の声に霧島は苦笑する。

「まあ、訓練で全機出撃なんてしないからな。

だが、こちらに向かってるアメさんは少なくともこれの倍はいると思うぞ。」

「倍なら楽だ。一人二機落とせば勝ちだからな。」

無表情のまま言う神谷に霧島はまた苦笑する。

「そんなことができるのは神谷少佐ぐらいですよ」

霧島が言葉を終えたと同時に出撃許可の旗が振られる。

「では、空で。」

神谷、霧島、安藤の順に出撃していき、上空で編隊を作る。

全体での編隊ができたのは出撃してから二十分後のことである。

二百機を超える編隊としては素晴らしい早さだった。

烈風の無線機にハワイの電探部隊から連絡が入る。

「我、敵編隊を発見。味方からの方位百二十度、距離七十海里、数は…七百機余り。」

「七百機だと。」

どの機体からも驚きの声が無線から聞こえてくる。

安藤も思わず声を漏らした。倍どころか敵は三倍以上の兵力で来たのだ。

「神谷少佐。」

烈風のような優秀な無線機を持たない神谷少佐の為に安藤少尉が叫ぶ。

神谷少佐が乗る零戦の無線機はかなり雑音が混じるのだ。

風防を開けた神谷を見た安藤は再び叫ぶ。

「敵との距離は七十海里、数は七百機ほどだそうです。」

神谷が腕を振ったのを見て安藤は風防を閉める。

「安藤、大丈夫か。」

無線機から霧島の声が聞こえてきた。

「無理はするな。攻撃を受けたら粘らずに落下傘を使え。」

初の実戦である安藤を気遣っているのだろう。

安藤も言葉を返す。

「わかりました、無理はしません。」

「ああ、頼むぞ。」

無線が切れると安藤は烈風の機銃を試射する。

不備は無い、機体の調子も最高だった。

現在の高度は八千五百メートル。

敵を迎え撃つ準備は万端だった。

安藤が敵を見つけたのはそれから十分後のことだった。

きらきらと輝く光の粒が星と見間違うほど多数見受けられる。

「敵機視認。」

安藤はそう言うとスロットルを一気に押し上げた。





自艦隊の上空で編隊を作った米航空機群は整然とした編成を保ちながらハワイに向かった。

戦闘機指揮官はカイム少佐で、総指揮官はアダムズ中佐である。

「ジャップの戦闘機は任せたぞ、少佐。」

アダムズの言葉にカイムは答える。

「ええ、中佐は飛行場の爆撃だけに集中してください。」

米航空部隊の編成は、

F6F四百二十機、

ドーントレス百六十機、

アベンジャー百二十八機の計七百八機である。

数で質を補うことを考え、戦闘機数が圧倒的に多い。

とはいっても米国の中ではトップクラスの搭乗員ばかりであり、

日本軍搭乗員とも十分立ち迎えると考えて良い。

発艦してから五十分ほど経つと、ぼんやりと島影が見えてきた。

と同時に上空に銀色に光る粒が見える。

「敵機視認、数は……おそらく二百機ほどだ。」

カイムの声に列機は了解と返し高度を上げる。

敵機もこちらに気付いたのだろう。

ほぼ同時に上昇を始める。

その時無線から部下のダリウス少尉の声が聞こえてきた。

「おいおい、あの左上の小隊の先頭の機体、ジークじゃねえか。」

カイムも視線を向ける。かなり近づき鮮明に見えた機体は確かにジークだった。

他の機体はアーサー(烈風)である。

「ジャップは俺らを馬鹿にしてんのか。」

初期のF6Fは零戦とも互角程度だったが、三度に渡るバージョンアップで、

もはや零戦との能力差は隔絶している。

「あいつは俺がもらうぜ。」

編隊を崩し、一気に突っ込むダリウスにカイムは声を荒げる。

「油断するな、ダリウス。」

しかし、その警告は遅すぎた。

ダリウスの突撃をふわりと避けたジークはそのまま宙返りすると、

ダリウス機の真上でほんの一瞬、機銃音を轟かせた。

強固な防弾性能を誇るF6fだったが、二十ミリ機関砲で風防を破られ、

搭乗員の頭を吹き飛ばされてはどうしようもなかった。

ダリウス機はそのまま海面に向かって進んでいく。

それを見た瞬間、カイムの背筋が凍りついた。

「なんだ、あのジークは…。」

驚嘆するアダムズの声が無線から聞こえる。

無理もない。あれほどの腕前の搭乗員はカイムも一度しか見たことが無い。

「あのジークは私がやります。中佐は爆撃に集中してください。

全戦闘機に告ぐ、敵戦闘機には三対一で戦え。」

それだけ言うとカイムはスロットルを押し上げた。

「ミッドウェーのジーク……、では無いな。」

確かあいつは空母艦載機だったはずだ。

あいつとは違う搭乗員だろう。

あれほどの腕前の搭乗員が二人もいるとは信じたくないが、

先ほどの戦闘を見る限り、同等の腕前を持っていると考えた方がいい。

「ミッドウェーでは負けたが、貴様には負けん。」

カイムはそう呟くとジークに躍りかかった。



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