日英講和成る
まずは遅くなって本当にすみませんでした。
なかなか書く暇がありませんでした。
もっと早く書けるよう頑張ります。
日英講和成る
一九四三年二月一五日、日本と英国の講和がセイロン島で行われた。
日本の代表は米内総理、英国の代表は、本来はチャーチル首相が来るべきなのだろうが
スエズが独逸に占領され通行ルートの確保ができなかったため、
代理として元日本大使のハロルドが講和宣言書にサインをおこなった。
日英講和は世界を驚嘆させるとともに固まりつつあった国際情勢を一気に塗り替えた。
日独伊と英米ソの対立は日本の三国同盟の破棄により瓦解したのである。
独逸ではヒトラーが怒り狂い、ソ連、英国の次は日本だと叫んだ。
米国では対日反戦運動が激化し、講和宣言のタイミングの悪さに軍部首脳陣は
頭を抱えた。いかに猛将ハルゼーが率いていると言っても講和宣言の翌日に
作戦の開始となっては兵の士気の低下はいかんともし難かった。
米大統領ルーズベルトはずきずきと痛む頭を抱えながらもチャーチルに連絡を取った。
「チャーチル卿、どういうことですかな。」
怒り心頭のルーズベルトの声とは、
打って変わったのんびりした声が受話器から聞こえてくる。
「どういうことも何も、独逸と日本を同時に相手取るのは難しいと判断しただけです。」
「我が国は英国を救うためにこの戦争を始めたのですぞ、
これは我が国に対する裏切ると考えてもよろしいのでしょうな。」
「なにを言われますか、大統領。我が国は米国との良い友です。
そこに日本が加わっただけですよ。裏切りとはとんでもない。」
「……、我が国も日本とはいずれ停戦するつもりです。
だが、我が国が日本と友になることはないでしょう。
独逸が終われば次は日本です。その時はどちらの味方をしていただけるのでしょうな。」
「さあ、窮地に陥った時に守ってくれる方ですかな。」
チャーチルの皮肉に満ちた声にルーズベルトは受話器を握り締めた。
スエズが占領された時に、
チャーチルが頼みこんできた太平洋艦隊派遣要請を断ったことを言っているのだろう。
「おっと、時間ですので失礼します。」
ろくに会話もしないうちに切られた電話をルーズベルトはただ見つめるだけだった。
一方、独逸ではヒトラーが真っ赤な顔で罵倒の声をあげていた。
「くそっ、同盟国とはいえやはり劣等民族だったということか。
黄色い猿どもめ、ソ連が崩壊すればそのまま満州に攻め込んでくれる。
三国同盟の破棄だと、ふざけた真似をしてくれたものだ。
ユダヤの野郎と同じように必ず絶滅させてやろうではないか。」
そばに控える側近どころか愛人のエバも今の彼に声をかけるのを躊躇っている。
それどころか、愛犬のブロンディすら、彼に近づこうとしない。
ヒトラーは急に振り向くと殺気だった目で側近たちを睨みつけた。
「まあ、終わったことを言っても仕方あるまい。
ソ連戦線の方と英国占領作戦の方はどうなっておる。」
話しかけられた側近は身を震わせながら言った。
「はい、総統、ソ連戦線の方は上手くいっております。
ミハエル中将の離反で、ソ連の兵たちはかなり動揺しているようです。」
彼の報告を聞きヒトラーの機嫌は少し良くなったようだ。
ずいぶんと柔らかくなった声でヒトラーは尋ねる。
「英国占領作戦の方はどうなのだ。」
「航空兵力、地上兵力共に我が軍が優勢ですが、
英国本土を占領するには輸送船の数が圧倒的に足りません。
英国では東洋艦隊も帰港したようですし、かなり難しいと考えるべきでしょう。」
せっかく良くなっていたヒトラーの機嫌がまた悪くなってきたのを察したのだろう、
側近の一人が声を上げる。
「しかし、輸送船の建造はかなり順調にいっています。
おそらくあと三か月もすれば定数に達するかと。」
これは側近の嘘で実際には半年はかかると考えられている。
「ふむ、それならばなんとかなりそうではないか。」
先ほどと同様の柔らかい声を聞き側近たちは胸を撫で下ろす。
「日本の離反は予想していなかったが、後は万事うまくいっておる。
この調子でいけば私が大陸を支配するのは時間の問題だろう。」
先ほどと打って変わって笑みを浮かべる総統に側近たちは一抹の不安を抱えた。
その頃、ハワイ航空隊では日英講和締結の報を聞き歓声が起きていた。
「やりましたね、神谷少佐。」
以前話してから、すっかり懐いてしまった安藤少尉に神谷少佐は頷きを返した。
「ああ、戦が終わるのももうすぐかも知れないな。」
そこに霧島中尉が割り込んできた。
「だが、アメさんの艦隊が太平洋にきていることは分かっているんです。
おそらくまだ戦は終わらないとおもいますがね。」
神谷少佐は頷くだけで喋らない、
どうやら、人見知りが解けているのは安藤少尉に対してだけらしい。
間を取り持つように安藤が霧島中尉に話しかける。
「やはり、ハワイに来るのでしょうか。」
「ああ、そうだろうな、アメさんも負けっぱなしでは終われないだろうからな。」
「それにしては兵力の増強が全然されませんね。
補給の回数も段々減っている気がしますし。」
「俺たちは捨て駒ってことだろ、反攻を数日抑えるだけの兵力があれば、
トラックから機動部隊が敵艦隊を潰しに来ると言うわけだ。
ハワイまで輸送部隊を持ってくるのは難しいというわけだろう。」
霧島の言葉に安藤と神谷は沈黙する。
「あ、いやすまなかったな。空気を悪くするようなこと言っちまって。
神谷少佐も、すいませんでした。」
「いや、かまわない。」
「いえ、かまいませんよ。」
二人がほぼ同時に言った時、訓練開始の音が鳴り響く。
それは、少しばかり人を不安にさせるような音だった。
訓練開始のときってブザー音とかなるのでしょうか?
空襲と間違えそうだしならない気がしますが…。




