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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
63/80

最期の零戦搭乗員

「信濃級空母就役す」にこそっと伏線を入れてたやつです。

今回はすごく短めです。すいません。

             最期の零戦搭乗員





第一航空艦隊、第二航空艦隊が新太平洋艦隊のホーン岬廻航の報告を受け、

トラック島を出港しているとき、

ハワイの第七〇四航空隊の神谷少佐は愛機の零戦を撫でていた。

それを見ていた同じく第七〇四航空隊の安藤少尉は隊長の霧島大尉に尋ねた。

「隊長、前から疑問だったんですけど、なんで神谷少佐は零戦に乗っているんですか。

確か、ハワイの戦闘機部隊には全員、烈風が用意されたはずです。」

安藤に尋ねられた霧島中尉はだるそうに口を開く。

「ああ、お前は最近来たばかりだから知らないのか。」

興味津々の眼で見てくる安藤に霧島は言葉を続ける。

「神谷少佐は元空母搭乗員でな、戦闘機隊の中でも、

一航の折笠、二航の結城、五航の岩本、六航の工藤と並んで、

五本の指に入るとまで言われていた。」

「そんな人がなんでここに。」

「あの人は零戦にこだわりすぎたんだよ。」

霧島はポケットから煙草を取り出すと口にくわえる。

「烈風の空母への配備が決定されても少佐は頑として譲らなかった。

参謀さん達も他の奴はともかく少佐だけは何としても説得したかったらしいが、

失敗して、今はここにいるというわけさ。」

「そうだったんですか、

確かに零戦にこだわった空母搭乗員は基地航空隊に飛ばされたと聞きました。」

「ああ、

それでもお偉いさん方も少佐を後方で腐らせるのはもったいないと思ったんだろうな。

だから最前線であるここ、ハワイにいるわけだ。」

安藤は再び神谷に視線を向けた。

「しかし、零戦でアブが落とせるんですか。」

アブとは日本軍での、F6Fの渾名である。

「馬鹿言うな、少佐なら三機小隊でも一人で落としてしまうだろうよ。」

「なんかもったいないですね、それほどの人が烈風に乗らないなんて。」

「人には譲れない信念みたいなものがあるってことだな、無駄口はここまでだ。

そろそろ訓練が始まるぞ。」

足早に駆けていく霧島中尉を横目にもう一度安藤は神谷少佐に視線を向けた。

そこにはもう彼の姿は無く、飛行場に入っていこうとする零戦の姿だけが見えた。





ようやく、ホーン岬を廻航した太平洋艦隊では早急に整備が行われ、

二月一六日にハワイ再占領作戦が行われることが決定した。

皮肉にも日英講和発表の翌日という日取りになってしまったのである。

日本海軍の暗号が変更された今ではその足取りを把握することができないが、

おそらく太平洋艦隊がホーン岬を廻航したことは知っているだろう。

それならば、ハルゼーは機動部隊が来る前にハワイに空襲を行い占領すべきだと訴えたが、

輸送部隊との兼ね合いもあり断念した。

それでも一カ月の間が開いたおかげで、西海岸で建設していたエセックス級空母

「フランクリン」が運用可能となり、戦力増強を果たすことができた。

ホーン岬で撃沈されたカサブランカ級空母二隻の代わりには十分すぎるものだった。

エセックス級空母のスペックは

排水量三万六千三百八十トン

全長二百七十メートル

全幅二十八,五メートル

機関十五万馬力

速度三十三ノット

兵装

十二,七センチ連装高角砲四基

一二,七センチ単装高角砲八基

四十ミリ機関砲百二十二基

搭載機数百二機であり、

日本海軍の正規空母である「赤城」「加賀」に勝るとも劣らない性能を持っている。

ただ建設を急ぎに急がせたため、

エセックス級空母の高角砲に配備する予定だったVT信管は、

未だ完成に至っていない。

電探の発達しているこの世界の日本軍でも、

VT信管に似た後に島村信管と呼ばれる信管が開発中である。

ただ小型の真空管開発が難航し、完成するのは一九四四年頃だろうと言われている。







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